21 エピローグ
いつもの投稿時間より大遅刻しました!
申し訳ありません!
エピローグです!!
『おい! フローラ! ちょっ、助けてくれ!』
黒猫魔物の姿で、クロードが右往左往している。クロードの目の前には、天使のような風貌をした、それはそれは可愛らしい赤ちゃんが座っている。
ただ、可愛らしいのは見た目だけだった。その気性は荒く、大人たちは振り回されてばかりだ。お世話をする者は相当の覚悟が必要だった。
「だぁ」
『こら! 尻尾を掴むな!』
「むぅ」
『おわあ!』
この赤ちゃんの名は、ララ。レオとフローラの愛娘だ。ララは、レオに似て銀色の美しい髪色に金色の瞳をもつ、見た目だけは天使のような赤ちゃんである。だが、魔力量もかなり多く、浮遊魔法を使いこなす厄介な珍獣である。困ったことに、最近はクロードを空中で回すのがお気に入りだ。
「クロ様!? ひゃああ! クロ様を回しちゃだめよ!」
空中で回されていたクロードをフローラが必死にキャッチして止めた。ララは完全に面白がっている。
フローラが妊娠中に補ってもらったクロードの魔力を、腹の中で吸ったために、ララは魔力量が多くなってしまったらしい。しかしもしかしたら、魔物であるクロードの魔力が、隔世遺伝したのかもしれない。
「にゃあにゃ」
ララは、クロードを回し終えると、ぐったりしているクロードを荒々しい手つきで撫で回す。
『フローラ、俺、ちょっと森に……』
「困ります! この子、クロ様にお会い出来ない日のご機嫌最悪なんです……! 侍女達みんな浮遊魔法で投げちゃうんです! 今日はまだ居てください! お願い……! お父様!」
『わ、分かった』
フローラや侍女達はクタクタだった。魔法が使える赤ん坊の世話が、ここまで大変だとは。部屋の中は常にボロボロのごちゃごちゃで、片付ける暇もない。昼夜問わず泣けばものが飛んでくるし、自分達も飛ばされるのだ。癇癪が起きるたびに恐怖で少し手が震える。自分の子どもだというのに。こんなにもいうことを聞かないなんて、自分は母親失格なのではないか。フローラは睡眠不足なこともあって気弱になっていた。
そんなフローラの不安定さを感じ取ったのか、クロードは『数時間はみててやるから、少し寝とけ』と言った。
「ありがとうございます……」
フローラは有り難く寝室へ足を向けた。
あの騒動の後、レオとフローラが婚約を発表してから、わずか二週間後に二人は結婚式を挙げた。フローラが思い直したりしないうちに、とレオが急いだ結果である。
そして、急ピッチで建てられた離宮に二人で移り住み、その後、待望の愛娘、ララが産まれた。出産は今までに経験したことのない強い痛みで、フローラは腰が割れたかと思ったものだ。治癒魔法が使えないことを、この時ほど呪ったことはない。
しかし本当に大変なのはそこからだった。ララは気性の荒い子どもで、よく泣き喚く。そして全く眠らない。眠らないが眠い時もあって、そんな時は癇癪を起こし、物や人を魔法で浮かべて回すのだ。回るものを見て自分で落ち着き、落ち着くと機嫌が治りそのまま寝たりする。便利なのか大変なのか分からないが、とにかく毎日が目まぐるしく、自分の食事さえまともに取れない日々が続いていた。
レオは公務が忙しく、育児に参加しようと頑張ってくれてはいるものの、クロードほどの活躍はできていない。
ララは実の父のレオよりも、黒猫姿のクロードと遊ぶ方が好きだった。それでフローラはクロードについ頼ってしまっている。
(少し寝たら、クロ様の好きなおやつをお出ししよう……)
そう決意して目を閉じると、フローラはあっという間に眠りに落ちた。
瞼に光を感じ、目を覚ましたフローラは驚いた。クロードにララをお願いしたのは、まだ午前だったはずだが、すでに夕日が差している。
「!」
「あぁ起きたか」
ベッドの脇に、レオがいた。仕事を持ち帰ったのか、何か書類をたくさん広げている。
レオはアルノルド殿下の補佐として、本格的に公務に参加し始めていた。国内外に『次期国王は王太子であるアルノルドである』ということを知らしめ、王太子と第二王子の仲は良好で、しっかりと王太子を支えるべく動いているとアピールしている。第二王子派の貴族達も黙らせ、アルノルドの治世に余計な文句が出ないよう、第二王子としての公務に励んでいるのだ。
その上、魔法使いや魔女達のイメージアップを図る為に魔石を国外へ販売して国の独自利益を上げたり、魔物との共存事業の一環として知能の高い魔物と契約魔法を結び、力仕事などの公共事業を手伝ってもらう事業も立ち上げている。
色々と多忙を極める第二王子だが、ここではただの夫、ただの父親である。
「レオ様……ララは?」
「ララは遊び疲れて昼寝している。この時間まで寝たら、また夜が寝ないかもしれないが……」
苦笑しながらレオが言った。夕方までララを寝かすのは正直微妙だ。だが、普段からあまり眠らない彼女の睡眠を妨げても、その後の癇癪を思うと、起こすのを憚られる気持ちもわかる。フローラもレオと一緒に苦笑するしかなかった。
「……全く力になれずすまない」
「いいえ。私もたくさん眠れてスッキリしました。それに、お父様も侍女達も助けてくれていますから」
今日のクロードのように、レオもララに振り回される役を買って出てくれることもある。特に深夜は「フローラは寝てていい」と奮闘してくれる時もあって、結構頼もしい。王子妃としての公務も最小限にとどめてくれていて、フローラは育児に専念できている。
「フローラも疲れているな」
「レオ様」
ベッドから起き上がったフローラの目の隈を、レオが優しく撫でた。ここ数ヶ月、フローラはまともに眠れていなかった。今日は久々にゆっくりと眠れたので、スッキリしているのだが、隈はなかなか治らないようだ。
「すまない」
「ふふ。あやまってばかり」
レオが眉毛を八の字に下げている姿が可愛くて、フローラはくすくすと笑った。久々によく眠って気分がいい。
「何か私にできることがあればなんでも言ってくれ。言われなくてもできるようにはなりたいのだが」
「そうねぇ。何がいいかな」
「そうだ。もう少し眠るか? 今夜は私がララを」
「ううん。もうたくさん寝ましたから。それより──」
フローラはララが寝ている間、レオとの時間を大切にしたいと思った。
ここ最近はフローラが手が離せないことが多いばかりか、レオも公務で忙しく全く二人でゆっくり出来ていない。
ララのお世話で気を使う余裕がないせいか、フローラは少しずつレオにわがままも言うようになってきた。最近分かってきたのだが、そういうフローラの小さなワガママを言うと、レオはとても喜ぶのだ。
さて今日おねだりをするのは。
「──」
「!」
「だめ、ですか?」
上目遣いでそう言うと、レオはとても嬉しそうに笑う。フローラも久々に柔らかく笑った。
夕日が差し込むベッドの上。
第二王子とその妃は、仲睦まじく、二人微笑み合いながら、お互いの唇をそっと合わせたのだった。
END
これにてレオとフローラの物語はひとまず完結です!
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