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俺様御曹司は逃がさない  作者: 橘ふみの


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ライバル再来!?(3)

 で、なんなの今日は。なんでこうも絡まれるの? 変なやつ多すぎない? しかも声かけてくる男の大半が九条とまではいかないものの、超富裕層ばかり……なに、厄日ですか?


「その制服天馬っしょ、俺天馬の卒業生!」

「はあ、そうなんですね」


 今日で何回目よ、お金持ちに声かけられるの。こんなことになるなら意地でも霧島さんに送ってもらっとけばよかった……というより、ケチらずタクシーに乗っとけばよかったかな。


 歩きで自宅まで帰る元気はないからバスで帰りたいんだけど、バス停までまだ距離があるし……この男、なかなか引き下がらない予感しかしない。


「君1年生?」

「はいそうです」


 全身ハイブランドでできています! みたいな男に絡まれて、かなり面倒だから適当にあしらいたいんだけど、本当に天馬の卒業生だった場合あまり無下にもできないというのが現実。


「あ、本当に天馬の卒業生かよって疑ってる!? はいこれ、当時の俺ね」


 ちゃちゃっとスマホをいじって、わざわざあたしに見せてきたのは、天馬の制服を着て天馬の校舎をバックにハーレム状態でとてもご満悦そうに写っているこの男の写真だった。


 まあ、おそらく本当に天馬の卒業生だろう。

 

「イケてるっしょ」

「はは、ですねー」

「その首輪、君サーバントだよね?」

「そうですねー」

「ねぇねぇぶっちゃけさ、金が必要なの?」

「はい?」

「だって君、けっこう可愛いけどちょっとさ……パンピーくさいよね。どうやって天下の天馬でサーバントなんてやってんの? 君みたいなド庶民がやれるもんでもないでしょ。もしかして……えっちめっちゃ上手とか!?」


 ぶっ飛ばしてもいいかな?


「ははは」

「え、何々、マスターに脅されてんの? 性奴隷てきな?」


 なにを言ってるんだこいつは。


「いえ」

「てかさ、そんなに金欲しいなら俺の女にならない?」

「はい?」


 なぜそうなる。


「いやぁ、けっこうタイプなんだよねえ、君みたいな子。金が欲しくてマスターの犬やってんなら俺が飼ってあげるよ。いくら欲しい? サーバントって月給いくらだっけ、月40万でどう?」


 お金欲しさにサーバントをやっているわけではない……とかっこよく言いたいところだけど、実際問題お金が必要で、お金のためにやっているようなもの。まあ、それだけではないんだけどね。


「あなたも天馬の卒業生ならお分かりでしょう。サーバントがマスターを裏切るなんて言語道断です」

「裏切れとは言ってないよ。俺は独占欲とかないんでね、君がマスターを裏切れないって言うんなら裏切る必要はないさ」


 それってつまりは、サーバントをしながら俺の犬にもなってね? という意味……そうなるとあたしの月収は合わせてざっと70万くらいに……ってこらこら、お金に惑わされるなあたしよ。


 こいつの犬とやらになるとして、ただのアルバイトってわけでもなさそうだし、ただの雑用係(アルバイト)にしろ、あの九条がそれを許すはずがないでしょうが。


「すみません、マスター以外のサーバント()とやらになるつもりはこれっぽっちもありません」

「……俺ってさ、イケメンだよね?」

「はい?」

「ねぇ、ぶっちゃけどう?」


 まあ、世間一般的にはイケメンなのでは? としか言いようがない。そもそも国宝級の顔面が毎日隣にあるもんだから、そのへんの感覚がおそらく麻痺ってるのよね。

 

 でもまあ、たぶんイケメンなのでは? 興味ないけど。


「俗に言うイケメンなのでは?」

「君はどう思うの? 金持っててこのビジュだよ? 悪くはないと思うんだけど俺」


 それはそう。九条ほど俺様っぽくもないし、お金欲しさならこの男でもいいのかもしれない。


 だけど違うんだよね、根本的な部分が。


「あたし殴る蹴るの暴行が当たり前な女ですけど耐えれます?」

「……ん?」

「飼い主だろうがなんだろうが逆らうし噛みつきますけど我慢できますか」

「……」


 九条はこんなあたしですら鼻で笑って受け止めてくれるの。あたしのマスターは九条しか務まらない、あたしの恋人も九条以外は務まらないでしょうね。


 それにぶっちゃけ、九条以外の男に微塵も興味がないかなりの重症っぷりなのよ、あたし……きもちわるっ!


「声かける相手、間違えたようですね」

「……ははっ! いやぁ無理無理! さすが九条君のサーバントだわ!」

「はい?」

「首輪見りゃわかるよ~、てか俺頼まれたんだし!」


 いや、意味がわかんない。だれになにを頼まれたわけ?


「あの、どういうことですか?」

「そりゃ色々試したくなるよね~、あの九条君のサーバントだし……ていうか彼女なんでしょ? 九条君の」

「……あの、本当になんなんですか」

「ごめんごめん! あとは本人達に聞いてよ! じゃあね!」

「え、ちょっ……!」


 ヘラヘラ笑って手を振りながら去っていく男を追いかける理由もないし、ただ釈然としないまま立ち尽くすあたし。


 どういうこと? 九条のサーバント、九条の彼女だって知ってて絡んできたってこと……だよね?


 命知らずなのか根っからの馬鹿なのか、いずれにせよ誰に頼まれたのかが問題なのよね。


 今日やたら絡まれたのは誰かの差し金だったってことでしょ? 九条とあたしの仲を引き裂こうとする何者かが仕掛けてきた罠だった、と考えるのが妥当? いや、違う……あの男は「色々試したくなるよね」って言ってた。


 あたし、何者かに試されてた……? 


 こんなことするのは──


「だぁから言ったろ? 俺の女は格別だって。七瀬、上出来だ」


 真後ろから聞こえた声は馴染みのあるもので、声がする前に匂いで真後ろにいるのを気づいたあたしは相当キモい。


「お褒めいただき光栄です」

「ご褒美やろうか?」

「マスターのご期待に添えたようで、それだけで充分でございます」


 振り向き様にぶん殴ってやろうと容赦なく振り上げた拳を下ろした。これは止めてくれるだろうという信頼があってこそで、にやにやしながら片手で容易にそれを止めた。


「俺じゃなかったらどうすんだよ」

「あんたじゃなかったらこんなことしてない」

「相変わらずわんぱくガールだねぇ、お前は」

「うっさいわ」

「ごめんね? 七瀬ちゃん。私なのよ、七瀬ちゃんを試してたの」


 九条を貸してほしいって、九条のサーバントとして、他のサーバントと比べて遜色がないか、九条の恋人として相応しいか、あたしを見定めるためにってことだったの?


「……はあ、そうですか」

「あらあら、そんな敵視しないで?」


 そりゃいい気はしないでしょ。そもそもあなた誰なの、九条のなんなわけ?

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