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平和とは?②

「そんな怖い顔せんといてや。九条家に喧嘩を売るほど僕はアホちゃうよ~。にしても君、ほんま綺麗やなぁ~。九条君に飽いたら僕んところにおいで? 可愛がったるから。ほなまた」


 そう言って乱闘の中へ入っていくド派手男。すると、ピタッと乱闘が止まってスーッと掃けていった。


「なにあの人。ていうか、何者?」

「んなことよりお前、なに食わされたわけ?」

「いちご飴……ぐふぁっ!?」


 いちご飴を一気にあたしの口の中へ入れてきた九条。


「ったく。なんでこうもお前ってやつは……もういい」

「ふぇ?」

「お前もう十分働いたろ。いちいち気にすんのも面倒くせぇから俺んとこ来い」


 ── そして連れて来られたのは……安定のVIPルーム(九条の部屋)。


「文化祭とは……?」

「人混み嫌いなんだよ」


 まあ、あんだけキャーキャー騒がれたら嫌にもなるか。人気者も大変ってやつね。


「で、なんなの? この状況は」

「労ってやってんの」


 ソファーの上で九条の膝に座らされ、なぜか九条にいちごを食べさせられているあたし。いや、マジで意味分からん絵図の完成。


「まったく理解できない」

「してもらおうとも思ってないけどね~」

「もう降ろしてくれない?」

「降ろしてほしいなら俺にもいちご頂戴~」


 自分で食べれよ……とか思いつつ、優しいあたしはいちごを手に取り、九条の口へ運んだら……ハイ?


 ・・・優しく重なる唇。


「相変わらず甘ぇな」

「……は?」

「ごちそうさ~ん」


 ブチンッと、あたしの中で何かが切れた音がした。


「いででっ! ギブギブ!!」


 九条財閥の御曹司を十字固めするのはあたしくらいだろう。


「次、許可なくあんなことしたらマジではっ倒すから」

「許可取ればいいわけ~?」 

「許可が下りると思ってるわけ?」

「うん」

「自惚れんな」

「お前ほんっと頑固だよなー、1発くらいヤらせろよー」


 とか言いながらベッドに寝っ転がった九条。


「あたしに1発くらい殺らせてくれますー?」


 そう言いながらベッド際のカーテンを開ける。日が差し込んで暖かい。


「俺が寝ようとしてんのにカーテン開けるとか性格悪すぎでしょ~」

「はは。ていうか、ゴロゴロするだけならあたし文化祭行って来てもいい?」

「はあ? 文化祭か俺、どっちが大切なわけー?」

「文化祭」

「そんな曇りなき眼で即答すんのやめろ。で、なに? 行きたいわけ?」

「別にあんたと行きたいわけじゃないから、お留守番しててくれてもいいんだけど」

「一言二言余計だっつーの」


 そう言いながら立ち上がってドアのほうへ向かう九条。


「なぁにボケーッと突っ立ってんだよ。さっさと行くぞ~」


 いや、人混み苦手なんでしょ? そんな無理して行かなくたっていいのに。


「人混み苦手なんでしょ? あたし1人で行って来るから待ってっ」

「どーせ変な奴に絡まれまくんでしょ、お前」


 “俺がいれば絡まれたりしねえだろ”……そう言ってる気がした。これも九条なりの優しさってやつかな?


「ありがとう」

「べっつに~。礼はその体でもいいよ~」

「冗談抜きで気持ち悪いわ」

「お前だけな? そんなこと言うの」


 ── 賑わう天馬学園……というより、九条の周りが賑わいすぎて大変な騒ぎになっている。そこに蓮様や凛様も加わったもんだから、とんでもないことになった。


 咲良ちゃんも文化祭までいればよかったのに。ま、でも……彼氏があっちにいるからね。そりゃ帰りたくもなるか。どうやら好きな人とは両思いだったらしく、夏季休暇の時に付き合い始めて~って感じになってたっぽい。夏季休暇ねえ……ダメだ。思い出したくないことを思い出してしまった。九条との……激しいキス。


「あ、七瀬さん!」

「純君」

「大変だねぇ……九条君」

「見てくれだけはいいからね」

「ははっ、相変わらずだね」

「胡桃ちゃんは……って、警備中か」

「そろそろ胡桃の班が休憩に入るから、一緒に回ろうと思って。七瀬さんは……九条君、あの様子だと抜けれそうにないね。七瀬さんさえよければ僕達と一緒に回らない? 胡桃も喜ぶと思うし」


 いやぁ、どう考えても邪魔者じゃない? あたし。そう思いながらチラッと純君の横を見ると、見慣れない人が立ってる。誰だろ?


「あ、ごめん。僕の友達」

「そうなんだ。はじめまして」


 無言でペコッと頭を下げてきたから、あたしもペコッと頭を下げといた。


「ちょっと人見知りで」

「ああ、そっか」


 なんかごめんだけど、浅倉君(未玖の彼氏)より陰キャ極めてるっぽい。前髪長すぎて顔見えないし。


「あ、彼は山田」

「どうも、七瀬です」


 またまた無言で頭を下げられたから、あたしも頭を下げといた。


「最近引きこもってばかりだから、僕が無理やり連れて来ちゃった」

「あっ~! 舞ちゃ~ん!!」


 天使のような胡桃ちゃん。可愛い、眼福。


「あ、山田君じゃん。久しぶり」

「久しぶり」


 ── え、喋れるの!?


「舞ちゃんは……ああ、九条君大変なことになってるね」

「だから一緒に回らない? って今誘ってた」

「純君ナイスアイデア~! 舞ちゃんが良ければ一緒に回らない?」

「あたしは全然いいんだけど……」

「なら決定~! いこいこ~!!」


 ま、九条はハーレム状態だし、抜けれそうにもないからいいよね? 一応連絡入れたし、単独行動するわけでもないし。


 ── 胡桃ちゃん達と行動を共にして1時間弱。


 軽く絡まれたりすることはあっても、しつこく言い寄られたりすることもなかったし、あたしが絡まれないようにさりげなく山田君が間に入ってくれたりして、とっても助かってる。


「あの、山田君。ありがとう」


 相変わらずペコッと頭を下げてくる。


「ねぇ、舞ちゃん」

「ん?」

「お化け屋敷とか平気~?」


 ── げっ……めっちゃ苦手なんすけどぉぉ……。


「う、うん。全っ然平気~」


 いやぁ、なんでこんな強がっちゃうかなぁ……あたしの馬鹿ぁ。


「さっすが舞ちゃ~ん。そういうの平気そうだもんね~? お化け屋敷行こ~!」


 だよねえ……やっぱそう見えちゃうよねえ。あたしみたいな女が『お化け屋敷怖~い♡』なんて口が裂けても言えないわ。


「七瀬さん本当に大丈夫?」

「え? あーうん、あたし全っ然平気だから! むしろ得意っていうか~! ははっ!」

「そっか、ならいいけど! ってこらこら、走ったら危ないよ~? 胡桃~」


 少し先を歩く胡桃ちゃんと純君。その後ろを歩くあたしと山田君。


「七瀬さん」

「うおっ……!? びっっくりしたぁぁ」

「あぁ、ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど」

「いや、こちらこそ失礼な反応してごめん」

「外で待ってれば」

「え?」

「怖いんでしょ、お化け屋敷」

「いっ、いやぁ~? そんなことないよ~?」

「さっきから震えてるよ」


 ── ・・・どうやら無意識に震えていたらしい。


「こ、これは……武者震い」


 山田君はスンッとして何も言わなくなった。



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