第一話 大工のおっさん転生(?)する
素人の矛盾の多い文ですが、
どうぞ宜しくお願いします。
「なんだっぺ?」
目を開けると、森だった。
今さっきまで現場で仕事をしていたのだが…
ちょっと頭痛が痛い気がしたが、
とりあえず体を起こしてみる。
なんでこんな所で寝ていたのだろうか?
辺りからは「ギャァギャァ」と鳥?
の様な変な声が聞こえる。
ガサガサと草が揺れる音もしてちょっと怖い。
というか…木がデカい。
なんだこれ?
一般的な建売住宅くらいの太さがある。
いや…四角くはないが。
そんな巨木が、上を見上げても天辺も見えないような巨木が…
竹藪くらいの密集度で生えている。
取り敢えず、状況を確認せねば。
おっさんは、ついさっきまで木造住宅の新築工事現場で、外壁を貼っていたのだ。
つまりおっさんは大工だ。
年齢は……五十路が近い、とでも言っておこう。
さんとうばんと呼ばれるまぁまぁ重い、大きな板を建物の外周に施工していたのだ。
それは覚えている。
んで?
たしか……
そうだ猫だ。
現場で毎日見かける、すらっとした白猫。
懐っこくてめんごい、メシの時間になると、
「ミーミー」と強請りにくるので、
「みー君、なんか食うけ?」
と可愛がっていた。
弁当に入っているウインナーとシュウマイと、
玉子焼きを食わせてやったら…
おっさんのメシはゆかりご飯になっていた。
まぁそれはいい。
おっさんが森にいる理由だ。
そう、そのみー君が、落ちてきたのだ。
人様の一生のローンを組んでお買い上げになった新築の、屋根の上で昼寝でもしていたのか?
カラスがギャーと鳴き、みー君がしゃーとかふーとか騒ぎ、バタバタガシャガシャと暴れ、
おっさんに降ってきた。
仮設足場があるからってあんなとこまで登るなよ…
と文句を言う暇もなく、おっさんはみー君をキャッチした。
空中で。
何かを掴んだということは、
何かを放したということだ。
そんな哲学はどうでもいいが、
だっこしたみー君と共に背中から地面に墜落し…
そのおっさんの首に、さんとうばん が落ちてきた。
チョンパである。
だいたいを思い出したおっさん。
だが…
「なんで森なんだっぺ?」
マイペースであった。
とりあえず…辺りを見回し、自らの体を確認し、
さっきまでの作業服。
いつもの腰袋。
頭にはヘルメット。
現場スタイルである。
おっさんは家に帰ればパジャマだし、
休日はジャージなので。
人生で最も多く着てる普段着である。
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とりあえず……
携帯をポケットから出す。
圏外だ。
アプリの方位磁石は?
洗濯機みたいに回ってる…
「あんちゅーだっぺ」
おっさんの趣味は、酒となろうだ。
どれ程読んだかわからない。
突然転生したとしても、たぶん大丈夫。
そう思っていた。
そしてよくある森スタートだ。
「ゴブリンとかいんだっぺか?」
訛った東北弁で呟きながら、
森の密集度がヤバすぎて、太陽も見えなくかなり暗いため、
だが、外壁の施行中に持っているはずもない、
懐中電灯を…
腰袋から出した。
一瞬、?と思ったが、まぁ大抵の道具は常に入れている腰袋だ。
たまたま入ってたとしても不思議ではない。
辺りを照らして、取り敢えずドラゴンとかが襲ってくるわけではなさそうなので、ホッとする。
胸ポケットを触ると煙草もある。
おっさんはサーフィンはしたことはないが、
知り合いに貰ったサーフボードは、
愛車の天井に飾ってある。
要するに、丘サーファーである。
サーファーはKOOLを吸う。
なので、おっさんも吸う。
それだけの話だ。
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首チョンパの記憶が現実だとするなら、
おっさんはこの森で生き延びねばならない。
何度も死にたくはない。
ここが異世界とやらだと仮定するならば、
モンスターだの盗賊だのが襲ってくるかもしれない。
今すぐに出来る防衛手段…
拠点的な物の建築か?
だが…
現場や愛車に殆どの道具は置いてあった。
腰袋にあるハンマーやバールなどの手道具だけあっても…
せめて高い場所に避難できれば…と
いつもの癖で、腰袋に手を入れると、
ガシッ…と
何かを掴んだ。
「なんだべ?」
手を引き上げると…
梯子が出てきた。
ニュルニュルと。
約3メートルの、
だがこれは序章で、
伸ばせば6メートルになる、
二連梯子が、腰袋から出てきた。
「んなわけあんめー」
笑いそうになるが、現実?である。
夢ではない。
それは間違いない。
だって腰とか痛いし…
そして、枝ぶりのよさそうな巨木に、梯子を立て掛け、
滑車式になっているロープを引けば、スライドして伸びてゆくハシゴ。
だが見た感じ、おっさんが乗れそうな太い枝は、かなり高い。
梯子ではちょっと無理か…
と思いつつ、それでもロープを引くと…
『カシャンカシャンカシャンカシャンカシャン』
と……
50メートルくらい伸びた。
「んなわけあんめー」
またぼやくが、
伸びたものは仕方がない。
よく見る、打ちっぱなしゴルフ練習場。
あそこに建っている鉄塔。
あれくらいの高さになった梯子に…
おっさんは登り始めた。
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とりあえずの安全地帯を得た。
『おっさんを丸呑みする芋虫』
とかはいないようだ。
そして、枝と言ったが…
ここは対面二車線道路くらいある。
テントも余裕で張れそうだ。
まさかね、と思いながら腰袋に手を…
「出るんだわ…天幕」
バサリと広がり、生きているかの様に枝に固定される。
「あんちゅーだっぺ」
二度目の方言が森に消えていった。