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一触即発?①

 


 VIPルームこと溜まり場に着いたあたし。開けたくないもドアをガチャッと開けて中へ入ると……九条の許嫁を囲うように皆でガヤガヤしていた。あたしが中に入ってきたことなんてだぁぁれも気づいてない。


 なんて言うか、アウェイ感半端ねえ。


「お、なっげえ便所だったな」

「もぉ、柊弥デリカシー無さすぎ~。ね? 舞ちゃん」

「……はあ、あははは」


 あの凛様でさえ許嫁に懐いてる、恐るべし許嫁。上杉先輩も前田先輩も普段より心なしか緩い気がする。ここまで皆に好かれてる九条の許嫁はよっぽどいい人なんだろうなぁ。それに、あたしに対しても全く敵意がないし。ほとんどの女があたしを敵視してるのにね。


 随分と寛大な許嫁様だ──。まあ、さっきの言い分的に“お互いの親が勝手に言っていることだから、全く気にしていない”って感じだったな。


 ・・・ん? なんだろう、なんか少しモヤッとするかも。


 コンコンッとノック音がして全員がドアのほうへ視線を向ける。そして、上杉先輩がドアを開けるとそこにいたのは。


「失礼いたします」


 え。


「やっぱそっくりだな、お前ら」


 九条のその言葉であたしは理解した。


「叶様。私の弟、宗次郎です」


 上杉先輩の弟君が登場。しかも、なぜかあたしをガン見している。そんなに物珍しいですか? ド庶民の貧乏人が。で、上杉先輩の弟の視線があたしに向けられているのに気づいたのか、九条があたしの肩に腕を回して引き寄せてきた。


「こいつ、俺のだから気をつけろよ? 上杉弟」

「心得ております」

「そ」


 はあ、てか重い。さっさとこの腕を退けろ。


「宗次郎が叶様のサーバントに名乗りをっ」

「ふーん」

「……九条様、何か?」


 上杉先輩と九条の間に微妙な空気が流れてる。この場にいる全員がそれを感じているだろう。


「そいつ、上杉家にも関わらずサーバントにならねぇつって一般に通ってんだろ? なんで咲良のサーバントを引き受けた」

「まぁ、確かにそれは気になるね」


 蓮様までちょっと雰囲気が変わった。この2人にとって、この許嫁はそれだけ大切な存在ってことか。


「ごめんごめん! 私が恭次郎君に頼んだの~。ほら、宗次郎君イケメンじゃん? どうせならイケメンにお願いしたいなぁ~なんて!」


 テヘッと言わんばかりの可愛さ全開で、女のあたしですら胸を射ぬかれそうになった。


「へぇー」

「そういうことか。咲良ちゃんらしいね」


 チラッと九条を見ると、何を考えてるか分からない表情を浮かべていた。蓮様は多分納得したっぽい。ていうか、あんたはいつまであたしの肩に腕を置いておくつもり? 重いわ!


「ま、俺を苛立たせるようなことさえしなければ、ここの出入りは許可してやる」


 そう言いながらあたしの頭をガシッと鷲掴みして、揺すってくる九条。


「噂は本当だったみたいですね」

「おい、宗次郎」

「あの九条様がっ」

「宗次郎!! 私語は慎め!」


 上杉先輩の怒鳴り声が響き、シンッと静まり返る室内。なにこれ、気まずっ。


「九条様、申し訳ございません。教育が行き届いておらず」

「んな怒鳴ることでもないっしょ~。な、上杉弟」

「ごめ~ん! ちょっといいかな? 宗次郎君」

「はい」


 九条の許嫁と上杉先輩の弟が部屋から出ていった。そして、ようやく九条から解放されたあたし。九条は何やら考え事をしているのか上の空状態な顔してるし。


「やっぱ上杉より宗次郎のほうがカッコいいわね~」


 そんなことを言いながらメイクを直している凛様。


 まあ、上杉先輩に似てはいるけど……たしかに上杉先輩より弟のほうがイケメンではある。ちょっとチャラついてる感は否めないけど。


「こら、凛。そんな言い方上杉さんに失礼だろ。悪いね」

「いえ、蓮様。お気になさらず」

「皆さん、そろそろお時間ですよ」


 前田先輩の一声で皆が一斉に時計を見た。


「ぼちぼち行くか」


 教室へ移動している途中で、九条の許嫁と上杉先輩の弟と合流した。


「あ、舞ちゃん! 私のことは咲良って呼んでね~?」

「いや、それは……」

「私、舞ちゃんとお友達になりたいの~。だから、咲良って呼んで? ね?」

「えっと、じゃあ……咲良……ちゃんで」

「ふふっ。嬉しい~! よろしくね!!」

「よろしく……お願いします」

「あっ、柊弥──」


 いつの間やら九条とあたしの間に咲良ちゃんが入ってきて、グイグイ九条を引っ張りながら先を歩いている。その前に蓮様達、上杉先輩達が歩いてて、必然的に一番後ろで上杉先輩の弟と肩を並べて歩くことになった。


「俺、上杉宗次郎(うえすぎそうじろう)。1年」

「あたしは七瀬舞。1年」

「知ってる。君、有名人だし」

「へえー」

「もちろん悪い意味で」

「でしょうね」

「あの人のサーバントなんて辞めたら?」


 表情を何一つ変えることなく、淡々とそう言い放った。


「上杉先輩の差し金?」

「は? なんのこと?」


 あたし達はさっきから九条に聞こえないように会話をしている。小声で前だけを向いて、お互いを見ようともしない。明白な何かがあるわけじゃないけど、何かが引っ掛かる。


「サーバントになるのが嫌で一般に行ったんでしょ?」

「まぁね」

「なら何で咲良ちゃんのサーバントを引き受けたの」

「さあ? ……あ、同い年だし宗次郎でいいよ。舞でいい?」

「は、はあ。別になんでも」


 すると、あたしのスカートのポケットにスッと何かを入れてきた宗次郎。ポケットの中に手を入れると、紙切れらしき物が入ってる。


「それ、俺の連絡先」

「は? 要らないんですけど」

「仲良くしよーぜ。お互い愚痴溜まりそうだし、同期なんだからさ」


 上杉先輩とは真逆なタイプだな。まあ、咲良ちゃんが九条と一緒にいる以上、関わることは増えそうだしな。


「連絡はまだできない」

「どういうこと?」

「あたしが持ってるスマホ、九条のだから。給料が入って九条に携帯代を支払うまではこの番号は誰にも教えないって決めてるの。親友にも教えてないのに、君に教えるわけにはいかないでしょ」

「……へぇ、舞って面白いね。そんなの別に気にする必要なくね? あの人がくれたんだろ? もう舞のじゃん」



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