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チャンス④

 


 ── フリータイム


 軍分けをされて各指定場所へ移動するサーバント達。あたしは九条のサーバントだから、もちろん一軍にいるわけですが。渡された柔道着を着て学園内にある道場にいます。


「俺は小島だ。君達の指導を一任された、よろしく頼む。では早速本題へ移ろう。一軍のマスター達は特に常日頃から狙われている……と思え」


 柔道着を着たゴリラみたいな人が何やら物騒な発言をしている。そして、なぜかあたしをジーッとガン見してドスドスと歩きながら近づいてきた。


 ・・・あの、ごめんなさい。めちゃくちゃ失礼なのは百も承知だけど本っ当にゴリラっぽいわ、この人。こわっ。


「お前、もしかして七瀬か?」

「へ?」


 えっと、こんな知り合いいたっけ? ……いや、いねーな。うん。


「お前、桂木さん所の道場にいたろ」

「え、あ……はい」

「なに、舞。このゴリラと知り合いなの?」


 おいおいおいぃぃーー! オブラートに包めや! 宗次郎! なんっっで毎回オブラートが不在なんだよ君は!


「ちょ、宗次郎!! 思っても言わないでしょ、普通!」


 いや、あたしも大概失礼だな。


「なぜお前が天馬にいるんだ?」


 そうですよね、不思議ですよね、あたしも不思議だなーって思ってますよ。


「あ、ああ……まあ、成り行きで? みたいな……ははは」


 桂木さんとは中1の時に出会って、謎に気に入られたあたしは、本当はダメなんだけど桂木さんの道場でちょくちょく働かせてもらってて、日当をもらっていた。


 桂木さんの道場はとにかく生徒が多くて、人手不足が常だったから猫の手も借りたい状態だったらしい。で、桂木さん曰く筋の良いあたしがキッズ達の相手をしてたってわけ。ま、お手伝いしてお小遣いもらってた~的な?


 だからあたし……柔道と空手の経験者なんです、一応。とはいえ、ちょろっとかじった程度だけどね? 知識とか技術とかペーペーだよ。


「一度だけ見かけたことがある。筋は悪くないと桂木さんは言ってたが……そう甘くはないぞ」


 でしょうね……分かってますよ、そんなことは。


 キッズの相手をしてたってだけだし、同年代にギリついていけるレベルかな? くらいだったしね。でも、なんて言うのかな……。“桂木さんの所にいたのにそのレベルかよ”とか思われるのも癪に障る。


 というか、あたしにとってこれはチャンスなの。地獄の筆記試験を逃れられるチャンスなの!! チャンスは手にするものでしょ? 自ら掴み取りに行くものでしょ? 絶対に逃してたまるかぁぁ!!


「ビシバシ鍛えてください! あたしはこれに懸けてるんです!」

「破滅的な脳ミソだもんな。そりゃ懸けたくもなるか」

「宗次郎は黙ってて」

「七瀬さん、宗次郎……君達は私語を慎め」

「そうやって偉そうにしてられんのも今のうちだぞ」

「何?」

「ま、まぁまぁ……上杉先輩も宗次郎も落ち着いてくださいよ~」


 いや、なんであたしがこの兄弟を宥めなきゃなんないのよ。めんっどくさ。上杉先輩に物凄い勢いで睨み付けられるし、とばっちりもいいとこだわー。


「ここで特別ゲストを招こう」


 いやいや、空気読んでくれる!? 小島さん!!


「やぁ、どうも」

「暇潰しに来てやったぞ~」


 ── え。柔道着を着た蓮様と九条が……しかも黒帯だし。


「ちなみにこのお二方は黒帯以上の実力。ただ年齢的な問題で黒帯なだけだ」


 うん、なるほど? さっぱり分からん。てか黒帯以上の実力があるなら、この訓練の意味もさっぱり分からん。


「小島さん!!」

「なんだ、七瀬」

「そんな化物じみた強さを持っている人達を守る意味が分かりませんっ! 必要無いかと! むしろ、全力で守っていただきたいっ!」


 あたしがそう言うと、分かりやすく目を逸らした小島さん。


「貴様……なんと無礼な」


 上杉先輩の鉄槌が下りそうになったので、あたしは迷わず前田先輩を盾にした。


「え、私ですか」

「助けてくださいよぉぉ、前田せんぱぁぁい」

「七瀬さん、そんなキャラでもないですよね?」

「ちぇっ」

「上杉君。貴方も貴方でどうかと思いますよ」

「それはどういう意味だ?」

「七瀬さんを目の敵にしすぎなのでは? と言っているんです」

「君は随分と甘やかしているようだな。何を企んでいのるかは知らないが、君の立場ってものを肝に銘じておけ」

「それは重々承知しているつもりですが? 私が七瀬さんと関わることで、何かを疎かにしたことがありましたでしょうか。貴方こそムキになってちょっとしたミスが増えたこと……ご自覚はあるでしょう? 私がフォローしているっていうことをお忘れなく」


 ・・・わぁーお、こっえぇー。んで、前田先輩かっけぇぇー。あの上杉先輩が何も言えず、あたし達の前から去ったよ? すっごぉぉい。心の中で拍手喝采だよー、大好きぃ。


「前田せんぱぁぁい、んもぉ大好き~」


 ムギュッと抱きつこうとしたらチョップされた。


「調子に乗らない」

「すみません」


 ── こうして体術強化訓練という名の、チャンスを掴む訓練が始まるのであった。

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