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GW③

 ── あっという間に夕方になって、そろそろお開きムード。


「余ったな。舞持ってく?」

「持ってく」

「律辺りが『お土産よろしくね』とか言ってるでしょ」

「ご名答」

「ははっ。だよな~。ちょい待ち、なんか容器持って来るわ」

「すまんな」

「いや、言い方よ」


 容器を取りに行った拓人。すると、背後からフワッと香る九条の匂い。あ、ヤバい……そう思った時にはもう遅かった。ガバッと後ろから覆い被さるようにあたしへ体重をかけてくる九条。


「……重っ」


 ていうか、マジで距離感!!


「仲良さげだねー。お前ら」

「はあ?」

「佐伯君だよ、さえきくーん」

「はあ、そりゃ幼なじみだもん。あんただって蓮様達と仲良いじゃん。それと変わんないでしょ」

「……そうかぁ? んじゃ、ただの幼なじみってこと?」


 拓人とは“ただの幼なじみ”というより、兄妹っていうか家族に近いっぽいのはあるかも……? まあでも、余計なこと言ってこれ以上九条と拓人の謎なバチバチが悪化しても困る。


「ま、まぁ、そうね」

「ふ~ん」

「……ていうか、重いってば」

「あ? 俺のあまりのイケメンさにっ」

「違う。物理的に重いって言ってんの」

「あ~、舞ちゃんと九条君がイチャイチャしてる~」

「マジで舞玉の輿じゃーん」

「ははっ。僕と七瀬さんとっても仲良しなんだよね~。ね? 七瀬さん」


 どの口が言う。あたしはヒュッと九条の中から脱出した。


「イチャイチャしてるわけでも、玉の輿なわけでもありません。ちなみに仲良くなった覚えもありません」


 ムスッとしながら美玖達のもとへ行くと、2人ともニヤニヤしてるし。


「やめて、その顔」

「ようやく舞ちゃんにも……」

「今までいなかったのが奇跡でしょー」

「ねえ、変に勘ぐるのヤメて」

「いいじゃん、九条君」

「あん時はヤバい奴じゃんって思ったけど、もはやヤバい奴とかどうでもいいくらい、優良物件すぎるでしょ」


 2人とも分かってない……あいつの本性を! ほんっとうにクズなんだからっ! クズの一言片付けたくないくらいクズなんだから!


「舞~、どれ持ってく~? とりあえず律達が食べそうなやつでオッケー?」

「うん、オッケー」

「あ、ヤバい。拓人君のこと忘れちゃってたぁ……」

「私も……」  

「え、何が?」

「ううん、こっちの話~」

「拓人も悪くはないよねー」

「申し分ないでしょ~、拓人君なら~」


 なんてブツブツ話し始めた美玖と梨花。拓人かぁ……いや、本当に彼女できないのがおかしいよね。このままあたしと拓人、恋人ができなかったらマジで結婚させられそう。うちの親にゴリ押しされて……。ま、別にそれはそれで悪くはないか~とか思っちゃうあたしもヤバいけど。だいたい拓人をそういう対象として見れないんだよなぁ。だってもう、“家族”みたいなもんだし?


 チラッと拓人のほうに目をやると、九条が胡散臭い笑みを浮かべながら拓人にちょっかいを出していた。レスキュー隊 七瀬舞 出動!!


「そこを離れなさい九条!」

「ええ、今佐伯君と仲を深めているところなんだけど……ね? 佐伯君」

「九条君って友達いる? その絡みマジで鬱陶しいんだけど」

「はは。酷いなぁ……いるよ~?」

「その友達とやらは随分と我慢強いんだな」

「ということは、佐伯君が我慢ならない性格ってことかなぁ? 器の小さい男だねえ。モテないでしょ」

「生憎モテたいなんて思ってないんで」

「はいはい、もうヤメヤメ! あんたはこっちへ来なさい!」


 九条の首襟を掴んで容赦なく引っ張った。しれっと車付近で煙草を吸ってる霧島さんに、大きな荷物(九条)をプレゼントした。


「はい、お疲れ様でした。今日はわりと役に立ってくれたのでお礼を言います。ありがとうございました。では、気をつけてお帰りください。さようなら」

「あ? なぁに言ってんのー? お前も帰んぞ~」

「は? あたしはまだっ」

「んじゃ、俺もまだ帰らん」


 なんっでそうなるかなぁ!?


「帰って」

「無理」

「帰れ」

「嫌だー」

「あーーもうっ!! じゃあせめて大人しくしてて!!」


 ニヤッと笑みを浮かべる九条に腹が立つ。


「まぁまぁ、んな怒んなって~」


 なんて言いながら肩を組んでくる九条。本当にこいつの距離感なんとかなんないの? マジでハゲる、ストレスで。何が嬉しくて休日までこいつと一緒にいなきゃなんないの? おかしくない? 本っ当にありえない。


 ── それからバーベキューの後片付けをテキパキする九条。なにもできない男……ではなく、できるのにやらない男……だったというわけね。あの九条が働いているなんて、明日大雪確定演出。


「あ、佐伯君これ」


 九条の声がしたほうへ視線を向けると、拓人にお金を渡そうとしてる。


「なにこれ」

「僕と霧島の分、会費みたいなもんだよ」

「いや、1万て……こんな要らないんだけど」

「急遽お邪魔しちゃったし、とても楽しかったから受け取ってよ。あ、七瀬さんの分も含めれば丁度いいくらいかな?」

「肉は親戚から貰ったやつだし、野菜も近所から貰ったやつだから、マジで金かかってねえんだわ。だから要らん」

「拓人君~。それ九条君の気持ちってやつじゃない? ありがたく受け取ってさぁ……それで花火買わな~い? みんなでやろうよ~」

「お、いいね。去年私ら花火やってなくない?」

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