テンプレと天ぷらはまったく違う
前回は処女作の分析をしましたね。
処女作はタイトルのせいでPVがとれず、そして冒頭のせいですぐにブラバされ、ブクマがとれませんでした。
では、2作目ではそれをどうしたか?
今回はそれを見ていきましょう。
まずは、2作目ではタイトルの改善から考えました。
そのタイトルがこちらです。
――ジャン!
『このパーティにはもう俺以外いらないから、お前たち抜けてくれないか?~無能な奴らに食わせるメシはねぇ!役立たずは全員追放して、俺だけの最強パーティを作ります!?~』
はい、ふざけるな!と思われたかもしれませんが、ブラバしないでくださいw
こちらは友人と話しているときに、ノリで思いつき、ノリで書き始めた作品でした。
1作目で心が折れていた私は、もう思いっきりやろう!ということで筆をとりました。
幸い、前作とくらべ、タイトルがよかったものですから、最初こそPVはそこそこ伸びました。
前作とくらべれば目に見えてPVはアップしました。
ですが、最初の方はブクマ5、そこから連載しても15ほどしかとれませんでした。
完結ブーストで20までは増えたのですが、これではとてもランキングには手が届きませんね。
では、なにがいけなかったのでしょうか。
本文を見ながら説明していきたいと思います。
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俺はアウルス・アルボルム。このパーティのリーダーをしている。
パーティリーダーってのは楽じゃない。それぞれの働きに見合った給料を割り振るのも俺の役目だし、なによりみんなを一つにまとめるのが大変だ。
「よし、みんな!今月分の給料だ」
俺は給料袋をみんなに渡した。
「ありがとう!アウルス」
女騎士のカレンが笑顔で受け取る。赤い髪に赤い鎧、赤い大剣を装備した、名前通りの可憐な女性だ。鎧から僅かに露出した素肌が、やけに艶めかしい。
「どうも、リーダー」
金髪僧侶のロランが鼻にかかった声で言った。顔はイケメンなんだが、キザな態度が少し鼻につく、いけ好かない男だ。まあ、悪い奴じゃないんだけどな。だからこそこうして長い間、いっしょにやってこれたわけだし……。
「ありがとうございますっ!アウルスさん!」
魔導士のミリカもそれに続く。魔導士といっても、いかにもな服装はしてない。普通の緑のワンピースに、花の髪飾りをワンポイント。なんとも可愛らしい、女の子らしい格好だ。
「ふんっ……」
最後に受け取ったのは、盗賊のグレッドだ。その言い方にはどこかけんがあって、俺は悪感情を抱いた。こいつはいつもこんな感じで、リーダーを敬うってことを知らない。
「あれぇ?ちょっと、私の分……少なくない?」
さっそく袋を開けていたカレンが、抗議の声をあげた。
「僕もだ!」
それにつられて、ロランも中身を確認した。
「私もです……。ショックです!今月のお給料で買いたいアクセサリーがあったのに!」
ミリカも同意見のようだ。
だが、もっと少ない給料の奴がいることを、俺は知っている。
「おい……。俺のなんか、すずめの涙ほどしかねえぞ!」
グレッドだ。僅かな小銭を左手に置き、右手で空っぽの袋を逆さにして、アピールしてくる。眉が吊り上がり、怒りの目を向けている。
「おいおい、お前たち。落ち着けって。なにも俺は意地悪で給料を少なくしたわけじゃない。みんな、今月自分たちがした働きを、よーく思い出すんだ」
俺は皆をなだめる。いつもこうだ。都合が悪いことは、みんな俺のせい。リーダーってのは責任重大な役職だが、それは全部の責任を一人で背負うっていう意味じゃない。パーティメンバーが無能なのは、俺の責任じゃないはずだ。
「私は今月、モンスターを18匹倒したわ!」
「僕は39000ポイントも回復しましたよ!」
「私なんて、MPを8000も消費してがんばったのに!」
「俺はモンスターから20個もアイテムを奪ったぜ!?」
みんな口々に抗議する。だが無駄だ。「そんなこと」は俺もよおくわかってる。なんてったって、お前たちの給料を計算したのは俺だぜ?ちゃんとギルドの出したガイドラインにのっとって、算出した数字だぜ??文句をいうならギルドに言ってくれ。
「まず……カレン?」
俺はできるだけ優しい口調で続けた。
「モンスター18匹とおっしゃいますけどねぇ?あなたが倒したのは……全部スライムですからぁ!!!」
言い切るときには大声になっていた。やっぱ無理だ……優しくしかるのは。
俺の怒声にカレンは「ピギィ!」と悲鳴をあげ、身体を縮こめた。
ごめんな、そんな可愛いマネしても、俺の怒りは収まらない。だってこんな会話するのもう何度目だ?いい加減嫌になる。
「だって、スライム以外のモンスターは怖くてぇ……」
「うるさい!そんなんで仕事になるかぁ!!」
カレンの臆病さは困ったものだ。そのゴツイ鎧はなんのためにある?スライムから身を守るため?馬鹿いうんじゃない。あんなぷにぷにした肉体、ぶつかってきても痛くないだろ?
