遮蔽物
「うっ……眩しぃ……」
眩しさにより目が覚める。重い瞼を押し上げると、カーテンの隙間から温かい陽が差し込んでいた。如何やら今日はいい天気のようだ。
「よし、布団を干そう」
休日に天気が良いならば、やることは一つ。布団干しである。今日の予定が決まり、俺は布団から飛び起きた。
「うわぁ……雲一つない……」
布団を抱え掃き出し窓から、サンダルを履きベランダへと出る。日の眩しさに目御細めるが、雲一つない深い青空が広がっていた。快晴である。心地良い風が俺の髪を撫でた。
「これでよし……ん?」
全ての寝具を干し、固定の洗濯バサミで留めた。すると、ふと影が落ちた。
「……」
雲がかかったのだろうかと、見上げると巨大な顔が俺を見下ろしていた。俺はそいつを目にし『またか』とそっと溜息を吐いた。
巨大は全体的に白を基調としている。脱色したような白い髪に、眉毛と睫も白い。身に纏っている布も白だ。唯一違う深紅の瞳は、二メートルはあるだろう。その深紅の瞳は、瞬きを忘れたかのように俺を映している。
「あのさ……布団を干しているの、日が当たらないから退いて」
俺は何時もどおり、巨人に意見を述べる。これが何時から俺を見ているのかは分からない。気が付いた頃には、俺を深紅の瞳で眺めていた。巨人には、口があるが音を発したことは一度もない。食い入るように俺を見るのだ。ごく普通の会社員を見て何が楽しいのか分からない。
ばさり。
巨人が瞼を閉じた。すると宙に溶けるように、その姿が消える。完全に消えると、再び布団に日が当たる。そのことに満足気に頷くと、俺は部屋へと戻った。