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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第四章

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07.三つの試練

「はあ? なに言ってんのあんた」

 甲高い声で、若干舌っ足らずな感じの喋り方だった。

「口調は違いますが、声もそっくりですわね」

「あ、ああ……。ヘリンにそっくりだ」

「ヘリンって、あの時一緒にいた……? 言われてみれば」

 ビアンカもジュリエットも同じ感想をもった。

 おれだけじゃない、二人とも姿を現わした半透明の少女がヘリンそっくりだと感じた。

「あ、あなたは――」

「あん?」

 少女がジュリエットを睨んだ。ドスの効いた声、まるでマフィアだ。

「その格好ってクムス王族だよね。なのに御先祖様に対して敬意の一つもないわけ?」

「し、失礼しました。わたしはジュリエット・アン・クムスと申します」

「ジュリエット? ああ、がきんちょが娘にしたっていう」

「はい。失礼ですがあなた様は……」

「ヘリン・ユン・クムス」

「クムス……王族だったのか」

「なに? あたしが王族でなんか文句あんの?」

 おれのつぶやきにかみついてきた。

「ご、ごめん。そうじゃないんだ」

「じゃあなに」

「や、その……」

 さらに睨まれた。まずいな、なんて答えよう。

「申し訳ございません。あなた様にとてもよく似た子を知ってますので。つい取り乱してしまいました」

「へえ、あたしに」

「はい。気品が少し足りていない事をのぞけば生き写しですわ」

「ふふん、まっ、そりゃそうでしょ。クムス王家でもあたしくらい気品のあるヤツはすくないからね」

 ヘリンが胸を張って大いばりした。

「そういうことなら特別に許してあげるわ」

 許してもらえたようだ。

 おれはこっそりビアンカに礼をいった。

「ありがとうビアンカ、助かった」

「嘘はついてませんので」

「嘘は? ああ」

 そうか、そうかもしれない。

 うん、言われて見るとそうかもしれない。

 このヘリンと、おれが知ってるヘリン。

 気品、っていうくくりだとこっちの方がある。

 あっちのヘリンは口調があれだから雰囲気はあるけど、気品ってのとは違う気からなあ。

 ビアンカの取りなしでなんとか収まった。

 にしても本当、なんなんだろうなこのヘリン。

 偶然? にしては似すぎだし、それに名前も一緒。

 ふーむ。

「で、あんたらは何をしに来たの?」

 考え込んでると、ヘリンが聞いてきた。

 その質問に、ジュリエットが一歩前にでて、クムス式の礼をしてから、答えた。

「試練の塔にいらっしゃる御先祖様がたに、ルーカス殿との婚姻を認めて頂きたく参りました」

「ルーカス? そっちのがきんちょ?」

「はい」

「ふーん、そういうことね」

 じろじろ見てきた。

 飛んできて、至近距離でまじまじと顔を凝視された。

「へー、ふーん、ほー」

「な、なに?」

「ただのがきんちょだとおもってたけど、結構おもしろいじゃん」

「え?」

「あんたいくつ?」

「いくつって……?」

「年齢の事に決まってんじゃん。それ以外にいくつ? って質問ありえるの?」

「あ、ああ。ごめんなさい」

 何となく謝って、答えた。

「七十歳になるけど」

「えええええ!」

 ジュリエットが悲鳴の様な声をあげた。

 あっ、そういえばジュリエットはしらないんだっけ。

「る、ルーカス殿、それは本当なのですか?」

「ああ」

「しかし、見た目が……それにただの人間のはず」

「ジュリちゃん、その事は後で説明してあげるから」

「ビアンカさんは知ってるのですか?」

「ジュリちゃんも心当たりはあるはずよ。前のルーカス様と、今のルーカス様」

「……あっ」

 ハッとするジュリエット。

 うん、たしかに。彼女ともセックスして、おれは自分で自分を出産した。

 頭のいい人間ならそこを指摘されたらすぐに理解するはずで、ジュリエットはすぐに理解した。

「そう言うことなのですね」

「ええ」

 ジュリエットが納得した。

「やっぱりね」

 先祖ヘリンが言って、あらためて彼女をみた。

「やっぱり?」

「なーんか変だと思ってたのよね。若いのに魂は古くさいじゃん、あんた」

「古くさいじゃんって」

 そういうものなのか。

「うん、でも面白いじゃんがきんちょ」

「えっと、七十歳でもがきんちょなの?」

