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契約②

 


 ── “天馬学園”


 あたしでも聞いたことがある超有名な学校じゃん。天馬なんて超お金持ちか、ある程度の財力と高い学力必須な所だよね? ははは……いやいやいや、どう考えてもあたしとは無縁すぎるよ、天馬学園なんて。


「お馬鹿ちゃんでも簡単に分かるよう、お前のやるべきことを簡潔に説明してやるよ」


 いえ、結構です。そんな場違いな所には行きたくありませんので。というか、なんで上から目線? 頼んでもないのに説明させるとか迷惑極まりないんですけど? 


「天馬のエリートコースには“サーバント制度”つーもんがあんだけど、要は“マスター(主人)”と“サーバント(使用人)”って制度ね? ぶっちゃけ召使いなんて要らねんだけどさ、気分が変わったっつーか? ま、学園の方針じゃ仕方ないじゃん? てな感じで~」


 どの口が言う? あなた、学園とやらの方針とやらに素直に従うタマでもないでしょ。なにをほざいてんのかな? あたしは冷めた目で九条を見ることしかできない。


「で、もうここまで言えば、お馬鹿なお前でも察しはついてんでしょ~? これで分かんなかったら馬鹿とかのレベルじゃないよねえ」


 サーバント制度……か。要は九条の“サーバント(使用人)”になれってことでしょ? は? なにそれ。むり、ムリ、無理、絶っっ対に無理ぃぃ! そんなの嫌だ! 


「そ、そんなの無理でしょ……? いくらサーバントとはいえ、ある程度の家柄・教養は必須じゃないの? そんなのあたしにはないしっ」

「あぁうん。お前の言う通り、サーバントはなりたいって言ってなれるようなもんじゃない」


 でしょうね! だったらあたしがサーバントになるなんて無理じゃん、不可能じゃん、嫌だよそんなの! 無理なものは無理、はい! この話は終わり!


「だったらっ」

「特例」


 ・・・と、特例……?


「なによ、それ」

「俺""は""何でも許されるっつーことかな? で、その首輪は“俺(九条)のサーバント”ていう証。誰のサーバントか分かりやすく印をつけとく的なやつね~。よし、もう喜んでいいよ~? ほら、喜べよ。俺のサーバントになれる奴なんてお前くらいなんだし。嬉しいだろ? トクベツってやつ」


 ニヤッとして満足気な表情を浮かべてる九条に呆れて何も言えないあたし。ほんっと自信家ってのも良し悪しだな。こんな要らない“トクベツ”なんて嬉しくも何ともないんだけど。


 なんて思いつつ何気なくペンダントトップを見てみると、校章らしきデザインの真ん中に“九”の文字が刻まれていた。


「……はぁぁ、何日?」

「あ? なにがぁ?」

「だから、何日間あんたのサーバントやればいいわけ?」


 こうなったらやるしかないでしょ、罰ゲームだと思ってさ。さすがの九条だって数ヶ月もあたしにそんなことさせないだろうし。“何でも言うことを聞く”なんて口約束だし、長くても1週間くらいなもんかな? そもそも飽きるでしょ、こんな馬鹿げた罰ゲーム。


「ははっ。なに言ってんのー? お前」

「……え?」

「そんなもん3年間に決まってんでしょ」


 ・・・はい? 3年間……? 3年間って、なに? 3年……さ、さんねんっ!?


「はあ!? ちょっ、アホなの!? 馬鹿じゃん! ありえない!」

「まぁまぁ落ち着けって~」

「こんなの落ち着けるかぁーー!!」

「だぁから、お前にとっても悪くねえ話だって言ったよね?」


 は? えーっと、そんなこと言ってたような、言ってなかったような……って、そんなことはどうでもいい! 


「そんなの知らなっ」

「はいはい、マスターの話はちゃんと聞けよ? サーバント」


 あたしの瞳をしっかり捉えて、ほんの少し低い声で威圧してくる九条にスンッと黙るしかなくなった。こいつ、ヘラヘラしたり威圧的になったり卑怯じゃない? 緩急つけすぎだっての。


「まずデメリットはほぼない。お前の脳足りんくらいじゃない? 問題なのは。で、メリットはいくらでもある。まず、学費は一切かからない。んで、天馬でサーバントをやっていたという功績は、将来的にかなり有利になる。まあ、大手の就職ほぼ確でしょ。で、お前が危惧している問題は……なんら問題ではないってこと」


 は? なにそれ、どういうこと……? あたしが一番危惧していることは“収入”。働かないといけないっていうこと。これが一番重要なの。


「あの、天馬で悠長な学生ライフを送る暇なんてないんですけど、あたしには」

「サーバントには報酬が支払われる。ちゃんと給与っつーもんがあんだよ」


 わーお、そりゃ初耳。


「……え、マジっすか」

「マジっす」


 いやいや、言うてもしれてるでしょ? あたしはがっつり働いて、月15万は稼ぐ予定だったんだから!


「言っとくけどうち本当に貧乏なの。あたしが稼がないと生活が、弟達がっ」

「月20万」

「……は?」

「最低でも月20万」


 ── はぁああん!?


 あたしは今、お金に目が眩んでいる……完っっ全に!!


 だって学生の使用人、要は雑用係をするだけで最低でも月20万も貰えるんだよ!? ありえない、ヤバすぎる。いや、マジで好条件すぎない!? 最低でもってことは、昇給もあるパターンだよね、月30万以上稼ぐのも夢じゃなかったりして!? いい、ぶっちゃけ良き!


「くくっ。分っかりやすいねえ、お前。目が金になってんぞ~」


 いやいや、いかんいかん。両手で頬をベシベシ叩いて渇を入れた。そんな上手い話あるわけがないでしょ。仮にあったとしても絶対に裏があるし、そもそもこいつの使用人(雑用係)とかマジでやりたくないわ。何をされるか・させられるか分かったもんじゃないし。

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