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第十七話 おまえら、味付け済みかよ

最初は「ガルルル」とか言ってたジャガーは、

すっかり餌付けされ「にゃー」と野太い声で、

餌を要求する様になった。


日も翳り、薄暗さを増した森で

おっさん達は今日の旅路をここまでとし、

夜営の準備に入る。


まずは現場事務所(プレハブ)を構え、

だが、その中では狭いので開けた草むらに、

ブルーシートをバサリと広げ、

システムキッチンを設置する。


ユニットバスも少し離して置き、

トゥエラに、ジャガーの洗浄をお願いする。


ちょっと…臭かったのだ。


猫用のアロマ香るシャンプーを渡し、あっちへ追いやる。


おっさんはメシの支度だ。


最初は収穫物のチェックから。

キッチンのボウルでは賄いきれなさそうなので、

大きめのバケツを腰袋から取り出し、

その上に巨大タマゴをセットし…

慎重に、先の尖ったハンマーで叩き回転させながら、

ヒビを入れる。

3分の2ほど入ったら、両端を持ち上げパカ!

っと中身をバケツに落とす。


初めての作業ながら、

殻のカケラは落とさずに上手く行った。


ハンドボール程の黄身と大量の白身。

ちゃんとビー玉くらいの魔石もあった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


まずは…

熱々のフライパンにバターを落とし、

軽く泡立ったところで、

バケツの巨大卵を丸ごとぶち込む。


じゅわわぁ…

広がるのは、フレッシュな甘さと、

うっすらナッツのようなコク。

でもクサみゼロ。

地球の高級ブランド卵ってのは、

黄身の濃さが売りだけど、

これはその次元じゃない…

まるで、

クリームブリュレのカスタード…の様なとろみ感。


黄身はスプーンですくえる程で濃厚、

なのにしつこさがない。

白身も、あの生臭さとは無縁で、

ふわっふわのメレンゲみたいなキメ細かさ。


味は、

一言でいうと「飲める卵」。


半熟で一口いった瞬間…

舌の上で蕩けて、

濃厚だけど軽い、クリーミーなのに爽やか、

なぜかほんのり甘い後味が残る。


卵かけご飯にしたら、

炊き立て米の熱だけで、トロリととろけて、

ほんのりと、

甘塩っぱいプリンライスみたいになるかもしれない。


何一つ足さなくても、

そのままで、超絶に美味い。


これ……日本で出したら……


一個3000円は取れる卵だっぱい。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


野草は、そのまま噛んでみたが──

正直、クセもなければ、面白味もなかった。


「これ、食材か?草汁じゃね?」


そうボヤきつつ、

ミキサーに突っ込んで粉砕、布巾で絞ってみると…


トロリと、透き通った黄金色の液体が搾れた。


試しに匂いを嗅いでも、

クセも香りも全然しない。


「……あー、これ、まんまサラダ油け?」


火にかけて試してみると──

煙も全然出ないし、酸化臭もない。

なにより、焦げ付きも少なく、油ハネもほぼなし。


まるで、

業務用の高級フライヤー専用油みたいな使用感。

森の野草だかなんだか知らんが、

万能すぎて、逆に怖いくらいだ。


これなら揚げ物も炒め物も、

安心してガンガン使える。


「……うん、決定。

お前は今日から、森産サラダ油だっぺ。」


これで、ようやく

普通の食材っぽくなったと胸を撫で下ろした。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


木の実は──

ぱっと見、胡桃くるみっぽいやつと、

ヤシの実みたいなゴツいのがあった。

まずは胡桃のほうを、

のこぎりで半分に切ってみると


パカッと割れた中には──まさかの七味唐辛子。


「胡桃から七味…だと…?」

おもわずおっさんは電卓を出すが、

どう打っても、

963(くるみ)7(七味)にはならない。


匂いを嗅げば…初詣(川崎大師)を思い出す。

香り高い七味唐辛子。

柑橘系の皮っぽい香りもして、辛さもピリリ。

あきらかに調味料専用のナッツである。


次にヤシの実風のやつは、充電式ドリルで穴をあけてみた。

すると、これまた不思議なことに、中からじわじわと

出汁スープが溢れ出す。


しかも、種類ごとに味も違う。

・白っぽいヤシの実は、和風出汁ほんだし

・黒ずんだやつは、中華(香味シャンタン)スープ。

・ちょっと緑がかったのは、洋風コンソメスープ。


「おまえら、味付け済みかよ」

思わず呟きながら、ありがたくボトルに移してゆく。


最後は──

人食い花みたいな、

おっかない巨大植物から垂れてたヌメヌメした汁。

おっさんは、うっすら嫌な予感を感じつつも、

指先でペロッと舐めてみた。


「ラー油じゃねーか!!」


しかも、こっちが想像するより高級感すらあるラー油。

山椒さんしょうの刺激が深く、香り高い。

この森、どんだけ調味料に恵まれてんだよ、と頭を抱えた。

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