ばけものの笑い声が止まらない
そのばけものはずっと笑っている。
笑い声が途切れることはない。
朝も夜も、昼も。
一日中笑い続けている。
人間には、そんなことはできない。
だから、笑い続けていたる誰かは、自然とばけものと呼ばれるようになった。
そのばけものは、とある森から出てこない。
どうしてだか、出てこない。
数年前に、森の中で家族と住んでいたころは、よく外に出ていたし、笑いもしなかったし、普通だったのに。
いつまでたっても、でてこない。
人々は変だなと思いながら、森を遠くから見つめるばかりだった。
ばけものの男は、森の中で笑い続ける。
一日中、凶暴なばけものと戦いながら。
普通の非力な人々が、笑い声でおっかなく思って、森の中に入ってこないようにと。そう思いながら。
数年前にやってきた本物のばけものは、ばけものと呼ばれるようになる前の男の家族を殺してしまった。
男は、そんな悲劇を他の者に味わってほしくなかった。
だから、笑いながら、本物のばけものと戦い続けているのだった。
朝も夜も、昼も。
一日中。
いつか倒せるその時まで。