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流行り?

「――ところで、伊織いおり。貴方の時代ではどのようなものが流行っているのでしょう?」

「……へっ? ああ、そうですね……」



 それから、数日経た昼日中ひるひなか

 柔らかな陽が優しく差し込む穏やかなお部屋にて、だらりと襖に背を預けそう問い掛ける月夜つくよさま。周囲まわりの目がある時とは異なるその緩んだお姿が微笑ましく、思わずクスッとなってしまう。


 まあ、それはともあれ……何が流行ってる、か。うーん、そうだなあ……うん、やっぱり――


「……そうですね、恥ずかしながら僕自身、流行りに疎いので良く分からないのですが……例えば、僕の教え子達は動画の話などで盛り上がっていたかなと」

「……どうが、とは……?」


 すると、きょとんと首を傾げ尋ねる月夜さま。何とも可愛らしいその仕草に、思わずドキッとしてしまうけれど、それはともあれ……うん、まあそうなるよね。言う前に気付くべきだった。


 ただ、それはそうと……うん、何とご説明したら良いものか。そもそも、動画というものが何たるかを説明する必要性がなかったし。それこそ、恐らくは小学生――いや、もしかすると園児の方が僕より良く知ってるかもしれないくらいで。尤も、スマホがあればこんなものですよと直接お見せすれば良いのだけど……まあ、平安こちらにて気が付いたらポケットから消えていて……いや、でも見せたらそれはそれで大変か。その場合、そもそもスマホが何たるかを説明することになるだろうし。

 ともあれ、動画の説明だけども……うん、やっぱりここは――


「……そう、ですね。動く、と言ったところでしょうか」


 そう、控え目に伝える。……いや、我ながら何とも雑な説明だとは思うけど……うん、自分の至らなさが恥ずかし――


「――動く画!? それは、あれが動くということでしょうか!?」

「……え、いえ、そういうわけでは……」


 すると、目を輝かせ尋ねる月夜さま。床の間に掛かっている、鮮やかな藤の花が描かれた掛け軸を指差しながら。……あっ、いえそういうわけではなく……いや、そういうことで良いか。本当の説明をしても、きっと混乱しちゃうだろうし……そもそも、僕自身がまともな説明なんて出来ないわけだし。



 

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