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招かれざるクソガキ

 クソガキの帰還。

 スターウォーズならエピソード6。

 俺の安息の地に侵略者が再び出現した。出しっぱなしだったガチャポンの森をチラリズムして、無言の感想を告げられる。無表情でも悪態付けるなんて流石だなあ。


「確かに、雪月花は気が利く子ね。おじさんと違って。あたしと異なる視点でクラスの動向やら流行を押さえている。だから、彼女を責める気は毛頭ないわ」

「聞いてないが」


「あたしが後からグループに加入する立場だと重々承知。なぜかしら? 低姿勢で挑んだのに、遠慮がちな態度を取られてしまうの。雪月花が大げさにカリスマと評したものなんて、所詮微々たる影響力でしょう?」

「全然聞いてないがっ」


 聞けよ。いや、どっち?

 女子小学生がソファにふんぞり返って、アールグレイを嗜好中。わざわざスーパーでお高めを買うあたり、すごくセレブだと思いました。午後ティーを所望しろ。


「天羽。ここは迷子センターじゃない。賢しい子よ、アメちゃんやるからお家へお帰り」

「あんたは人生ずっと迷走してるじゃない」

「おひとり様は寄り道を楽しんでるんだ。急ぐな回れって知らんのか?」

「ただの愚鈍ね。言い訳の達人に恐れ入ったわ」


 ちっとも参った様子を覗かせない天羽。

 俺は大人の責任として、クソガキを分からせねばなるまい。全く以って、私怨にあらず。生意気ロリを懲らしめ、気分リフレッシュとか企んでないったらっ。


「お前はこんな場所に来る暇など皆無のはず。将来のため、習い事頑張れ。青春のため、お友達と楽しい放課後過ごしたまえ。そのきっかけを掴んだのだから」

「きっかけだけじゃ……全然届かないのよ。おじさんには分からないわ。初めから人との関りを諦めた腰抜けだもの」

「まあな! 煩わしいのは嫌い。じゃあ、諦めればいいじゃん」


 女子小学生の批判に、うんと頷いた。


「ただ――俺の場合、その選択を後悔してないよ。今のお前はどうだ? ぐちぐちと不満と文句ばかり燻ぶって、これが天下のカリスマJSの姿か? エリートってほんと、一度の失敗に弱いよなぁ~。音無景弘は毎日失敗の連続だし、小学生にバカにされたってそこそこ楽しく生きてるぞ?」

「く……っ!」


 ふざけた大人の挑発だけど、天羽は言い返せなかった。

 歯を食いしばり、必死に耐え忍んでいく。

 皮肉なものだな。人生成功が約束されたようなスペックなのに、どーでもいいことに悩まされて自滅寸前とは。結局、薄暗い小部屋に舞い戻ってしまったのだ。


 ……失礼。他人の悩みは本人にしかその苦しみを測れない。隣の芝生は、青かったり赤かったり見えたりする。好みの色へ勝手に染められたらさ、どれほど楽しい事か。

 もちろん、人生ソロプレイヤーは人助けを積極的に行うお人好しじゃない。俺にロリコン魂が宿っていれば、女子小学生へ興奮気味に協力を惜しまなかった。でゅふふ。


「とは言え、幼嬢がまた俺のプライベートルームに入り浸るのは迷惑千万。ぼっちの手なら貸そう」

「あんたの部屋じゃないでしょ。猫の手なら借りるわ」


 真顔のツッコミをスルーがてら、現状のブレイクスルーを脳裏でフルスロットル。


「本当に聞きたくないのに、柊さんから現状を聞いた。っぱ、お前が流行に流されて仲良しこよしスタンスは似合わないみたいだ」

「おじさんの入れ知恵でしょ。どうしてくれるわけ? あたしが味わった屈辱、百倍返しだから」

「大事なとこ、他人任せにするのが悪い。ぼっちなら! 一人で決め、一人で受けとめなきゃでしょうに。それを怠ったガキンチョの責任や! 俺は悪くねえ! 俺は、悪くねえぞっ!」


 心の底から思っているけれど、それを叫んじゃうの恥ずかしっ。


「あんた、一人の人間として情けなくないの?」

「……ちょっぴり」


 そして、赤面である。

 女子小学生が悲しそうに同情していた。


「さて、お戯れの時間はここまで。真面目に考えよう」


 俺が顎に手を当てて、何か素晴らしいアイディアを閃こうとすれば。


「……? あぁ、なるほど。ピエロが真剣な表情を見せるってギャグね。狂言回しの道化っぷりがよく伝わったわ。流石と褒めてあげましょう」

「クソガキを黙らすにはやはりアメちゃんか」


 お菓子ボックスの底に眠っていたのど飴を掴み、天羽の口へねじ込んだ。お嬢ちゃん、ほっぺた膨らませて可愛いねぇ~。


「むむぅ~!? この、痴漢! 児童性愛! 脳にマイクロチップ埋め込みなさいっ」


 マイクロチップに、GPS機能はないんじゃない?

 英語の偏差値は57なんで、グローバルポジショニングシステムの略と存じている。


「俺は子供がリアルガチで嫌いって、何度も正直に申告してるだろ。待て、あと少しで浮かんできそう」


 好感度を犠牲に、次なる手を検討すべきかどうか精査します。いいから、やれッ。


「風潮に流されるのはらしくない。天羽ブランドは安くないってわけだ。じゃあ、トレンドを発信する側であれ。それが生意気幼女に求められたシルエット。友達作りが大目標。勝利条件、友達100人できるかな? しかし、前提条件を広義に解釈すれば」

「独り言が大きいわね。もっと静かに不審者してちょうだい」


 苦虫を嚙み潰したようにアメを転がしていた、天羽。


「厳正なる協議を重ねた結果、みんなをこっちへ引き込む大作戦しかあるまい。生意気ロリよ、小学生が喜びそうな特殊技能を持っていたじゃないか」

「簿記三級?」

「ちげぇっ、うちの帳簿もチェックしてください!」


 俺だって持ってるぜ、英検三級。

 え、オメーは小三の時に英検三級取ったの? は、ははは。なかなかやるじゃないっ。

 ところでところで閑話休題!


「近隣のガチャコーナー、カプセルトイ屋界隈で話題沸騰だった伝説のガチャポン荒らし。お手並みを晒せ――いざ、閉店記念イベント・神引きフェスッ!」

「……何よ、それ?」


 シークレットレアの達人が首を傾げるも気にしない。謙遜しないでもろて。

 おひとり様がひとりぼっちを救うべく、学校のスターへ勝手に駆け上がってもらおう。

 もちろん、セルフサービスだ。当店、人手不足につき。


 人件費高騰というくせに、俺の時給はちっとも上がらないの何ゆえだい?

 アルバイトの名ばかり店長、最後の大仕事が始まろうとしていた。

 とにもかくにも、肩書だけじゃ意味ないよ。結果を出せ、結果を!


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