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処女作での失敗


では実例を交えて、解説していきましょう。

以下の文は拙作「戦うダンジョン屋さん」の冒頭部分です。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 ダンジョン屋の朝は早い。開店前に、店にあるダンジョンの扉を一つ一つ丁寧に拭いておくのは、新人であるダン・ウィックの仕事だ。


 勿論、一日で店にある全ての扉を綺麗にできるわけではないので、ある程度の妥協は必要だ。客が訪れるまでの短い時間で、今日使うことになりそうな扉にいくつか当たりをつけて拭くことになる。


 ダンの勤める〈ボンド堂〉は、この街に三店舗存在するダンジョン屋の中で最も繁盛している店で、三百もの扉を備えていた。


 手のあかぎれが痛むのを我慢して、使い古された雑巾を鉄製バケツの冷水に浸す。扉全体を撫でるようにして軽く一周拭いて、≪回転扉≫のダイヤルを回し、次の扉も同じように流れ作業で片付けていく。


 ダンジョン遺物の一つであるこの≪回転扉≫は、複数の扉を一箇所に纏めて置いておく事が出来る優れた代物で、これのおかげでダンジョン屋は、狭い敷地内に膨大な数の扉在庫を抱えていても、自分たちの店の壁を破壊してまでスペースを空けないでよくなった。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


さて、どこが問題かわかったでしょうか?

自分ではこの小説は「いい失敗作」だと思っています。

「いい失敗」というのはどういうことか……?

この小説はまさに、「初心者にありがちな失敗」をことごとく踏み抜いているからです。

ダメな部分というのは、人から聞くよりも、実際に失敗してみて初めて理解できるものです。

なので、最初の内は失敗をしておくのも大事な勉強なんですね。


まずダメな点としては、明らかに文体が硬すぎますし、漢字が多い。

固有名詞を使い過ぎだし、説明ばっかりでつまらない文章になっています。

これでは読者はすぐにブラバしています。

できるだけセリフで始めましょう。


「お前は追放だ! ○○○○め! この役立たず!」


なろうの作品を見ていて、こういう出だしで始まる作品を読んだことがある方も多いと思います。

これは「いい出だし」の見本のようなセリフですね。

この冒頭の台詞だけで、どんな物語かがわかりますし、登場キャラクターの立ち位置の説明も不要になります。

このセリフを言っている人物が敵で、言われている人物が主人公なのだな、というのが読者に瞬時に伝わります。


よくある勘違いに、「読者はまったく新しい、奇抜なストーリーを求めている」というものがあります。

これは半分正解で、半分間違いです。

たしかに読者は刺激を求めていますが、それ以上に安心を求めています。

まったく新しい物語が受け入れられるとすればそれは、「作者のファン」であるか「すでに面白いとわかっている物語の続き」を読む場合に限られます。

無名の人物が売る、無名の薬品(しかもパッケージは黒塗りで内容がよくわからない)を購入して、躊躇なく飲む人物はいません。


自分としては当時、この小説を「これはいける!」と思って書いたのですが、今見ると全然でしたね。

自分ではオリジナリティあふれる世界観を書いていたつもりが、実際のところ、よくよく読み返してみるとそれほどオリジナリティがあるようには思えません。

オリジナリティとはでたらめな妄想ではなく、しっかりと型を押さえたうえで、そこからにじみ出てくるものだと今では思っています。


この処女作が自分としては初めての小説だったわけですが、やはり最初というのは全然書けないもので、10万字書くつもりがその半分ほどでリタイアしました。

ですが無理やり完結させました。このことは良かったと思います。

最初の作品は失敗してもいいので、というかまず失敗すると思うので、それでも完結させ、切り替えて次に行きましょう。

するとだんだん書けるようになってきます。


この作品では「初心者にありがちな失敗」というのをことごとく経験できたように思います。

だからこそ、今の自分があるのは、この処女作のおかげです。

失敗をすることは悪いことではありません。必ず次に活きてきます。

失敗を恐れず、どんどん作品を書いていきましょう!


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