黒い月
※この物語はフィクションです。実際の神話とは全く関係ありません。
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それから性格めちゃ悪王女様の下僕となった僕は学校内でめちゃくちゃ付きまとわれるようになったのだった。例えばお昼の時間。
「はぁい下僕?あーんしてあげるわ...?」
「あーいえいえ王女様...心配には及びません...1人で食べられますので...」
「あら...?私の言うことが聞けないのかしらぁ?」
「ぐっ...はい...」
例えば朝の登校時間
「待ってたわ下僕!」
「げっ...じゃなくてわざわざお待ちいただきありがとうございます。」
「どうしたんですか?!アレンくん?!」
こいつはずっと僕にくっついてくるほんとになんなんだ...そんなこんなで過ごしていたある日の朝。
「ん?今日は王女は居ないのか?珍しいな」
とソウザが言う。確かに毎日付きまとっていたあの第二王女が居ないのはなにか変だが...まぁ付きまとわれないなら良いか!と思い直す。
「さっさと行くぞ...」
歩き出し電車乗ってる時にふとサトシがこんなことを言い出した。
「ねぇそういえばアレンくんに聞きたいことがあるんすけどアレンくんってカリン様と付き合ってるんですか??」
「は?」
は?だ。有り得るわけが無い。どうしてそうなったのか。言うことを聞かなければ不敬罪で死刑な?って脅されて仕方なく従っているのにどこが付き合っているように見えたのか不思議でならない。
「い、いやその噂になってて...なんだかんだ言ってもアレンくんは美形でそこらの女の人より美人だから割とあるんじゃないかと思って聞いてみたんすよ!!」
キレていると思ったのかサトシが焦りながら話す。
「ないな。それはない。天地がひっくり返ったとしてもありえない。」
「そ、そうすっか...」
電車から降り、学園へ向かう。門の前に立つと衛兵に止められる。
「おい。貴様。アレン・ユースフォードだな?第二王女誘拐の容疑者でご同行願おう。」
それは身に覚えのない罰だった。
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「お前がやったんだろ!!」
と部屋に連れてこられて何度も同じように怒鳴られていた。
「はぁ...そんなに僕がやったと思うなら証拠を出しなよ...まさか王女と一緒に居た時間が長いからなんてしょうもないこと言わないよね???」
「ぐっ...だがネタは上がっている!証拠も時間の問題だ!!さっさと吐いた方が身のためだ!!」
「やってねぇことをやったなんて言えないでしょ?」
「嘘をつくな!お前がやったんだろ!!」
またこの繰り返し。こんな繰り返しを夕方まで繰り返してやっと僕は釈放された。そして帰る途中。電車を降りて寮までの道を歩いていると後ろからバタンと人が倒れた音がした。後ろを見ると長い白髪の女性が倒れていた。
「あの...大丈夫ですか...??」
手を差し出す
「あぁ大丈夫だありがと...ッ!!」
その女性は僕の見て固まる。まるで信じられない物を見るかのように。
「えと...なにか僕の顔に着いてます...?」
「い、いやすまない!知り合いの若い頃に似ていたものだから...」
「そうですか...不思議なこともあるものですね...」
これは本心だ。そんなことを思いながら足に目を落とすと
「あの...靴紐解けてますよ...結ばないんですか...??」
右足の靴紐が解けていた。それに対して女性はあぁと
「私は靴紐が結べないんだ。昔は友達に結んでもらっていたのだがね...君は結べるかい?靴紐。」
「まぁ舫いや亀甲とかも」
「さすが現代っ子だな」
「ツッコこんで」
そう言いながら彼女の足元に跪いて靴紐を結んであげる。
「はい。これで大丈夫。」
「ありがとう。昔を思い出す...君はほんとに私の知り合いの若い頃に顔がそっくりだ...あ、そうだ名前を教えて貰える?」
「僕ですか?僕はアレン・ユースフォードです。」
「そうかアレン。ありがとう。また会おう。」
不思議な女の人だった。
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「ただいまぁ...」
