表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/150

行き違い③ 九条視点

「九条も食べる?」


 そう言いながらいちごのヘタを摘まんで、チラッと俺を見てきた。


「ん」

「はい」


 俺の口にいちごを入れた七瀬の手を掴んで、ひょいっと俺の膝の上に乗せた後、七瀬の体をベタベタ触った。


「ひゃあっ……!! ちょっ、なに!? 急に!!」

「やっぱお前痩せた?」

「はあ!?」

「なんつーか、いつもと触り心地が違う」

「誤解を招くような発言はヤメて」

「……お前、しばらくいちご禁止な」

「は? え、なんで?」

「霧島が『いちごはダイエット効果が~』とか言ってたから。だから禁止」


 すると、クスクス笑い始めた七瀬。


「九条って肉付きがいいタイプが好きなの?」

「あ? 別に。肉があるだのないだの気にしねえけど。痩せすぎも太りすぎもシンプルに心配になんだろ。それだけ」

「……あんた、そういうところ""だけ""はいいよね」


 なんて余計なことを言いながら俺にいちごを奪われまいと、次から次へといちごをパクパクと口の中へ放り込み始めた七瀬。リスみたいに頬が膨らんでやがる。


「フッ。可愛いな」


 ── ・・・いや、俺今なんつった? マジで何を言ってんだ?


「いや、お前じゃなくて、その""いちご""が……な?」

「あ、ああ……いちごね。確かにいちごって可愛いよね。ご馳走様でした、美味しかったです」

「ん」


 スッと俺の膝の上から降りて、フラフラしながらベッドへ倒れ込んだ七瀬。


「あんたが寝ていいって言ったんだらからね」

「言い訳がほしいってか?」

「そういう言い方するなら寝ない」

「ハイハイ、分かった分かった」

「いいの? 寝ても」

「どーせ使いもんにならん」

「あっそ。ハゲろ」


 そう言うとモゾモゾ布団の中へ潜って、ピタッと動きが止まった。


 は? もう寝た? チラッと布団を捲ってみると、真ん丸になってスースー寝息を立てながら眠っている七瀬らしき小動物を発見した。


「……ったく、可愛すぎんだろ……お前」


 メチャクチャにしてやりたいという衝動を抑えながら、捲った布団をベシッと戻して部屋を出ようとした時、ふと七瀬のスマホが目に入った。


「……いや、さすがに見るのはヤベぇだろ」


 とか言いつつも、俺の手は七瀬のスマホへ伸びていた。画面を点灯させてスワイプすると、何かを調べていたのか検索画面のまま。


 検索ワードには【処女 初体験 どこも痛くない】だった。


「……は?」


 いや、は? どういうこと?


 あ、ああ……ハイハイ、なるほどね? これから起こり得ることの知識を得たくて検索してた……そんなところだろう。俺はそれ以上何も見ず、これすらも見なかったことにして、画面を消灯し元の位置へ戻した。


「俺、処女の相手なんかしたことあったか……? いや、おそらくねぇよなぁ。あったとしても把握してねぇし、何も知らねえ……」


 俺は自分のスマホを取り出して、検索ワード【相手 処女 どうする】と入力しながら、ベッドの縁に腰かけた。


「いや、馬鹿か俺。何調べてんだよ、意味分かんねえー。やめやめ、アホらしい」


 つーか七瀬の相手が俺とも限らねぇだろ、クソが。スマホをしまおうとした時、メッセージが届いた。


 《天馬へ行く用事ができたの。少し会える?》

 《時間次第》

 《11時頃》


 11時ならこいつ多分まだ寝てるだろうし、椿川もそう長居はしないっしょ。ま、いっか。


 《遅れるようなパス》

 《了解》


 で、11時ちょっきりに天馬にやって来た椿川。


「サーバントちゃんは?」

「寝かしてる」

「あら、随分と寵愛なのね」

「で、何の用だよ」

「ドラマの撮影で着る予定の制服が可愛くなくて嫌なの」

「はあ」

「天馬の制服って数年前にリニューアルしてるでしょ? リニューアル前の制服が結構タイプなのよ。それをモチーフにしてもらおうかなって。だから、サンプルを貰いに馳せ参じたったわけ」


 ・・・そんだけの為に俺を呼び出す神経を疑うわ。


「あらそ、ご勝手に」

「少しくらい案内してくれない?」

「その辺のやつに頼めばー?」

「もっとネタあったほうが盛り上がるでしょ? ネット民は」


 ま、七瀬も爆睡こいてるっぽいし、適当にネタがあれば愚民共が勝手に騒ぎ立てていいようになるか。


「ちんたら歩くなよ。俺、人に合わせて歩くのとかマジで無理だからー」

「本当に嫌な男ね」

「そりゃどーもー」



「面白い!」や「いいじゃん!」など思った方は、『ブックマーク』や『評価』などしてくださると、とても嬉しいです。ぜひ応援よろしくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