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お后さまの召使い  作者: 暦海


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20/36

再会?

「……えっと、どこだろ……」



 それから、十数分後。

 キョロキョロと辺りを見渡しつつ、広大な庭園をウロウロする僕。尤も、ここだけ見ると不審者のように映るかもしれないけれど、これにはれっきとした理由があって。と言うのも……まあ、僕がうっかり明後日の方向を鞠を蹴り上げてしまったわけで。


 ちなみに、月夜つくよさまも一緒に探すと仰ってくれたんだけど流石にそれは止めた。言わずもがな、彼女は僕のご主人さまだし……それ以前に、僕が飛ばしたのだから自分で探さなければと思ったから。


 ……でも、どこにあるんだろ? あまりお待たせするわけにもいかないし、早く見つけて戻らないと――


「――っ!!」


 ――刹那、思考が止まる。気が付くと、一直線に駆け出していた僕。そして――



「…………あれ?」



 すると、ややあって朧気に呟く可憐な少女。ひとまずほっと安堵しつつ、腕に抱える少女へゆっくりと言葉を紡ぐ。



「……その、ご無事でしょうか……梨壺なしつぼさま」





「――いやぁ、ごめんね伊織いおりさん。お見苦しいところを見せちゃって」

「あっ、いえとんでもないです! ……あの、本当にご無事でしょうか?」

「うん、全然平気だよ。ちょっと、立ち眩み? みたいになっちゃっただけだから」



 それから、ほどなくして。

 縁側にて、朗らかに微笑みそう口にする梨壺さま。立ち眩みでも心配ではあるけれど……それでも、そんな彼女の様子にひとまずはほっと安堵を覚える。


「ところで、これ……たぶん、淑景舎そっち側から飛んできたと思うんだけど」

「……はい、申し訳ありません梨壺さま」


 その後、ややあってそう口にする梨壺さま。差し出したその両手には、20センチほどの鹿革製の球――言わずもがな、さっきまで月夜さまと遊んでいた鞠で。……うん、道理でいくら探しても見つからないわけだよ。そもそも、淑景舎こっちにないんだから。

 ともあれ……つまりは、彼女の――昭陽舎しょうようしゃというのだけど――彼女の敷地に飛んでいった鞠を、こうしてわざわざ淑景舎こちらの敷地まで届けに来てくださったということで……うん、ほんとに申し訳ない。



「ううん、気にしないで。でも、淑景舎そっちから昭陽舎こっちって結構な距離だと思うんだけど……ひょっとして、伊織さんが……?」

「……その、申し訳ありません」

「ふふっ、だから気にしなくていいって。純粋に驚いてるだけだから。すごいね、伊織さん」

「……あ、いえ、恐縮です……」



 すると、お言葉の通りたいそう驚いた様子でそう口になさる梨壺さま。……まあ、確かに結構な距離だよね。僕自身、そんなに飛んでいったのかとたいそう驚いてるくらいだし。


「……ねぇ、ひょっとして伊織さん……」

「……あっ、いえ僕は……」


 刹那、身を強張らせる。と言うのも、彼女がぐっと距離を詰めそう口に……まずい、ついにバレ――


「……ひょっとして、ものすごく鍛えてる?」

「……へっ? あっ、そうなんどす! 実は僕、三度のご飯より無類の筋トレ好きで!」


 そんな窮地の最中なか、きょとんと首を傾げ尋ねる梨壺さま。そして、そんな彼女に大嘘を吐きごまかす僕。……いや、筋トレはそこそこに好きなので全くの嘘ではないかもだけど、それはともあれ……ふぅ、良かった。……でも、今後はよりいっそう気を――



「……おや、伊織。なかなか戻ってこないので心配して来てみれば……私を置いて、随分とお楽しみのようですね?」

「……あ、いえ、その……」


 引き締めようとした刹那、不意に響いた鈴を転がすような声。ゾッと寒気を覚えつつぎこちなく視線を向けると、そこには花のような笑みを湛える清麗な少女のお姿が。……いや、その……ごめんなさい。


 




 




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