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第1章1やって来たのは…

夏休みある日の朝、俺、田代翔也たしろしょうやは近所の神社に向かっていた。

 

その神社は古くからある神社で、今では参拝客も訪れなくなり、ひっそりと佇んでいる。

 

俺がその誰もいない神社に向かっている理由。それは、来る日の朝に友人から電話が来たからだ。何でも今向かっている神社には異世界への門があるという。この話は数日前から学校で噂になっており、それに便乗した俺の友人が調査をしようと言い出したのだ。


 全く、俺達は高校生だぞ?何が楽しくて誰もいない神社に行かなきゃならないんだ。

 

しかし、そんなことを思っていても仕方がないので歩みを進めることにする。

 

噂程ではないが、今、向かっている神社には昔から不思議なことが起こりやすいと言われている。なんでも、霊的なものを寄せつけやすいのだとか。

 

俺は霊感が無いから分からないのだが、クラスの中にはこの神社で、お化けを見たと証言している人もいる。

 

この神社に来るのはそういった不思議な物を見たくて来る物好きくらいだ。

 

そんなことを思っていると、神社が見えてきた。

 

神社の周りには林があり、一度入ると迷って出て来られなさそうなくらい広い。

 

俺は神社の階段を登り、神社の本堂があるところに着いた。辺りを見回してみるが、まだ誰も来ていないようだ。


「待ち合わせの時間まで後10分か」

 

少し早く着き過ぎたようだ。


 改めて神社を見てみると、入り口の鳥居は赤い塗装の部分が所々()げていて、木の部分が()き出しになっている。

 

神社の本堂は誰も手入れをしていないのか、(ほこり)まみれで、天井は今にも崩れそうなくらい(もろ)くなっている。

 

神社は静まり返り、風で木々が揺れる音だけが聞こえてくる。


鳥居の下で座って少し待っていると、誰かが階段を上ってきた。こんな神社に来る奴なんて俺の知っている限りでは数名しかいない。


「お前だったのか、里穂」

 

やって来たのは白石里穂しらいしりほだ。彼女はルックスが良く、黒い髪が風で(なび)いていて、まるでモデルを見ているようだ。クラスの男子からも注目を浴びている。俺がなぜそんな人気者と一緒にいるのかというと、こいつもその友人に呼ばれた内の一人なのだ。実を言うと昨日、友人から調査をするメンバーを電話で伝えられていたのだ。こいつと俺を含めてあと二人の計四人で調査をするつもりらしい。

 

俺はふと気になっていたことを里穂に聞いてみた。


「それにしても珍しいな。お前がこんな事に参加するなんて」


 こいつは根っからの真面目で、成績も優秀だ。だからこういった非科学的な事には興味がないと思っていた。だから、友人が電話で里穂の名前を出したときは驚いた。

 

それを聞いた里穂が、


「それを言うならあなただって同じじゃない。こういう事に貴方は参加しないと思っていたわ」


「まあ、あいつとは腐れ縁みたいなものだからな」

 

俺はうんざりした調子で答える。

 

正直に言うと、俺だってこんな調査には参加したくなかった。しかし、今日の朝、俺の家に友人から電話があり、神社に来ないと家まで迎えに行くと言うのだ。あいつに迎えに来られるくらいなら、先に来ていた方がまだマシだ。それくらい嫌だった。


 そんなことを思いつつ友人を待っていたが、


「それにしても遅いな、あいつ」

 

友人は一向に来ない。これは少し遅過ぎるのではなかろうか。

 

隣にいた里穂も同じことを思ったのか、


「確かにちょっと遅過ぎるわね、もう10分以上は経っているわ」

 

会話が途切れ、辺りが静かになる。

 

俺は話題を変えることにした。こんな空気だと、俺の胃が持たない。

 

そこで、俺は今回の調査のことを里穂に聞くことにした。


「なあ…異世界への門って本当にあると思うか?」

 

里穂は当然のように、


「そんなのあるわけないでしょ」


 まあ、見たことも無いものを在るか無いかと聞かれたら普通は無いと答えるだろう。ましてや異世界への門なんて、在ると信じている方が珍しいと思う。

 

しかし、俺はこうも思う。門が無いという証拠も無い。つまり、今は在る可能性と無い可能性の両方が存在しているということになる。


「いや、まだ門が無いと決まったわけじゃないぞ?もしかしたら在るかもしれないし」

 

そう、証拠も無いのに門が無いと決めつけるのは良くない。


「本気で言っているの?まさか貴方まで、信じているとは思わなかったわ」

 

そんな顔をされても困るんだが。


「いや、異世界ってどんなところかなって想像しただけだぞ?」

 

まあ、少しだけ楽しみだけど。


里穂が疑いの視線を俺に送る。


「どうかしら、貴方だって彼と同じでただ勉強が嫌で遊んでいたいだけじゃないの?」

 

俺と里穂がもめそうになったとき、誰かが階段を上がってきた。



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