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疑惑⑴

突然ですが 俺様御曹司は逃がさない 続編はじまります!

今後も気長にお付き合いいただけますと幸いです。



 ── 天馬学園に通い始めて、あたしのなんてことなかった日常はもうひっちゃかめっちゃか状態になり、青春も恋愛も溝に捨てる覚悟をしたはずなのに、なぜか超ハイスペ男子(性格はクズ)の彼氏なんかもできちゃったりして、まぁとにかく非日常的な日々を送りながら何とか息してます。


 あたし七瀬舞は、天馬学園の超エリート達に囲まれて日々を過ごしてるわけで、ちょっとくらい学力上がってるんじゃないかって浅はかな期待をしてたんだけど、まぁそれとこれとでは話が別だったみたいで、現実はそう甘くはなかった。


 ていうか、あたしだってそこまで言うほど馬鹿じゃないんだよ? 周りが頭良すぎてあたしが馬鹿キャラっぽくなってるだけ! あたしだってそこそこだし、そこまで馬鹿じゃない……きっと何を言ったって信じてもらえないだろうけどさ。


 そんなこんなで、定期テストで当然の如く赤点を取ったあたしは補習授業を受けてるんだけど、これまた当然の如く邪魔者(九条)が隣の席にいて迷惑行為のオンパレード。まあビービーうるさいわ態度デカいわでもう最悪な状況です。


「おい」

「なによ」

「なあ」

「なに」

「なあ、七瀬~」

「……」

「なーなーせーちゃーん」


 だぁーー! もうマジでなんなの!? こいつ。こっちは赤点の補習しなきゃ進級も危ういっていうのに、俺様御曹司のかまってちゃんを相手してる暇なんて一切ないんですけど!?


「ねえ、ほんっと後にしてくんない?」

「お前ってさぁ、なーんでこうも馬鹿なのかね」

「あんたさ、殴られたいの?」

「暴力ヘンターイ」


 おい。その綺麗なご尊顔こっちに寄越せ、容赦なく殴ってやる。もう我慢ならん、寄越せ、さっさと。だいたい誰のために頑張ってると思ってんのよ。これはあたし自身のためだけじゃなくて、あんたのためでもあるんだけど。


 はあ、無駄にイライラさせるのやめてくんないかな。あたしを苛つかせる天才児か、貴様は。5歳児のほうがまだ幾分マシなんですけど、マジで。


「あのさ、邪魔しないでくれるかな?」

「補習受けてんの七瀬だけじゃーん。別に邪魔にもならんでしょ」


 ええ、たしかにそうよ、そうですよ。この教室で補習受けてんのはあたしだけですよ? 先生なんて九条に怯えちゃって教室の片隅ですみっこぐらし状態だし、どうしてくれんのよこれ。


「はぁ、もう補習の授業どころじゃないじゃん」

「だぁから俺が教えてやるっつってんだろ。補習なんていちいち受けんじゃねぇよ。だいたいお前は危機管理っつーもんがまるでなってねぇ」

「なに言ってんのあんたは」

「あ? 教室で野郎とふたりっきりになんなっつってんだよ」

「馬鹿じゃないの?」

「あ? 馬鹿に馬鹿なんざ言われたかねぇっつーの」

「ちっ。先生~! 九条様がビービー喧しいんで申し訳ありませんが今日はお暇させていただきます」

「おまっ」


 椅子から立ち上がったあたしを取っ捕まえようとした九条をひょいっと躱して、フンッと鼻で笑いながら教室を後にした……ら羽交い締めされて結局死にそうになってるあたしです。


「ギブギブギブギブ!!」

「上手にごめんなさいって言えたら許してやるよ」

「なんっであたしが謝んなきゃいけないのよ!」

「あ? 犯すぞ」

「コロス」

「ったく、死ぬほど可愛くねぇなお前」


 なんてぶつくさ言いながらあたしを解放したこと後悔しなさいよ、こんのクズ御曹司が。


 マスターに向かって容赦なく飛び後ろ回し蹴りをするサーバントはきっとあたしぐらいしかいないだろうと自信を持って言える。


「そんなんが俺に通用すると思ってるー? 本気で通用するって思ってんなら鍛え直せよ~? まぁずザコすぎ~、お話になりませーん」


 両手をポケットに突っ込んだまま、ヘラヘラしながら軽くあたしの回し蹴りを躱した九条。バケモンでしょ、こいつの反射神経。


「いつにも増して鬱陶しいのは一体なんなんでしょうか?」

「あ? いや、別に、普通だろ」


 一瞬、ほんの一瞬だけど動揺した九条をこのあたしが見逃すはずもない。もう何ヶ月こいつと嫌でも一緒にいると思ってんのよ。雨の日も風の日も風邪の日もどんな時だってサーバントとして九条に尽力してきたつもり(無理やり)。


 あの九条が動揺するなんて相当なことがあったはず。良くも悪くもこの男は人の心を溝に捨ててる系だし、圧倒的自信からか焦るとか動揺するってことが基本的にはない。


 心底憎たらしい男だって思うけど、それでも一応あたしの彼氏ではある。“一応”なんて九条にポロっと言った暁には、何をされるか分かったもんじゃないから気をつけないとマジで命取りになる。


「ねえ、九条」

「んだよ」

「あんたさ、おかしくない?」

「あ?」

「あたしに隠し事できると本気で思ってるなら、そのおめでたい脳ミソ取り替えてっ」

「おい、お前マジで啼かすぞ」


 中指と薬指をクイクイ動かしながらニヤッとする九条。相変わらずの変態デリカシー皆無男。こんなやつは存在自体が18禁みたいなもんだから、全身にモザイクかけてもらって。


「彼氏にモザイクかける女がどこにいんだよ」


 え? ここにいますけど? あんたなんてモザイクがかかってるくらいが丁度いいのよ。


「で、なんなの?」

「あ? なにがー?」

「今日なんか変じゃない? あんた。ま、いつも変だけど」

「おい~、唐突な悪口ブッ込んでくんのやめてくんね~? そんな俺も大好きなくせに七瀬ちゃーん」


 いや、別に変態な九条を好きになったつもりは1ミリもないんだけど。むしろ不快な時しかない、なんでこんな男を好きになったんだろうって今でも不思議なレベル。


 ヘラヘラしながらあたしの肩を抱き寄せて思いっきり体重をかけてくる九条に殺意すら芽生える。


「ねえ、重いって」

「なあ、俺のこと好き?」

「重い」

「好き?」


 気だるそうに歩きながらあたしの肩を抱いて顔を覗かせてくる九条。悔しいけど、憎たらしいほどに眉目秀麗。なんかこう、日に日に色気増してってない? この男。しかもちょっと身長伸びた? あんたどこまで成長するつもり? で、無駄にイケボなのやめて。無駄にいい匂いすんのもやめて。無駄にかっこよすぎんのよ、あんたは。性格以外ほんっと完璧すぎる。



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