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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第五章

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05.全肯定する女

 えっと……それってどういう意味だ?

 いまいち意味が分からなくて、きょとんとなってしまった。
 エステル嬢は俺をしかってたはずだよな。しかったり持ち上げたりしてた。

 それがなんで、「私の好きな人の悪口を言わないでください」になるんだ?
 だって俺は誰の悪口も言ってなくて、自分の当たり前の事しか言ってない訳だから。

 ……。
 …………。
 ………………。

「――え?」
「あっ、やっと理解したみたいです」
「えええええ!?」

 盛大にひっくり返る俺。
 どういう事? 今のって俺の話?

「そうですよ」
「読心術者だったのかエステル嬢!」
「そんな訳ないじゃないですか。今のルーカスさんの反応だったら誰でも分かります」
「わ、分かるのか」
「はい。私、そんなルーカスさんも好きです」
「――っ!」

 息を飲む俺、今度は直接的に言われた。
 この上無いストレートな、勘違いのしようが無い言葉で。

「ルーカスさんは裏表がないですから」
「それが出来るくらい器用じゃないから」
「それでも意地を張る人はいくらでもいますよ。冒険者だと特に。ルーカスさんなら分かりますよね」
「あ、ああ」

 確かにそうだ。
 六十年近く冒険者をやってきていろんな人を見てきた。
 中には俺ほどじゃないけどやっぱり能力的に足りないヤツもいて、でもそいつらは多くの場合自分を大きく見せようとして、それで失敗することが多い。

 自分を実力以上に大きく見せても意味なんかないのにずっと不思議に思ってた――はそれとして。
 そうか、裏がない事を評価されたのかエステル嬢には。

「えっと……その……」

 どうしよう、どうしたら良い。
 告白されたぞ? どうすればいい。

「ふふ、とりあえず」
「びくっ!」
「そんなに緊張しないでください。まずはその人を縛ってしまいましょう」
「あ、ああ!」

 エステル嬢に言われてようやく思い出した。
 二度撃退した襲撃した。
 三度目がないように、そいつがおきる前に縛り上げることにした。

     ☆

 エステル嬢が結い上げた縄で相手を縛った。
 エステル嬢が張った罠にかかって、エステル嬢が結い上げた縄に縛られてる。
 俺、何もしてないな……。

「と、思ってるみたいですけど」

 エステル嬢はニコニコ笑いながらいった。

「捕まえられたのはルーカスさんのおかげですからね」
「やっぱり読心術士なのか!?」
「見れば分かりますよ」
「わ、分かるのかそんなの」
「だって、ずっとルーカスさんの事みてますもん。好きですから」
「――んぐっ!」

 また言葉に詰まる俺。

「エ、エステル嬢、そういう冗談は……」
「冗談じゃないですよ」
「なんで俺なんかを?」
「人を好きになるのに理由なんかいりません」

 むっ。
 その言い回しは知ってる。
 何回も傍観者の立場で聞いた事のある台詞だ。
 それがまさか自分にされるとは。

「ふふ、冗談ですよ。ちゃんと色々あります」
「ど、どこなんだ?」
「教えてあげません」
「えええ!?」
「私の好きな人の悪口ばかりをいう人になんて、私の好きな人のいいところをは教えてあげません」

 さっきと同じ言い回しだった。それを話すエステル嬢はやっぱりニコニコで……まるで小悪魔のようにみえた。

 でも、だからこそ。
 徐々にだけど、ようやくだけど。
 エステル嬢の気持ちが、言ってる事が本当なんだろうなって思う様になってきた。

 俺の事が好きだというエステル嬢。
 その気持ちは――。

「嬉しいよ」
「え?」
「すごく嬉しい。俺の事を好きって言ってくれて、すごく、すごく嬉しい」
「……ずるいですよ」

 エステル嬢は顔を赤らめてうつむくと、上目使いで唇を尖らせていった。

「こういう時だけそんなストレートに言うなんて、ずるいです」
「ず、ずるいのかこれ」

 なんかまずい事やっちゃったのか。
 こういう風に普通に好きって言われたのは初めてだから、思った事をストレートにかえしたけど……。

 んで、困った。
 好きって言ってくれたエステル嬢に嫌われたくない。
 ずるいって言われて、それが嫌われるに繋がるかも知れないってなって、それが困る。
 好かれてる相手に嫌われたくない。

 くそ、もう童貞じゃないのに童貞丸出しの思考じゃないかこれ。

 どうしたら、どうしたらいいんだ。

「うふふ、大丈夫ですって」

 また、小悪魔な微笑みを向けられた。

「ルーカスさんの事はいっぱい見てきたから分かります。だから」
「だから?」
「何があっても嫌いになりませんから♪」

 全てを超越した全肯定宣言。
 それに俺は困惑したが、それと同時に。

 すごく、嬉しかった。
 人生で一番嬉しい瞬間かもしれない、と思ったのだった。
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