表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/21

16 逃亡と答え合わせ(1)

昨日は投稿出来ずすみませんでした!!

今日は2ページ更新します!!!


 王宮の最上階、豪華絢爛な装飾品の集まる一室で、深夜だというのに二人の男が酒を酌み交わしていた。

 二人は愉快そうに揃いの金色の瞳を細めている。


「レオナルド、仕掛けてきましたね」

「自分達がモデルの観劇を作って庶民の意見を味方につけたのは大胆だったな。お陰で魔女殿の好感度が上がっているようだ」

「その仕上げに観衆の前でプロポーズしたそうですよ」

「ははっ。やりおる」

「世論を味方につけ、反対や妨害をすれば、その者が糾弾されるようにしたのは見事でしたね」

「さて。我々はどう出るか……」

「もう決めてあると顔に書いてありますよ?」

「……お前にも敵わんな」


 息子たちの成長を嬉しく思う親の顔をした、この国の長は、その時ばかりは穏やかに酒を飲んでいた。



 公開プロポーズの翌日。

 王国内では第二王子婚約のニュースが駆け巡った。レオや王室が公式に婚約を発表したわけではないが、プロポーズを受ける瞬間を何人もの王宮勤めの使用人や侍女達が目撃していたからだ。


 観劇で二人の恋路を知っている人々は、お祝いムード一色。

 結婚式の日取りの発表を、国民達は今か今かと待ち望んでいる。



 フローラは困っていた。


 確かにレオの手を取った。だが、妃になるところまで覚悟できていたわけではない。

 しかも、あんなにたくさんの人に見られていたなんて!


(まさか、プロポーズを受けたという既成事実を作る為に、わざと観客を用意したとか?)


 噂が広まるのも早すぎる。あの庭園に誘われた時から、用意していたに違いない。


 そう思うと腹が立ってきた。


 レオのプロポーズに感動して、レオが好きだから、その手を取ったのに。

 結局、「王家の血を引く御子」を手元に残したいだけなのかもしれない。

 甘い愛の言葉も、あの場でフローラをその気にさせるための方便だったのかも。そう思うと、怒りと共に悲しみがフローラの心を占めていった。


『あの森で出会ってから、ずっと君を想っていた』


 庭園での、レオの言葉を思い出す。咲き誇る花々と空から降り注ぐ太陽の光。そのどちらよりもレオが輝いて見えた。跪いて愛を囁く姿に、胸がときめいた。同じ気持ちだったのだと、嬉しかったのに。嬉しくて涙が出るだなんて初めてだったのに。


 怒りながら夢中で歩いていると、いつの間にか王宮の中庭に出ていた。

 すると、見知らぬ貴族と思われるご令嬢が数人集まっている。一人が泣いているようで、怪我でもしたのかと声をかけようとした。しかし近寄ると彼女たちの話が聞こえてきて、フローラは思わずその足をとめた。


「魔女だなんて有り得ないですわ!」

「レオナルド殿下に相応しいと思っていらっしゃるのかしら?」

「そうよ」

「マリー様の方がお美しいし家柄もピッタリだわ」

「わたくし、お父様に直訴してみますわ」

「元気を出して! マリー様!」

「……っ。みなさん、ありがとう」


 どうやらレオを想っていた令嬢をみんなで慰めているようだった。美しい髪色、綺麗なドレス、着飾った姿。どれもフローラにはないものだ。彼女たちのいう通り、フローラには何の後ろ盾もない。レオには、相応しく、ない。


 結局のところ、レオがフローラを構うのは、御子が大切だからだろう。王族の血を引く子を、野放しになんて出来ないからだ。優しい彼のことだ。口では「愛している」と言ってくれたけれど、命の恩人であるフローラを邪険に扱うこともできずに、責任を取る為「妃にする」と言っているのだろう。

 

 だってフローラは媚薬を盛ったのだ。フローラの気持ちは明らかなのだから。


 だから気遣って「愛している」だなんて言ったのだ。

 

 生まれてくるお腹の子は、魔力を持つ子に違いない。そうすればこの子はきっと、命を狙われる。魔女の迫害の歴史があるように、大きな力を持って産まれた王族の子だ。必ず脅威とみなされて消されてしまうだろう。


(森に、帰りたい……)


ポコ


「!?」


 最近少しずつ出てきたお腹から、小さな小さな胎動を感じた。

 多分蹴られたのだと察したフローラは、初めての感覚に戸惑いつつも優しくお腹を撫でる。


「ママ、逃げてもいい?」


ポコポコ


 タイミングよくお腹から返事がきた。勝手に「YES」だと解釈して、フローラは王宮からどう逃げ出すかを考え始めた。

 


 客室に戻ったフローラは、早速逃げ出す準備を始めた。森までの道のりは馬車で数日かかった気がするので、ちょっとした旅になるはずだ。正直、この妊娠中の身体で、そんな大移動が可能なのか不安だが、フローラはそれでも逃げることにした。


 フローラの荷物はほとんどない。レオから贈られたプレゼントは数えきれぬほど沢山あるが、どれも持っていく気にはなれなかった。


(何か持ち出して泥棒扱いされても嫌だし……)


 そんなことを言い出すような人じゃないのは分かっている。そして、プレゼント一つ一つを彼が真剣に選んでくれていたのも知っている。でも、ドレスもアクセサリーも、自分には不相応だ。フローラは黒のローブを羽織っているのがきっと一番お似合いなのだ。


(でも……お花、くらいなら……)


 プロポーズの朝にもらった花束は、美しい陶器の花瓶に生けられている。

 その中から一輪、黄色の大きな花を抜いた。迷わず取り出したその花は、どこか金色の瞳を思わせる、太陽のような花だ。


 レオの金色の瞳が大好きだった。

 金色のあたたかな瞳。そして、甘い笑顔。低い声。サラサラの銀髪。大きな手。温かい手。


 思い出すだけで、胸が苦しくなる。


 レオの呪いを解けてよかった。彼の命を守れてよかった。それだけで、充分だ。だからフローラは身を引くのだ。レオがこれ以上危険な目に合わないように。


「ふっ……うっ……」


 涙がとめどなく流れ、レオとの別れを一人惜しんだ。しかし、レオが私室に戻ってくる前に逃げなければと思い、こっそりと抜け出す。

 そこへどこからか黒猫が飛び出してきた。


『どこに行くんだ?』

「ああ! よかった! クロ様、会いたかった!」


 クロ様は気まぐれに宮殿にやってくるので、このまま会えないかと思っていた。

 

「クロ様、私、ここから逃げ出したいの! 手伝ってくださる?」

『何故だ? あの人間は、魔女を妃にすると公言していたぞ』

「無理よ」

『そうか?』

「魔女は嫌われ者だもの」

『魔物の方が嫌われているけど?』

「そうかしら。似たようなものよ」


 ニヤリと笑い合う。

 そして、フローラは逃亡計画について話した。ワガママだと分かっているが、やはり一人は心細い。クロ様が側に居てくれたら安心だ。


「それで、どこの門からこっそり外に出るつもり」

『王宮に隙間なんかないぞ』

「クロ様だっていつも忍び込んでるくせに!」

『俺は転移魔法が使えるからな』

「!」


 クロ様が『転移魔法』と言った瞬間、フローラの目が輝き、クロ様はしまったという顔になった。


「私を森に転移させて!」


 こうして、クロ様に渋々転移してもらい、フローラは無事森に戻ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