俺の説教は続く。
「ロラン!!!」
また大声が出てしまった。ロランの身体がこわばる。
それから俺は、残酷な事実を告げる。
「39000ポイントっていうけどな……お前!女しか回復しねえじゃねえか!!!俺とグレッドがどんだけ大量にポーション消費してるかわかってる!?お前のせいで頻尿になったわ!」
正直、ポーション代を考えたら、ロランの分は赤字だ。
「だって、むさくるしい男にヒールするのって……なんだか、キモくないですか?」
「いや、キモくねえよ!!てめえのスカした前髪のほうがキメェわ!!」
ロランにはホント呆れる。女好きだかなんだか知らねえが、男をなんだと思ってるんだ?そういうのはよそでやってくれ。まあ最初にロランの悪癖を確認しなかった俺も悪いが……。
(冒険者の細かい情報は、採用時の書類に書いてある)
「それから……ミリカ!MPの消費量を誇るのはいいけどなぁ……あなたのそれ(魔法)、敵に当たったためしがあるんですかねぇ!!!???」
ミリカのアキュラシー(命中精度)はゴミだ。レベルがあがるたびに、アキュラシーにステ振りしてくれと頼んでいるが、こいつはきかない。
「えー、だってだってぇ……威力が高い方が、絶対強いじゃないですかぁ!」
甘い声で馬鹿なことをいうんじゃない。
確かに、ミリカの魔法の威力はすさまじいが、当たらないんじゃ意味がない。その威力のおかげで、狙いが外れたばあいであっても、爆風である程度のダメージは与えてくれるのだが……なんというか、すこぶる燃費が悪い。MP回復ポーションがいくらするのか知っているのか?この女は。
「極めつけは、グレッドだ」
「なんだょ……」
いつもはもっと威勢がいいこいつも、今日ばかりは少しビビってるようすだ。今日の俺はいつもより厳しめだからな。ドラゴンの頭も三度までってやつだ。
(ドラゴンは賢くて慈悲深いことで知られる)
「グレッド……モンスターから20個『も』奪ったといったな……お前は」
「そ、そうだ!俺の盗賊としての腕は確かなはずだぜ!?」
グレッドが後ずさる。俺は追い詰めるように顔を近づけた。
「お前が奪ったアイテム……全部ゴミみてえな安物ばっかりだからね!??」
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はい、これが1話冒頭部分です。
ちゃんと追放シーンから始まっていて、いい感じに思われたでしょうか?
はい、それは間違いです。
これを書いた時点で筆者は、まだあまり「テンプレ」というものを理解できていませんでした。
分析が足りなかったんですね。
それなのに聞きかじったなんとなくの、ふわっとした知識で「テンプレ」を書こうとしてしまったものだからさあ大変。
出来上がったのは、押さえるべきツボを押さえていない、「テンプレ」ならぬ「天ぷら」作品でした。
「追放」されるのはあくまで「主人公」であって、「主人公」がパーティーメンバーを「追放」してはいけないんですね。
なぜか。
それは「それが読者ニーズにはない」からなんですね。
もちろん、書き方次第ではそういった物語でも受け入れられるかもしれません。
ですがそれはあくまで「型」を知ったうえで、ポイントを押さえて「ズラす」必要があります。
まったく「型」を知らずにそれをやろうとしても「デタラメ」にしかなりません。
これもたぶん初心者にありがちな失敗でして……。
「テンプレ」とは違う、なにか「オリジナリティ」のあるものを書くんだ!
と意気込むあまり、「テンプレ」をすこし変えた、皮肉ったものを書こうとしてしまいます。
もちろんオリジナリティを出そうとすることは大いに結構なのですが、それはあくまで「もとの型」「テンプレ」を熟知したうえでやらないと、大変なことになります。
一見それっぽい展開が書けているのですが、実際読んでみるとそれは「ガワ」を真似しただけで、ぜんぜん「美味しいテンプレ」になっていません。
「テンプレ」とは「お約束の面白さ」です。
その「読者との約束」を知らずにいたのでは、出されたほうは「なんじゃこれ?」となってしまいます。
さらに、伸びなかった原因としては「コメディ」要素が強めの作品というのもあります。
コメディはウケればいいですが、ウケなかったら「ただ寒いだけ」「滑ってる」という評価になってしまうので非常にリスキーです。
さらに「テンプレもどき」をコンボでかましてしまったわけですから、読者としては「少々お寒うございます……」となってしまうわけです。
ですがもちろん、それだけではありません。
ブクマ20とはいえ、前作の0から比べれば20も伸びたわけです。
この点は素直に喜び、認めるべき部分です。
自分の成長は最大限褒めてあげましょう。モチベに繋がります。
ではこの「20」はなんの差だったのでしょうか?
私が考えるに、前作とくらべ「読み手の視点」を持つことを覚えたからだと思います。
前作は本当に独りよがりな作品でしたが、これはしっかりと読む人のことを考えて「柔らかい文体」というのが意識できています。
それから「なるべく読者にとって喜ばしい展開」にしようとい意識も生まれ始めています。
これができたからこその「20」という評価なのだと思います。
この作品で得た文体は、今の文体の基礎にもなっていると思います。
どんどん新しい技術を吸収して、次につなげましょう。
この作品も残念ながら10万字に到達することはできず6万字ほどで完結となりました。
なぜそうなってしまったのでしょうか?
次回はその点を中心にお話していきたいと思います。
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