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第十三話

 おっさんと親方は、真剣な顔で、

受け付け窓口(長いカウンター)や、


飲食店(酒場)部分の椅子やテーブル。


二階の部屋に上がるための、螺旋階段などを手掛けていた。


そんなある日、沢山の馬車に乗った人族が、

この街を訪れた。


何処かで見たような、軍人風のおっさんもいる。


すると背中に、「旦那様ダーリンお疲れ様。」


とリリが抱きついてきた。


こんな人前で小っ恥ずかしいべ。

と照れていると、


パイナップルみたいな頭の軍人に固い握手をされたり、

いろいろと事態が動き始めた。


「ここ冒険者ギルドだったんけ?」


どうやら、おっさんが半年くらいの時間をかけ、

継ぎ目の見えない石を積んで建てた、

商店風の大きな現場は、


リリが書類魔法(FAX)で、

王都や港町とも連絡を取り合い、

人員も円滑に補充された、

冒険者ギルドだったらしい。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


おっさんにとってはどうでも良い話なのだが、


おっさんの立場は、王族達の中では、


最高懇意者(侯爵)になっているそうだ。


そりゃ、王城が二つ建つほどの献金を、

ポンと寄越されて、行方不明になられては…


王都で小狡い事をして、

貧困層(弱者)を痛ぶって嗤っていた貴族達は、

軒並み排除され、

クリーンで誰もが住み良い都市と成長しつつあるのだと、

リリが喋っていた。


そして、既視感のあるパイナップルは、

なんと港町にいたギルドマスターだったようだ。


おっさんが手掛けたスパリゾートも順調で、

育てたファイアーダンサーも大人気だそうだ。


なので、後任を育てて、風に乗り、

パイナップルは新たな木を生やすためにこの街に来た(飛んできた)のだとか。


左遷(飛ばされた)されたわけではなさそうだった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


大工は大体誰でもそうだが、

現場が完成し、道具を片付けて出て行く時が

一番寂しい。


もうここは腕を振るえる現場ではなく、

お客様の住む為の家となってしまうから。


自分の居場所は、次の現場にしかない。


苦労した、難しかった現場なら尚更、

その思い入れが強い。


道具は一瞬で腰袋に吸い込まれ、


ジョッキ(焼酎)を片手に、ギルドの外観を眺めるおっさん。


「……いい建物だっぺな。」

誰に言うでもなく、ぽつりと呟くおっさんの声は、

石の壁に、優しく吸い込まれていった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


ダブルモノクルの不動産屋は、捕まったそうだ。


そして、豪邸パネル(ハリボテ)の土地は、

おっさんに物になったらしい。


この街特産の謎石材を気に入ったおっさんは、

パネルを解体して、自宅でも建てるべか。


と、図面を描き始めるのであった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


リリのギルド運営開始までの繁忙期は落ち着いたらしく、

家でのんびりする日々が増えた。


おっさん専属の受付嬢は、おっさんが冒険をしなければ、基本的に無職らしい。


それでは可哀想かと思い、おっさんはギルドにもたまに顔を出す事にした。


どうせ依頼掲示板を見ても、

【ヴェバブボンヴィ】とかしか書いてないのかと思いきや、

森での採集、山脈での狩り、職人募集など

読める字体で書かれていた。


ホビット語は驚く事に、文学として学ばれており、訳せる者も一定数存在するらしい。


だが、おっさんと一緒に仕事をした職人連中だけは、

「か行」と「さ行」が増えてしまった為、

より難解な言語となり、識者達の頭を痛めているのだとか。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


仕事にもなって、食材の調達にもなる依頼と言えば、やはり狩になるだろう。


おっさんに似合うかは別として、

毎日ドラゴンばかり食うわけにもいかない。

森や山脈、川や海なども数日の行路で目指せるらしい。


依頼書を受け取り、受領判をリリに押してもらい


ピクニックに出発する事にした。


ダブルキャブ(五人乗り)のトラックに家族を詰め込み、

とりあえず遠目に見える山を目指す。


天気も視界も良好で、この街にたどり着いた時のような異常気象も起こらない。


山脈までのルートの途中に、川も森もあるそうだ。


挿絵(By みてみん)


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


久々の遠出に、車内は盛り上がっていた。


リリがなにやら小汚い紙切れを、

おっさんにうやうやしく押し付けた。

「もう、捨てたり無くしたり、

しないでくださいませ。」と。


運転中なのでそれとなく見るのだが、

昔の免許証サイズの、和紙のような、

解りやすい例えだと、

古ぼけた宝の地図?のような紙。


おっさんがそれを認識すると…

急に車内にBGMが流れ始める。


ちょっとめんどくさそうだったので、車を停めて経過を待つと…


厳かな(元旦の)琴っぽい正月(スーパー)みたいな音楽は、

「べベン!」と三味線風のギタリストさんが加わり、

「ぷぉ〜〜」と、

ザルを被っていそうな人の管楽器(ほらがい)まで参加してきたかと思っていたら、


急に車内に…

ダダダダダン!!と

御簾(ゴザっぽいやつ)が降りてきて、

カッコオォォォン!と

獅子おどし(池にある竹のアレ)の音も響き…

おっさんの持っている和紙に文字と模様が浮かび上がった。


「演出長いんでねーべか?」


御簾がロールスクリーンみたい、

にカラカラと巻き上げられた先に居たのは…


携帯(漫画とか)を見ていると、よく広告で現れる、いつも大ピンチ(絶体絶命)になっている、パズルゲームの王様(ロイヤルクラウン)

みたいな人が、ニコニコと微笑みを浮かべ、

車内が眩い光(太陽拳)に包まれたのち、演出は終わった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


これが、この世界の最高の冒険者様の

称号で有らせられる、キングスカードで御座います。


リリが光悦した表情で説明してくれるが、


「食べ放題の焼肉屋かよ…」と

おっさんは微妙な表情。


まぁ、尻から虹色の屁が出るよりはマシだと思い、財布に仕舞う。


ガチャやパチンコの画面など見たことのない娘達は、

驚き、歓喜しはぐしゃれていた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


安全運転で、ゴブリンを跳ねたり、回収したりしながら旅路を進め、綺麗な小川が見えてきた辺りで、キャンプを張る事にした。


ゴブリンは捨てるとこが無いと言われる程優秀な食材である。


まぁ言っているのはおっさんだけなのであるが、


魔女みたいに伸びた不気味な鼻は、

香り高いニンニクになるし、

不衛生に見える尖った爪は、

刻めばみょうがの味わいで。


血を抜けば、ドロっとした高級ケチャップだし、

肉は砂肝のような味だが…

骨も良い出汁が出る。


あまり使う機会はないが、睾丸を斬れば、

濃厚なココナッツミルクも出てくる。


トゥエラの喜びそうな、

パイナップルを加えたピザを焼いた時などは、

甘く濃厚で大好評であった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


今日の晩飯は、轢きたてで新鮮なゴブリンを使い、

濃厚ナポリタンを作ってみた。

常識があれば避けるところであるが、

その横にチキンライス(ふわとろ卵かけ)も添えた。


味付けを変え、

ライスはバターたっぷりに誂えたことで、

家族達はライスをオカズにパスタを啜るという、

動画で配信したら炎上しそうなディナーとなった。

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