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例の行事
「……どうかなさいましたか、伊織」
「……へっ? ……あの、どうしてでしょう」
それから、数日経た朝の頃。
淑景舎のお部屋にて、ふと柔らかな微笑でお尋ねになる月夜さま。……えっと、急にどうし――
「いえ、ここ最近どうもお元気がなさそうなので如何なさったものかと」
「……月夜さま……いえ、何も不具合などありません。ご心配、ありがとうございます」
「……そう、ですか……」
すると、お言葉の通り心配そうな微笑でそう口になさる月夜さま。そんな彼女のお言葉に、ご表情にズキリと胸の痛む音がする。……だけど、表情に出すわけにはいかない。決して、悟られるわけには――
「――それでは、そろそろ行きましょうか伊織」
すると、ややあって徐に立ち上がりお告げになる月夜さま。そんな彼女に、僕も頷きお答えする。そう、本日は帝さまご主催による例の文化的行事の日で。




