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一触即発?③

「宗次郎、上杉の弟だからってあまり調子に乗らないでくれる?」


 そこへ、冷徹な目をした上杉先輩がやってきた。これは一触即発になりかねない予感がしてならない。それは何としてでも避けたいな。それに、一応あたしを庇ってくれたっぽいし……宗次郎は。


「いやっ、ほんっとうに申し訳ございません! 宗次郎君、彼女にフラれたばっかで情緒不安定だったみたいで、はは。だから、あのっ、同期のあたしが何かしますので……では、失礼します!!」

「おいっ!?」


 あたしは宗次郎の袖をガシッと掴んで、そのまま走り連れ去った。


「ハァッハァッ……はぁー、疲れた」

「……っ。なんだよ、いきなり……てか足速すぎんだろ」


 あぁあ、やだやだ。九条にどやされるんだろうなぁ、これ。


「もぉ、あのさ、喧嘩とか勘弁してくれない?」

「あ? 俺は別にっ」

「でも、ありがとう」

「は?」

「庇ってくれた……よね? 多分。だから、ありがとう」


 あたしがそう言うと少し目を見開いてすぐ元に戻る宗次郎。


「俺は自分にプラスになるか、ならないかで行動するタイプだから律儀に礼を言われても困る。つーか、そんな筋合いはない。利用できるもんはとことん利用する、ただそれだけのこと」

「ふーん。『同期だから仲良くしよーぜ』って設定はどこにいったのよ。宗次郎って馬鹿じゃない?」

「あ、そうだった」


 まあ、ある意味裏表がないってことかな? ぶっちゃけ上杉先輩より宗次郎のほうが絡みやすいし、気を遣う必要もないからラクではあるよね。


 そして、あたしの中で少し引っ掛かっていた何かがひとつだけ何となくだけど分かった気がする。


「ねえ、宗次郎って……上杉先輩と仲悪いの?」

「さぁ? 良くはないんじゃね?」

「そっか」


 あたしが首を突っ込むような話ではなさそうだし、宗次郎は期間限定のサーバントだし、そこまで深入りする必要もない……か。


「柊弥、落ち着きなよ」


 そう聞こえたほうへ振り向くと、冷めた表情をした九条と、それを宥めようとしている蓮様の姿があった──。


「あ、あの、ごめんなっ……!?」


 謝ろうとしたあたしに見向きもしないで、宗次郎の胸ぐらを掴んだ九条。


「おい、柊弥!」

「え、ちょっ、九条!?」

「俺を苛立たせるようなことはすんなっつったよねー?」

「『俺を苛立たせるようなことさえしなければ、ここの出入りは許可してやる』とは仰っていましたね。俺はただ、同期の七瀬さんと仲良くしたかっただけなんですけど」


 ・・・すんごくバチバチしてるよ、この2人。なんで?


「宗次郎、すまないね。おい柊弥……離せ、その手」

「あ? 誰に向かって言ってんだよ」

「君しかいないだろ」


 ちょいちょい……! 蓮様ともバチバチすんのはやめてくんない!?


「あのっ!!」


 あたしが大きな声を出すと、ピタッと動きが止まる3人。


「宗次郎君、ごめんね。蓮様もすみません」


 あたしは宗次郎から無理やり九条を引き離した……ら、そのまま九条に引っ張られて、適当な準備室に放り込まれた。


「どいつもこいつも、そんなに俺を怒らせるのが楽しいわけ?」

「は? そもそも何をそんなに怒ってるわけ? あんたは」

「そりゃ自分のモンにちょっかい出されたらイライラすんでしょ、普通」

「ちょっかいって……別にそんなんじゃないし、いちいち過剰に反応するのやめてくれない?」


 ただの暇潰しなんでしょ?


 たかがサーバントなんでしょ?


 使い捨てのオモチャなんでしょ?


「あいつはダメ」

「は?」

「あいつが何を考えてんのか分かんない以上、無駄に馴れ合うなっつってんの。なんかあってからじゃ遅ぇだろ」


 妙に真剣な表情をして、“命令”というよりは“お願い”をされているようなそんな感じ。九条にしては珍しいな。


「明日、雪でも降るんじゃない?」

「お前、泣き喚くほど躾てやろうか」

「……はは、スミマセン」


 やっぱ宗次郎には何かしらあるってことなのかな。根っからの悪い奴って感じではなさそうなんだけど。


「とにかく上杉弟には要注意っつーことでオッケー?」

「ハイハイ」

「『ハイハイ』じゃねぇだろ」


 機嫌の悪そうな笑みを浮かべながら、あたしを見下ろしている九条に腹が立つ。


「……御意」

「よろしい」 


 そう言うと、満足気にここから出ようとする九条。


「あ、あのさ」

「んあ? 何?」


 ポケットに手を突っ込んで、顔だけをこっちへ向けている。


「『上杉弟』って呼び方がちょっと気になるっていうか、やめてあげてほしいなって」


 ま、あたしもさっきまで心の中ではそう呼んでたけども。


「は? なんで~?」

「いい気しなくない?」

「知らね~」


 どうでも良さそうに……というか、ムスッとしている九条。


「“九条の息子”、“九条の孫”って言われたら、どう思う? あんた」

「うぜぇな」


 真顔で即答すな。


「だろうね。それと一緒だよ」

「あ?」

「あたしが“七瀬の娘”、“七瀬の姉”って言われるのと、あんた達がそう言われるのとでは訳が違うっていうか、かなり意味合いが変わってくるもんなんじゃないの? って話。だから、名前で呼んであげてほしいってだけ。別に深い意味なんてない」


 あたしとは無縁の世界でこの人達は生きてるから、こんなド庶民のあたしが到底理解できるわけもないけど、それでも『上杉弟』というレッテルは気に入らないと思う。そもそも、仲が悪いなら尚更嫌なんじゃないかな。



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