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TRUE SEEDS  作者:
前編
1/14

act.0

 彼を救う方法があると知ったので、一片の迷いも無く駆けていた。


 直属の医師からは、もう手の施しようが無いと言われていた。

 彼の為に呼んだ隣国の医師も同じ事を言った。

 自分の責任だ、と嘆いた彼女は、部屋に一人籠っている。

 しかし、自分には彼の命を長引かせる事が出来ると確信した。


 きっと彼はまだそこにいるだろう。

 階段を駆け降りて、重い鉄格子の扉を開けた先、彼は眠っていた。


 その手を握れば、彼は応えてくれた。

 彼の瞳に、私は映っただろうか。


 明日にはきっと、彼女も笑顔を見せてくれるだろう。

 私も含めて、多くの人間が彼の誕生と成長を望んだのだ。

 彼の歩む道に幸福が訪れることを、私はずっと祈っている。


 だから……、お前も同じだと言ってほしい。




「……お前は何故、死を選んだ。お前が居なくなろうと、お前を望む者が居なくなるとは限らないというのに」

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