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違い
「……それでは、僕はこれにて失礼致します。お休みなさい、月夜さま」
「ええ、ご苦労さま伊織。良い夜を」
それから、二週間ほど経て。
例の如く清涼殿の御前にて、例の如くほぼ定例の挨拶を交わす僕ら。そして、例の如く月夜さまを見送った後ゆっくりと来た廊下を引き返す。……だけど、以前と違うところがあるととすれば――
「……お待たせ致しました、梨壺さま」
「ううん、気にしないで伊織さん。ほら、どうぞ上がって」
そう、頭を上げ告げる。そんな僕に、朗らかな声で答えてくださる可憐な少女。……そう、以前と違うところがあるとすれば――引き返した僕のいる場所が、淑景舎ではなく昭陽舎だということで。




