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第十二話

まずは材料を切る。

懐かしの、ジャガー芋(第一章参照)沢ヒトデ(人参)は大胆にざく切り。

手羽元(竜の翼)も一緒に、耐熱皿に乗せレンチン。

雑多な魔石粉末(カレールゥ)発酵魔石バターゴブリンの血(ケチャップ)苦味魔石ドライバジルを弱火でとろかし、水を加えつつ煮込む。

チンした具材もぶち込み、隠し味の、

竜骨スープを少しだけ。

ドロドロにならないように、

ジャガー芋は最後に入れる。


仕上げに溶ける魔石チーズを乗せテーブルへ。

「とろけるチーズスープカレーだっぺ。」


黄色い米(サフランライス)も炊き立てだ。


挿絵(By みてみん)


そうこうしていると、リリも帰宅してきた。


三人は出汁(竜骨)の効いたコッテリスープカレーに夢中だ。


おっさんは、イマイチ残る二日酔いを、

焼酎で迎え撃つ。

ツマミはきゅうり(糠漬け)でたくさんだ。


「パーパのゴハン、ガチバリうんま〜!やばすぎ〜〜!」



「からいけどおいちーねー」


「あふぁぁぁぁぁぁぁん!!」


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


美味いメシを食わせると、

毎回事務服が爆発(脱衣)するリリには、

バスタオルを投げつけ、

新品の事務服(作業服)を渡すというルーティンも慣れた。


明日からはまた謎石材との格闘かと、

目を瞑り、作業工程を妄想する。


作業着と腰袋を痛く気に入った娘達は、

明日から一緒に現場に行きたいと言う。


ホビット達は良い奴らなんだが、

仕事中は異様にストイックだからなぁ…

子供なんぞを連れて行って大丈夫だろうか?

と少し思い悩むが、

よく考えれば、

トゥエラの身体能力は異常だし、

テティスは重機要らずの浮遊魔法も使える。

全く問題などない事に気がつくのであった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


そして翌朝。

別鍋にとっておいたスープカレーに、

出汁を足したり、トロミをつけたりと工夫して、

カレーうどんを食わせてからの出勤である。


現場に入り、親方や職人達に、

娘を紹介し作業に取り掛かる。

最初は、

「バヴィビィヴァバンヴォ!」

と怒った様子だった親方も、

テティスが重い石材を複数個も宙に浮かせ運んだり、

おっさんの刻み終わった石材を肩に担ぎ、

高所の細い足場の上を、

全力ダッシュするトゥエラを見て、

口をあんぐり開けていた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


石材加工と嵌め込みはまだまだ延々と続くのだが、

開口部というものもある。


窓や出入り口のことだ。

搬入されている資材を確認しに行くと、

木材と、蝶番のような金物など…


これはあれだ…ギィギィうるさい、

おっさんの嫌いな、

ウエスタンドアの段取りであった。


開口部のサイズは、

石材の積み具合でどうにでも調整できるので、

おっさんは不良在庫のサッシと、自動ドア(ガラス製)を取り出した。


以前手掛けたどこかの現場で、サッシメーカーの営業がやらかした(サイズが合わなかった)

立派なトリプルガラスの断熱性窓だ。


配色も、石材とマッチするグレーであったし、

数も沢山あった。


若いもんの悪口など、言いたくはないが…

メモも取らず、コンベックス(巻き尺)の使い方もちょうろくでない(ちゃんとしていない)、なのになぜか態度だけはエリートを装った、

高圧的な営業《高学歴》の失敗品である。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


ホビット族との細かい打ち合わせは、

どう頑張っても無理なので

とりあえず、(サッシ)を一か所取り付けてみた。


親方も、職人達も

透明すぎる(ジャパン)ガラス(クオリティが認識できず、

カメムシ色の頭でゴンゴン頭突きする。


やがて、

見えない板なんだということを理解出来たのか、

おっさんに喝采を上げ始めた。


鍵や開閉可能(開け閉めできる)な仕様まで見せると…

ホビット職人達の理念の限界を超えたのか、

「グギャガババババ!」

と、か行の発音を始めた。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


木戸でなく、

アルミサッシでも問題なさそうなことが判ったので、

正面玄関的な場所に、

おっさんはモルタルを練り、

敷居部分(踏むところ)の補強をし、


大きなガラス一枚戸(閉店してしまった)の、人感センサー付き(イトーヨーカドーの)自動ドア(入り口)を取り付けた。


謎パワーで、電源は相変わらず不要なようなので、

設置が完了すると、すぐに動いた。


「いらっしゃいませ」


というアナウンスと共に音もなく左右に開くガラス戸。


群がり、驚愕するホビット達は、


「ヴィギャ…ジャイシャセ!」


と、さ行も発音するようになった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


毎日、日が暮れるたびに、

職人連中や親方に詰め寄られるのだが、

優秀な護衛(娘達)がいるので、

焼酎(大五郎)を振る舞うだけで、

定時に帰宅できるようになった。


おっさんには、

家族にディナーと作ると言う本業が待っているのだ。


この街の気候は、真夏になったり、クリスマス時期の寒さを迎えたり…

わりと定まらない。


常に元気な家族達はもちろん、

おっさんも子供時代以来、

風邪など引いたこともないので。


暑い日は、

雨樋の部材を利用しての流しそうめんを始めたり…


寒い夜は、おでん屋台を模倣したり。

これらを全て、

騙された借地の、豪邸のパネルを利用して、

雰囲気作りまで考案されていたのだ。


流しそうめんの場合は、2階の姫の部屋から逃走する、怪盗をイメージした滑空模様。


おでんなら、地下牢だ。

鉄格子の隙間からなぜか提供される、

よく煮えた大根や卵。


おっさんの遊び心は尽きないのである。


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おっさんも、昔はもとっと頑固な部分もあった。


男の価値は仕事の腕で決まるんだ。

などとののたまわってた時期もあった。


だがその結果、(フィリピン人)には逃げられ(国に帰り)若い衆(新人職人)にも煙たがられたりした。


それでも俺は職人だ。などと意地をはっていたが、


こんな意味不明な世界に生まれ変わり、


めんこい娘と甲斐甲斐しい嫁に囲まれると、


仕事なんてある程度できればいいんじゃないか?

一番大切な物は、家族や慕ってくれる仲間達である。

と、

柔らかおっさん(フレキシブルプライド)になってきたのであった。


そんなこんなで、数ヶ月が過ぎて…


大きな現場はほぼ完成を迎えた。

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