恋愛小説
あなたは"恋""についてわかりますか?
それでは"愛"についてはわかりますか?
日が傾き、昼間の生徒たちの喧噪が去った校舎。打って変わって静けさに包まれた校舎に響いてくる音はグラウンドで練習をしている野球部の声。体育館から聞こえてくるかすかなボールをつく音。
そんな縁もゆかりもない青春の音を聞きながら今井早苗委員会の仕事で週に一度の図書館の蔵書を整理をしていると
「なぁなぁ"愛"とは何だと思う?」
唐突にそんなことを問われた。作業の手をとめ顔上げると先輩の宮下夏樹が数冊の本を抱えながら立っていた。先輩は何かと私のことを気にかけて
「なんですか、唐突に。また先輩の惚気話ですか?もう十二分に聞きましたよ...」
私はまた惚気話、自慢話などを長時間にわたり聞かされるのかと思い気が滅入りそうになった。この前は、30分くらいひたすら彼氏との馴れ初め話を続けられた。その時は偶然通りかかった先生に聞きたいことがあると言いうまく切り抜けたが、もし先生が通りかからなかったらまだまだ続いていたと思う。
「惚気話じゃないよ、私はただ疑問に思ったことを聞いただけなのに」
そんな、冗談なのか本気なのかはっきりしない答えを
「なんでわからないんですか?先輩彼氏いるじゃないですか。学校内では有名ですよ」
「甘いね~、早苗はだから彼氏ができないんだよ」
「だからってなんですか!余計なお世話です!おしゃべりはいいですから手を動かしてください。また帰るのが遅くなりますよ」
「おぉ、そうだったそうだったまた遅くなったら愛しき彼に心配されてしまう!」
そういいながら、先輩は意地悪く笑った。
「当て付けですか...はぁ...」
『これだからこの先輩は』などと思いながら少しでも早く仕事を終わらせえるために、十冊ぐらいまとめて持ち上げ棚の方へ歩いた。