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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第四章

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10.孤軍奮闘

「ぐわあああ!」
「た、たすけて――きゃああああ!」

 ローマンとクリケットの神殿から次々と悲鳴や断末魔が聞こえてきた。
 両方から同時に異変が起きたせいで、例の門番がどうしたらいいのかあわあわしてる。

「どういうことなんだ……これは」
「これは……封印が弱まってる?」
「どういう事だヘリン」
「わしにも知らぬ! ただ、封印が弱くなっているとだけ感じるのじゃ」
「封印が弱くなってるって――うわ!」
「きゃあ!」

 地面ごと神殿が揺れた。揺れて転んだビアンカが悲鳴をあげた。

「大丈夫かビアンカ!」
「それよりもルーカス様、さっきの悲鳴は冒険者の方が敗北したのでは?」
「――そうだ!」

 ビアンカに気づかされて、木刀を握りしめてまずはローマン神殿に駆け込んだ。
 床に一人の女が倒れている、腰から真っ二つにされてる、手遅れだ。
 その真上にローマンが浮かんでいる、見た目は今まで通りが、気配が違う。
 なにが違うんだ――って思ってると。
 床の魔法陣が光って、力が漏れ出した。
 それをローマンが取り込んだ。漏れ出した分、全部。
 見た目は変わらない、が気配は更に変わった。

「元の力に戻りつつあるようじゃな」

 遅れてやってきたヘリンがいった。

「やっぱりそうか」
「見たとおりじゃな。問題は……」
「魔法陣がまだ落ち着いてないこと」
「そうじゃ。一日二回のサイクルが壊れているようじゃな」
「このままだと……」
「放っておいたらすぐにでも完全復活するだろうな」
「それはまずい」

 ちらっとヘリンを見た。
 完全復活したヘリンと一度戦ってる。
 苦戦の末、体の一部を犠牲になんとかかった。
 運の良さにも助けられた。もう一回やれって言われても勝てる自信がない、百回やったら九十九回は負ける。
 向こうは伝説の冷静で、おれはなんの才能もないただの人間だから。

「今のうちに止めないと」

 木刀を握り締めて、深呼吸した。
 歩いてローマンに近づいていく。
 向こうがおれの事に気づいた。こっちをにらんで、殺気をぶつけてくる。
 強い! つらい!
 だが、百パーセントのヘリン程じゃない。
 ローマンが飛びかかってきた。早い!
 躱しつつ先読みのカウンターを叩き込む。
 手応えあり、右手に減衰のない手応えを感じた。
 手の甲の紋章が光る、精霊属性の攻撃。
 ヘリンがそばにいるから攻撃が精霊属性になった。
 一撃でローマンの脳天を貫いて、そいつを消滅させた。
 代わりに、左腕がぱっくりさけた。

「大丈夫か小僧」
「大丈夫だ。それよりも隣に行くぞ」
「クリケットじゃな。手伝おう」

 ローマンが消滅し……魔法陣が未だにうごめいてるのを確認して、ヘリンと一緒にクリケットの神殿に向かった。
 同じ事になってるクリケットに、ローマン以上の苦戦を強いられながらも、なんとか腹を貫かれた程度で倒すことが出来た。

     ☆

 精霊の復活サイクルが早くなっていた。
 元は一日二回の定時復活だったのが、完全にランダムの復活になった。
 一時間くらいで復活することもあり、前のを討伐しきれないうちに五分程度で復活する事もある。
 非常事態を受けてギルドが冒険者を増員してたが、もともとクリケットを安定討伐出来るのは一部の冒険者だけだったし、安定討伐といっても全力だして一日一回なら、って人もおおかった。
 連続復活による消耗戦と、連続復活のパワーアップで対抗できなくて負傷者が続出した。
 増員した冒険者も一日目が終わった頃には半分に減って、二日目は急激に元の一割までへった。
 三日目現在、まともにやれるのはおれ一人になっていた。

「包帯お取り替えしますね」
「ビアンカ。ありがとう」

 ビアンカがやってきて、負傷した箇所にまいてる包帯を取り替えてくれた。

「お疲れのようです、少し休まれては?」
「復活した瞬間に瞬殺するのが今の所ベストだ。休んでその間に連続復活されたら目も当てられない」
「ですが、それではルーカス様のお体がもちません」
「それよりジュリエットとヘリンからの連絡は?」
「まだです」

 ジュリエットとヘリンは試練の塔に向かってる。
 この事態になったのは、確信はないけどヘリンが先祖ヘリンの書いた紙に触ったからだ。
 その瞬間ローマンとクリケットの神殿に異変が起きて、今の事態になった。
 同じ名前、同じ見た目。そこまでなら偶然かもしれなかったが、ここまで来たら偶然とは考えにくい。
 だからヘリンに試練の塔に行ってもらって、先祖ヘリンとあってもらう事にした。
 ジュリエットは護衛についてもらった。ヘリンはおれから離れるとただの子供になる。だから護衛をたのんだ。
 おれの頼みでジュリエットは部下を百人近く引き連れてヘリンを護衛していった。
 だからあっちは大丈夫だろう。

「問題はこっちだよなあ」
「ルーカスさん!」

 おれを呼ぶ声がして、そっちに振り向いた。
 ギルドの受付嬢、エステル嬢が小走りでやってきた。
 最初はおれが名乗った「ルカ」で呼んでたけど、ヘリンが望む「ヘリン殺しのルーカス」を名乗るようになってからは、彼女もおれの事を「ルーカス」って呼ぶようになった。
 正直エステル嬢にルーカスって呼ばれると、たまに昔呼ばれた「ルカカス」に空耳する。
 そんな事を考えてる内に、エステル嬢がおれの前にやってきた。

「どうだった」

 エステル嬢は申し訳なさそうに首をふった。

「すみません、冒険者たちが集まらなくて。他の街に救援をお願いしてるんですけど、来るのが二日後になるみたいで」
「二日もか……王国は、三つの王国はどうなった」
「よほどの事がない限りアクリーの街には兵はだせないって」
「……ジュリエットの時は国家叛逆罪とか言ってたっけ。あれくらいの事じゃないとダメなのか」
「はい……精霊が完全に復活した、とかじゃないとって言われました」
「それじゃ街が壊滅する」
「それくらいじゃないとってことですわね。あるいはその事態になるまでをまって、今の三国鼎立の膠着を打破しようとしてるのかも知れませんわ」

 ビアンカがいった。
 そんなの認められるか。

「すみません。ギルドでも出来るだけ早く冒険者をみつけますので」
「分かってる、それまでは――」

 空気が震えた、クリケットの神殿が揺れた。
 精霊がまた復活した。
 と思ったら更に揺れた、クリケットの神殿だ。
 連続で――今までで一番短い間隔での復活。
 元の二割の強さのクリケット。
 苦戦になるな。
 おれは立ち上がって、木刀を握り締めて、神殿に向かって行く。
 背中越しに、エステル嬢に向かって。

「それまでは、おれが食い止める」

 やれるかどうかはわからない、だが、やるしかなかった。
 おれは、目の前の戦いをなんとかするしか能のない男だから。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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