「おかえりなさい。」
そこには白髪の少女がいた。
「ん?ランスロット?久しぶりだね。元気してた?」
「ええ元気よ。それよりもアナタめんどくさい事になってるわね」
十中八九あのクソ王女の事だろう。
「まぁ騎士団だろうね。目的は王女の何かだね。」
「その顔は誘拐された場所も大体分かってるのね...?」
「いや明白でしょ?国の騎士団を使っても見つからないということは国や騎士団の中枢にネズミは紛れ込んでいる。そして実験施設を作ってもバレない場所は地下。そしてこの辺で大規模な地下の工事が行われている。ならこの周りのどこかにいる。それを今トリスタンに見てもらってるとこ...もう少しじゃないかな?」
「アナタ...一体いつトリスタンに連絡を...?」
「別に直接伝えなくても遠くから話しかければ良い。現代風に言うなれば「こいつ...直接脳内に...?!」ってやつだね。」
彼は続ける
「おそらく目的は彼女の中の魔神ティアマトの血。王族は魔神の血が濃いからね。」
「血、血なら有り得るわね...」
そんなことを話していると窓に紙を口に咥えた鳥がやってきた。
「ランスロット決行は今夜行うよ?準備しておいてね?」
ニヤッと笑ったその美貌はランスロットを惹き付けていた...
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あとどれだけ血を抜かれるのだろう。もうどれだけ抜かれたかも覚えていない。
「...」
意識も朦朧ではっきりしない。血を抜かれすぎたせいだ。だが死なないようにしているのか最低限食事は食べていて意識が飛ばない範囲で血を抜かれている。分かるのはここはどこかの地下で私は牢獄に閉じ込められているということだけ。
「なんで私が...」
私の血を抜いているキモいおっさん曰く
『これが魔神の血...!!素晴らしい...!!』
私には魔神の血が流れているようだ。それは私だけなのかそれとも...
「はぁ...こんなことを考えても仕方ないわね...」
ガチャリと扉が開く。またこのの時間がやってきた。
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ある国の騎士が夜中に見回りをしていると蹲る男性の姿があった。
「おい?大丈夫か?」
と声を掛ける。だが返事は無い。暗くて見えないが何かを食べているようだ。月明かりに照らされてよく見えるようになるとそれは良く見えた。ヤツは人を食べていた。
「...ッ!!」
ピィーっと大きな音の笛が鳴らされる。これは緊急時の笛だ。
「どうした!!」
近くにいた騎士が近づいてくる。
「な、なんだこれ...これは...人か...?」
「わ、分からない...」
彼は気づかなかった。殺したと思っていたヤツはまだ生きていたことに
「おい!後ろ!!」
「えっ?」
夜空に悲鳴が響き渡った。
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「どうなってるの!!」
学園の騎士団も動いていた。その指揮を取るのはヤマトの国第1王女メイ・シャーロック。
「報告します!各地で屍のようなものが出現!騎士、平民問わず襲っています!!」
「ほかの地域は国の騎士団に任せて起きなさい。我々は学園の周辺を守ります。各々の指示は各地域にいる者に請いなさい!!」
「はっ!!」
(一体どうなっているの!!)
彼女は心の中でそう毒づいた。
「姫!来ました!!」
前には大量に迫る屍の群れ。
「死守せよ!!ここは絶対に通すな!!」
と号令をかけるものの為す術なくやれていく。
(クソ!!どうすればいいのよ...!!)
そんな時
「おい!!あれはなんだ!!」
と周りの騎士が声を上げて空を指さしている。そちらの方を見ると
「紅い空に黒い月...?!」
そして向こう側から誰かが歩いてくる音がする。暗くて見えないが1人では無い。
(100人以上いる...?!)
そう。ようやく見えるようになってから見るとそこには黒いドレスを身にまとい、長い黒髪を風で揺らして、黒い傘を優雅にさす少女を筆頭に後ろにはローブで顔をフードでおおった謎の集団がいた。