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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第六章

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07.圧力

「く、くそ……覚えてろ!!!」

 ボウヤはいかにもな捨て台詞を残して、逃げる様に走り去った。
 シンシは自分の息子の行動に、わずかに眉をひそめたが、まともに反応したのは彼だけ。
 ビアンカはもとより、ジークフリートはボウヤの行動を見るところか、眉一つ動かさなかった。

 そのかわり、ジークフリートは俺を見つめた。
 まっすぐ見つめて来た。
 この目は知ってる、俺が……俺と同じような人間がよくしていた目。

 かつての俺が、ギルドに頼むから仕事回してくれてせがんだときの目だ。

「どうか、ビアンカ様を」
「貸すって、どうするんだ?」
「ビアンカ様にご足労いただき、太后様の元で曲を演奏して頂くのです」
「それだけなのか」
「なにとぞ!」

 強く俺を見つめ、更に迫ってくる。
 言ってないけど、「それだけじゃなくてそれが大事な事だ」って言われたような幻聴がした。

 太后に呼ばれて楽器を演奏しに行くことは俺にも分かる、かなりの名誉だ。
 ビアンカがそれで呼ばれていくのは俺も自分の事のように嬉しくて、本当なら快く送り出したいところだけど。

「ダメだ」
「な、何故でしょう」

 断られるとは思っていなかったのか、ジークフリートがうろたえる。

「ビアンカ達は狙われてる。解決するまで俺のそばから離れるのは心配だ」
「狙われている?」

 びくり、ジークフリートの眉間に深い縦皺ができた。名刺とかを挟めそうな深いしわだ。

「小僧に変わってわしが説明してやろう」
「ありがとう、ヘリンなら安心だ」

 俺なんかよりもずっと頭がよくて口も上手いからな。
 と俺が思ったとおり、ヘリンはジークフリートにいままでの事を事細かに説明した。
 俺と関係を持った女達が狙われていること、それをシンシに聞きに来たこと。
 時系列順に、わかりやすく説明した。

「と、言うわけじゃ。なあ小僧」

 結んでから、俺に水を向けた。

「ああ。そういうわけだから、解決するまで悪いけど何処にも出すわけにはいかない」

 ジークフリートはすがるような目で一度ビアンカを見た。
 ビアンカは穏やかな微笑みで。

「ルーカス様の気持ちに背くなんてあり得ませんわ」

 当たり前の答えだと納得したのか、ジークフリートは一度ため息ついて、今度はシンシをにらみつけた。

「本当なのかネルソン卿」
「愚息の愚行は止めたのですが、それ以上のことは……これより全力をあげて究明に当たるつもりです」
「そうしてくれ。卿も知っての通り、国王陛下は稀にみる孝行息子であられる。両親を大切にするのは人である以上もっとも基本の事だと推奨している」
「はっ」
「太后様も国王陛下の気持ちを慮り、その先である学問や芸術を推奨しておられる。つまり」

 さらにギロリ、ジークフリートのプレッシャーがました。
 シンシはだらだらと汗を垂らす、全くの部外者で関係のないエステルでさえ、怖がって俺の服をぎゅって掴んできたほどのプレッシャーだ。

「分かって、おられるな?」
「はっ、速やかに究明いたします」

 シンシはもう一度頭を下げて、急いた足取りで屋敷の中に戻っていった。
 早速動き出すシンシをジークフリートは止めずに、こっちを向いてきた。

「すぐに元凶を見つけ出します」
「ああ」

 ジークフリートは、ますますせがんでくるような、そんな目を向けてきたのだった。

     ☆

 家に戻る馬車の中、来た時と同じようにビアンカ、ヘリン、エステルの三人と一緒にいた。
 ジークフリートが護衛をつけると言ったが、ビアンカがそれを断った。

「この世でルーカス様のおそば以上に安全な場所はありませんわ」

 といって断った。
 多分、解決しないと離れないという宣言なんだろう。

「でも、すごいですね」

 エステルが不意に切り出してきた。

「ビアンカさん、クムスの太后様とお知り合いだったんですね」
「数年前、国王陛下がこちらに外遊においでになられたことは?」
「あっ、覚えてます。ギルドは国王陛下の警備でてんやわんやでした」

 その事なら俺も覚えてる。

 通常、そういう警備とか護衛ってのは、高ランク冒険者が一人、リーダークラスの人間が一人いれば事足りて、後は当時の俺みたいなごろつきの人数合わせ、まあバイトみたいな感じのヤツを揃えればよかった。
 それが国王が来たときは全然違って、沿道の前乗りにもリーダー10人にバイト1人の割合で派遣していた。

 ギルドがとエステルは言ったが、冒険者達の間もてんやわんやだった。

「その時にお忍びにおいで下さったの」
「おいでって……あっ……」

 エステルはハッとして、複雑そうな顔で俺を見た。

「どうした」
「えっと、その……」
「国王がこやつの客だったと気づいたのじゃ」
「そうなんだ。そうなのかビアンカ」
「ええ」
「すごいな……さすがビアンカだ」
「え?」

 何故か驚くエステル。

「え? って、どうしたんだ?」
「えっと……いえ、いいん……ですか?」
「???」

 何が「いいん」だろうか。

「こやつが驚くのは分かる。貴様がおどろかんのはすこし驚きじゃ」
「ルーカス様の唇は温かったから」
「ふむ、信ずるに値するものがあるわけじゃな」
「だからこそ人生を共にしたいと思いました」
「道理じゃ」
「わたしだけが分かってなかったんですか?」
「気にするな、わしも分かってるようで分かっておらんのじゃ」
「はあ……」

 三人は難しい話をした。

「話がそれましたわ。その時に太后様とお近づきになって。ジュリちゃんもその時に引き取られていったのですわ」
「ああ、それでか」

 ジュリエットが養女という話も、ビアンカと昔なじみというのも詳しくは知らなかったが、そういうつながりだったのか。

「こうなった以上事態はすぐにもうごきだすじゃろ。メンツがかかっている、圧力もかかった。ネルソンは全力で究明してくるじゃろ」

 俺でもそれは分かった。
 そして、ヘリンの推測通り。
 翌朝、朝鳥がなりだした直後。

 シンシから、相手が分かったという連絡が来たのだった。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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