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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第七章

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02.もう一人の女

「な、何が起きた――っ!」

 ビアンカの変貌に驚愕したが、驚いている暇はなさそうだ。
 悪意を感じる、底知れぬ悪意の方に振り向くと、湖の底から巨大な何かの黒い影が上がってくるのが見えた。

「小僧!」

 声に振り向く、ヘリン、エステル、ジュリエットが湖をぐるっと大回りしてこっちに走ってくるのが見えた。

「目をつむっててくれビアンカ」
「えっ……ひゃん!」

 腕にぐぐっと力を込めて、幼くなったビアンカをヘリンに向かって投げた。
 押し出す様に投げられたビアンカの体は空中を水平に飛んでいく。

許可する(、、、、)! みんなを守って逃げろ!」
「死ぬのは許可しないのじゃ!」

 ヘリンは俺の許可(、、)で本来の力を取り戻す。
 ビアンカを難なくキャッチした彼女は、エステルとジュリエットを連れて逃げていった。

 湖の周りはまた混乱を極めている、名状しがたい意図をもった兵士達の動きが更に混沌を極める。
 そんな中、俺はもう一度湖に向かって駆け出した。
 湖面を疾走して中央に戻っていって、小船の上に残った太后をビアンカの時と同じようにひったくった。

 ビアンカの時は駆け抜ける余裕があったがもうムリだった。
 何か(、、)はもう水面を出ている、俺はとっさに湖面を蹴って空高く飛び上がった。

「ひいいい!」

 保護した太后は俺にしがみついて悲鳴を上げた。
 太后も投げよう――なんて暇はなかった。

 下から悪意の伴った攻撃が襲ってきた。
 木刀を抜いて反撃で受け止める。

 ゴッ!

 ものすごい鈍い音がして、手のひらが裂き、木刀を弾かれそうになった。
 更に攻撃が飛んでくる、それを次々とカウンターで打ち合う。

 何か(、、)のパワーは桁違いだ、全力で打ち返したが、逆にこっちが吹っ飛ばされる結果になった。

 上から振り下ろされる一撃と打ち合うと斜め下に吹っ飛ばされる。
 とっさに太后をかばいつつ、畔に砲弾のように体が突っ込む。

 耳をつんざく爆発音、体がばらばらになりそうだ。
 砂煙が舞い上がって、口の中に土が入る。

 止まったらやられる、口の中の土をガマンしてたたきつけられて出来た穴から飛び出した。

 そこでようやく相手の姿が見えた。

 巨大な蛇である。
 蛇の特徴はその細長い体で獲物を巻き付いて絞め殺すのだが、この蛇のサイズだと三階建ての石造りでも締め付けられて粉々になりそうだ。

 更にそれだけではない、蛇の体があからさまに異常だ。
 鱗が岩だった。

 それがさっきの鈍い手応えか。
 周りが逃げ惑う中、蛇は迷うことなく、一直線にこっちを襲ってきた。

 毒々しいよだれを垂らしながら巨大な口を開ける。
 それをじっと見極め、木刀のさきに動くカウンターで反撃。
 口の中と、迫ってくる眼球にそれぞれ突きを放つ。

 ゴッ! ゴッ! ゴッ!

 通常どんな堅い生き物でも口の中や眼球は柔らかく急所なんだが、この蛇はそこすら硬かった。

 手にますます血が噴き出して、ぬめって木刀が滑りそうになる。

 更に攻撃が飛んでくる、今度は真っ向から打ち合わず横っ飛びでかわす。
 何かあるはずだ、なにかが。
 今更退避させられない太后を守りつつ、蛇と渡り合う。

 巨体から繰り出されるパワーと、硬い体を使った攻撃にじりじり押される。
 それを躱し、受け流しつつしばらく渡り合っていると、ある事に気づく。

 生き物だからこその、純粋な動き。
 一見して全身で攻撃してくる蛇だが、一箇所だけかばっているポイントがある。
 そうする意図も――読めた。

 それを理解した途端、俺は蛇の周りをぐるりと回る様に走り出した。
 誘導(、、)した、向こうの行動を誘導するように疾走した。。

 蛇は更に攻撃してきた、誘導通り、かばっている箇所ががら空きになった攻撃。

 先に動くカウンター(、、、、、、、、、)

 木刀が蛇の腹にめり込む。
 攻撃が通った。

「よしっ――」

 歓声を上げる、蛇は弾き飛ばされて、地面を転がって悶絶する。
 まだまだ、まだこいつには戦える力を残している。
 これに乗じて追撃するしかない。

 俺は飛び込んでいき木刀を真っ向から振り下ろした。

 木刀が溶けてしまった!

 とっさの事に驚きつつも地面を蹴って大きく後ろにとんだ。

 着地して視線をむけると――息を飲んだ。
 それまで岩だった鱗が次々と外れていく。
 まるで脱皮するかの如く岩の鱗が剥がれていったあと、蛇は、炎を纏っていた。

 炎の鱗。
 そうとしか例えようがないものに、木刀は溶かされてしまったのだ。

 蛇が襲ってきた。
 得物をなくした俺は背を向けて、太后をかばうようにしてその一撃をうけた。

 ズシン! と体の芯に響く衝撃と、肉を焼く痛みが俺を襲った。

 まずい、これはまずすぎる。
 こうなるとは思わなかった、こうなってしまった以上俺なんかじゃかなわない。

 ……俺なんかじゃ?

 逃げ出そうとした瞬間、足が地面に根をはったかのように動かなくなった。
 一瞬だけ浮かび上がってきた、旧友の様なネガティブな感情。

 それに俺は反発した。
 もうそう思わないことにした。そう誓った。

「だ、ダメなのかえ?」

 太后の怯える声が聞こえる。
 俺はきっぱりと言い返した。

「いや、俺なら――出来る!」

 決意を固めた瞬間右腕がはじけた。
 腕だったそこがはじけて光になって、また腕の形に集まった。

 光の腕、そして、光の剣。
 かつてヘリンに使わせてもらった光の剣が俺の手に現われた。

 光の剣を見つめる、ヒュンと、上下に一振りする。
 確信する、この光の剣なら。

 蛇が襲ってきた。
 炎を纏った巨大な蛇――さながら精霊の化身の様な蛇。

 光の剣を横一文字に薙いだ。
 無造作な斬撃、技も何もない、シンプルに横に振り抜いただけ。

 蛇はそのまま俺を通り過ぎて――崩れ落ちた。
 二枚に下ろされた蛇、何回かけいれんして迂路かなくなった後、纏っている炎も消えてしまった。

 蛇が消えたのと同時に、光の腕と剣がまだはじけて、元の右腕に戻った。
 助かった。
 いや違う、俺の力だ、助かったとかじゃない。

 俺だからやれた。

 女達からもらった自信をもっと自分の物にするために、俺は心の中でそう繰り返した。

 しばらくして落ち着き、太后がまだ、俺にしがみついてる事を思い出した。

「ごめん……じゃなくて失礼しました、もう大丈夫――」

 視線を落とすと言葉を失った。
 そこに美女がいた。
 20の手前くらいだろうか、大人と少女の狭間にいる、そんな感じの美女。

 太后――ビアンカ同様、若返った女。

 そんな彼女は俺にしがみついて、楚々とした濡れためで見あげてくると。

「わらわを……つれて逃げて」

 と、言ってきた。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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