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嘘か本当か①

 


 ゴールデンウィーク初日、“虫除け”と称して首に付けられたアレがキスマークだと気づいたのは、その日の夜だったってのら言うまでもない。そして、あたしの悲鳴が轟いたのも言うまでもない。


 魔のゴールデンウィーク後、特に問題もなく学園生活を送っている……と言いたいところなんだけど。まあ、ちょっと嫌がらせは日常茶飯事。でも、お給料をしっかり貰ってる身として、この程度の嫌がらせを我慢できなくてどうする! と自分に言い聞かせると共に、自分以外に害が無いならいっか。と開き直っている。


 そんなことより問題なのがそう、“全サーバント対象、唐突な抜き打ちテスト”これが大問題。実地試験・筆記試験が行われ、実地試験は何とかギリ合格ラインなんだけど筆記が赤点しかない。


「はぁぁ。お前さぁ、どんだけポンコツなんだよ。なんでそんなにも馬鹿なのかまぁじで理解できん。お前の脳ミソどうなってんのー?」


 等々、九条に罵声を浴びせられる。


「スミマセン」

「だからさぁ、俺が教えてやるっつってんじゃん」

「いえ、それは結構です」

「即答すんじゃねぇよ」


 サーバントの体力テストで好成績を残したあたしは、なんとかそれのおかげで首の皮が1枚繋がってる状態。


 そんな日々を送り7月上旬 ── ある事件が起きた。というより、あたしにとってはあるチャンスが訪れた。


 ピーーッ、ビビッ。


「全サーバントに告ぐ、5分以内に第3グランドへ集合。時間厳守、遅れた者は即刻天馬を去れ。以上」


 なんの慈悲もない声の主はもちろんサーバントリーダー 上杉先輩。放送が終わると同時に地響きがする、そしてあたしはトイレにいます。


「……やっっばぁぁ!! ていうか、第3グランドってどこ!?」


 とにかくあたしは走った。


 ・・・ヤバいヤバいヤバいヤバい!!


「無駄に広すぎぃー!!」


 そう叫びながら、がむしゃらに走るあたし。


「おい」


 そんなあたしの目の前に救世主が現れた!


「九条ヘルプッ! あんたに出会えて初めてよかったって心の底から思ってる自分に吐き気がする!」

「そうか、じゃーな」

「ちょちょちょ! 待って、マジで待って!」


 あたしに背を向けて去ろうとする九条の背中に飛び乗った。


「ハァッハァッハァッ、ちょ、見捨てないでよ! 自分のサーバント見捨てるとかどんな神経してんのよあんた!」

「あ? お前がどんな神経してんだよ。マスターを愚弄するにもほどがあんでしょー」

「うっさい。で、九条……第3グランドってどこ?」

「知~らね」

「案内しないとこのまま絞め落とす」


 あたしは容赦なく九条の首をホールドした……けど、あれよこれよという間に羽交い締めされるあたし。


「マスターの首を絞めるなんざ前代未聞だぞ」

「あたしをそんじょそこいらのサーバントと一緒にしないで」

「ま、そうだな。こんなポンコツがうじゃうじゃ湧いてたら世も末~」

「だぁぁー! もう! 早くしないとクビになるって、冗談抜きで!」


 あたしがそう言うと、羽交い締めしてる力が一瞬だけ緩んだ……とはいえ、馬鹿力なので抜け出せません。


「お前的にはいいんじゃねぇの」

「は? 何が?」

「俺のサーバント辞めれんじゃん」


 いつも通りのおちゃらけた感じで言ってくれれば、めちゃくちゃに言ってやろうと思えるけど、おちゃらけ要素のない声色。


「あたしはね、あんたのサーバントをやり抜くって決めたの。意地よ、意地。だから、こんな中途半端で終わらせたくない」

「……」


 なぜか沈黙が流れる、体感的には1分ほどの沈黙。


「あっそ。つーか、もうどう頑張っても間に合わねぇけどな~。ははっ、どんまぁい」

「……ふっっざんけんなぁぁ!!」


 ジタバタ暴れるあたしを未だに羽交い締めにして、ケタケタ笑ってる九条にマジで殺意しかない。こちとら生活かかっとんじゃあー!!


「はいはい、落ち着けって」

「落ち着いてられるかぁぁー!!」

「おら、行くぞ」

「え? え!? ちょっ……!?」


 安定の肩担ぎ、どんな馬鹿力してんのよこいつ。


 そして、第3グランドやらに到着したのはいいんだけど、どう見ても何も間に合っていない。めちゃくちゃ注目の的だし。


「七瀬舞、私は時間厳守と言ったはずですが?」


 眼鏡をカチッと上に上げながら、鋭い眼光をあたしへ向けてくる上杉先輩。


「すみません」

「即刻立ち去れ」


 マイク越しの声は、酷く冷たいものだった。


「悪いね~、上杉。こいつ遅れたの俺のせいだから許してやって~」

「ですが九条様っ」

「この俺が許してやってくれって言ってんだけど。上杉……お前、俺の声聞こえてねえの?」


 会場の空気がピンッと張りつめて、全員が緊張してるのが伝わってくる。


「九条様がそう仰るならいいのでは? 九条様の意見に反対する者など、この学園にはいないのですから」


 上杉先輩の隣に立っている前田先輩が淡々とそう言うと、眼鏡を押さえながらかなり不服そうな上杉先輩。


「次はないですよ、七瀬さん」

「申し訳ありません。ありがとうございます」

「んじゃ、俺は戻るわ~」

「九条様……あの、ありがとうございました」

「べっつに~。たっぷり礼してもらうから気にすんな~」


 なーんて言いながらニヤッとして、ご機嫌良く去っていく九条。はぁぁ、嫌な予感しかしない。


「サーバントの諸君。急遽集まってもらったのは先日、二軍のマスターが1名急襲を受け、全治1ヶ月の怪我を負い、サーバントはあろうことか逃走し軽症で済んだ……という事件についてだ。そんなこと、本来あってはならない由々しき事態だ。その件について諸君に話がある」


 うわ、マジでそんなことあんの……? こわっ。ていうか、逃げて責められるとか可哀想じゃない? さすがに。 そんなの自分の命を必死に守った結果じゃん。別に悪いことをしてるわけではないのに。


「サーバントはマスターを“守る”のが鉄則。我々はマスターに忠誠を誓ったはずではないのか?」


 あの、忠誠を誓った覚えが1ミリもない女がここにいます。


「今一度問う。我々はマスターに忠誠を誓ったのではないか!!」

「「「「「「yes!!」」」」」」

「忠誠を捧げよ!!」

「「「「「「yes!!」」」」」」


 サーバントが一斉に握り拳を胸に当てた。これ、何かのパクりっぽいけど大丈夫?


「マスターを差し置いて自分だけが助かろうなど、こんな失態は二度とあってはならない!! よって、本日より“体術強化訓練”を行う! この急襲を受け、サーバントにより求められるのは、教養だけではないと私が判断した。もちろん教養があることが大前提の話ではあるが」



「面白い!」や「いいじゃん!」など思った方は、『ブックマーク』や『評価』などしてくださると、とても嬉しいです。ぜひ応援よろしくお願いします!!


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