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GW②

 ・・・いや、どういうこと? ま、いいや。もう深く考えるのも面倒くさい。


「どんだけ痛い虫除けよソレ。痛い虫除けなんて聞いたことないわ。絶対に売れないと思う」


 すると、吹き出すように笑う九条と霧島さん。なんなの、この人達。


「やっぱお前ウケるわ~。んじゃ、ちょっくら挨拶でもするか~」

「はあ? ちょ……え? ちょっ!?」


 車から降りて歩き始めた九条を慌てて追うあたし。


「ちょっと! なに考えてんの、あんた!」

「べっつに~? お前のお友達とやらに挨拶くらいしてやってもいいかなって思っただけ」

「必要ない! マジで要らん! 余計なことしないで!」

「おまっ、そりゃないでしょ~。泣くよ~? 俺」

「泣けよ、知らねーよ!!」

「ったく、女らしさの欠片もねえな」


 そうさせてるのはどこの誰でしょうか!?


「あ、舞ちゃ~ん……と、えっ!?」

「わ~お、九条柊弥じゃん。なんで一緒にいんの~?」

「舞、なんで九条君が?」


 たまたま包丁を持ってる拓人があろうことか九条に包丁を向けた。シャレにならん、物騒だからヤメテー。


「いやぁ、たまたま七瀬さんと鉢合わせちゃって。美玖ちゃん、梨花ちゃん久しぶり。元気そうで何よりだよ」


 たまたま鉢合わせた? どの口が言ってんのよ、んなわけないでしょうが、ふざけんな。


「舞ちゃんが天馬行ってるってマジなんだぁ~。スゴいねぇ~、あの九条君とお友達になってるじゃん」

「ていうか、あん時とキャラ違くない?」

「ああ、あの時はちょっとイライラしてて、本当にごめんね? 怖い思いさせちゃって。どうかしてたよ、あの時の僕は。お詫びにもならないとは思うけど……これ、よかったら可愛い2人に」


 そう言いながら王子様スマイルを浮かべ、どっからともなく現れた霧島さんがアタッシュケースをパカッと開くと、見るからに高そうな化粧品がズラリと並んでいた。


「うわっ、これ! 全っ部新作じゃない!? わたし欲しかったんだよね~。このシリーズ」

「発色いいって有名だよねー。でも、高すぎて買えないっていうねー」

「美玖ちゃんも梨花ちゃんが元がいいから、きっと映えるだろうね。よかったら受け取ってくれないかな? たまたま知り合いから貰ったんだけど、僕には必要ないし……ね?」

「ええ~、めっちゃ嬉しい~! ありがと~う」

「ラッキー」


 しれっとアタッシュケース2つになってるし……。霧島さんは満面の笑みを浮かべながら、美玖も梨花にアタッシュケースを渡した。


「あ、ごめんね? 佐伯君には何もない……かな?」

「はは。別に要らないから」


 もう無駄にバチバチするのもヤメて、頼むから。


「もういいでしょ、さっさと帰ったら?」

「ははっ。酷いなぁ……七瀬さん。そんなこと言わないでよ」

「拓人がいいなら君も一緒にバーベキューする?」


 ちょいちょい! 何を言い出すの!? 梨花ぁぁ!!


「いいね~。人数多いほうが楽しくなぁい?」


 なぁぁにを言ってんのよ! 美玖ぅぅ!!


「え~、いいの? 嬉しいなぁ。どうかな? 佐伯君」


 てめぇは迷わず帰れー!!


「役に立つなら。九条君って火起こしとかできる? あ、包丁も持ったことすらないよね? そんなお坊っちゃまが火を扱うなんて危なっ」


 すると、目にも止まらぬ早さで火を起こし、野菜達をバババッと切って、なんかよく分かんない前菜までも出来上がった。


「すごっ」

「わぁ~、九条君って何でも出来るんだね~」

「ははっ。まあ、この程度なら」

「「……」」


 言葉を失うあたしと拓人にニコッと微笑んでくる九条と、なぜかドヤ顔の霧島さん。


「で、どうかな? 佐伯君。僕は役に立ちそうかな?」

「……ま、勝手にすれば」

「え、拓人っ」

「ありがとう。嬉しいよ」


 ── こうして地獄のバーベキューが始まった。


 と、言いたいところなんだけど、九条は絶賛猫かぶり中だから大してイライラもしないし、なんなら率先してお肉を焼いたり何やかんやしてくれてる。


 で、ビックリするくらい気が利くのよこれが。周りをしっかり見てるし、話上手の聞き上手で美玖達もめちゃくちゃ楽しそう。あたしは拓人となぜか未だにちゃっかり滞在してる霧島さんと3人でいた。


「霧島さん」

「なんでしょう」

「これ、休日手当とか出ます?」

「出ません」

「なんの話?」


 ・・・あ、やっっば!! サーバント制度のこと話してないんだった。というか、話せるわけがないっ!


「あ、ああ……はははっ、えっと……」

「私の話ですよ。私は今日、休日予定だったので」

「あー、そういうことっすか」


 ありがとう、霧島さん。


「拓人、トイレ借りるね」

「あ、俺も行く」

「佐伯君。男女の連れションは如何なものかと」

「霧島さんは少し黙っててもらえますか? 行こ、拓人」


 あたしの腕を掴もうとした霧島さんをひょいっと躱して、あたしは足早にその場を去った。


「拓人ごめんね?」

「ん? 何が?」

「ぶっちゃけ九条のこと嫌いでしょ」

「まぁ、嫌いっつーか。まぁ、別に……」


 突然言葉が止まった拓人。


「ん? どうしたの?」


 見上げるとあたしをガン見していた。


「舞」

「ん?」

「それ、どうした」

「え?」

「首」


 ・・・首?


「首?」

「それ、つけたの誰?」

「つけたって……なんかついてる?」

「誰」


 えぇ、なんか過去イチ怒ってるんですけど、拓人。


「九条が虫除けだって……」

「ふーん、""虫除け""ねぇ」


 そう言ってフラッといなくなった拓人……が戻ってきた時に手にしていたのは、消毒液とティッシュと絆創膏だった。


 容赦なく消毒液をあたしの首にぶちまけた拓人。


「ちょっ……!!」


 そして、ティッシュでバンバン拭かれて、ベチンッと絆創膏を貼られた。


「消毒完了」


 死んだ魚の目をしながらグッドサインをしてくる拓人に、苦笑いでグッドサインをするしかないあたしであった。


 そんなこんなで戻ると、颯爽と現れたのはもちろん九条。


「大丈夫? 七瀬さん」

「あーはあ、大丈夫ですけど?」


 すると、ジッとあたしを見てくる……と言うより、あたしの首の辺を見ているような?


「それ、どうしたの?」

「え、あー。消毒された」

「へえ。誰に?」

「俺だけど」

「ふーん」


 この2人、一生仲良くなるなんてことはないな。



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