「あたしが何歳になると思ってんのよ。あたしが死んだ時あんたなんて生まれてもないんだからね」

「な、なるほど」

 幽霊でジュリエットの先祖だしな、そりゃそっか。

「で、そのがきんちょと結婚したいっていうのね」

「はい!」

 ジュリエットは即答した。

「だから、御先祖様がたの許しをいただきに」

「話はわかった。じゃああたしがテストする」

「ヘリン様がですか?」

「なんか文句ある?」

「いえ、ただ最近は御先祖様が多くお戻りでいらっしゃるのと、わたしの時は皆様に色々試練をだされたもので」

「みんななら中でくたばってるから」

「えっ?」

「ちょっとしたケンカ、むかつくから全員のしといた。ああ、なにかあるならいまがチャンスかもね、なんだって審査するのがあたし一人になってるから」

 先祖ヘリンはニヤリとした。言葉とは逆に、まったくチャンスとは思ってない顔。

 普段よりもかなり先祖の霊が多い状況で、軽く「全員のした」って言い放つような相手、しかも性格も(きっと)悪いと来た。

 チャンスなんかじゃないなこれ、むしろ一番やばいときに来たのかも知れない。

「大丈夫です! ルーカス殿との事を認めていただければ」

「そか。じゃあどーしよーかなー」

 ものすごい軽い口調で言いながら、考える先祖ヘリン。

 その軽さが余計に怖い。

「よし、決めた。あんた、三人倒してもらうね」

「倒す?」

「いまから三人の相手を用意するからさ、そいつらを倒せば認めたげる」

「たおす、か」

 拍子抜けした、ぶっちゃけちょっと拍子抜けした。

 倒す、つまり戦闘。

 別にそれに自信があるって訳じゃないけど、それでもおれのなかじゃ一番なんとかなりそうな分野だ。

 戦闘以外何も出来ない超無能だからなあ……おれ。

「どう、やる?」

「やる」

「即答するなんてかっこいいじゃん。よし、じゃあひとりめ、いっくよー」

 先祖ヘリンはそう言って、何故かおれの胸に手のひらを当ててきた。

「あの……」

「黙ってて!」

「はい!」

 迫力に気圧された。

 だまって先祖ヘリンの行動を待った。

「なるほどなるほど、よし、わかった」

 しばらくして、なんか意地悪そうな顔で頷いて、おれに触れたまま反対側の手をつきだした。

 そこに光が集まって――ビアンカが現われた。

「わたし?」

 正確にはビアンカがいるから、ビアンカの形をした何かだ。

「ふふん、似てるわね、さすがあたし」

「あの、どうするのこれ」

「さっきの話を聞いてなかったの? 倒しなさい」

 最後の一言にちょっとぞっとした。

 無慈悲な、相談する余地なんてない、と突きつけられた様な一言。

「はい、よーい、スタート」

 先祖ヘリンはパンと手を叩いて、後ろ向きのまま飛んでおれから離れた。

 同時に、偽ビアンカが襲ってくる。

 奇襲をかろうじて避けた。偽ビアンカの攻撃が地面をえぐった。

「ルーカス殿!」

 大声を上げて心配するジュリエット。

 それにしても、スゴイパワーだ。

 何しろ一撃だけで、地面に落とし穴が出来そうなくらいの穴をえぐっていった。

 パワーはとんでもないレベルだ、ビアンカの柔らかな外見から想像もつかないような。

 しかし……たいしたことはない。

 偽ビアンカはさらに襲ってきた。

 集中。

 攻撃をしっかり見つめて、右半身にある三つの隙に、シャープなカウンターを叩き込む。

 ドスドスドス、手応えあり。

 紋章は光らず、減衰する無属性の感触。

 それでも、偽ビアンカの右半身を吹っ飛ばした。

 吹っ飛ばされたそいつは倒れて、起き上がれなくなって、やがて光になって溶けた。

「すごいルーカス殿」

「まだまだ、ルーカス様の本当の力はこの程度じゃないわ。これでも全開の三割くらいよ」

「そうなんですかビアンカさん!?」

 女二人が観戦モードのなか、おれは先祖ヘリンに聞く。

「これでいいのか?」

「やるじゃん。でもさ、良かったの? あれ、あんたが好きな人の格好したけど、容赦なかったよね」

「ビアンカならそこにいたし。偽物だって分かってたから」

「そうだとしてもまったく躊躇ないってのは面白いね。面白いがきんちょだね」

「褒められてる……のかな」

 なんかそうじゃない気がする。

「じゃ、二人目いくよ」

「ああ」

 今度は何だろう、ジュリエットの偽物かな。

 と思ってると、先祖ヘリンは女達の方にとんでった。やっぱりジュリエットの偽物か。

 いやまて、ジュリエットなら、おれにさわったらいいんじゃないのか? なんでそっちに?

 疑問はすぐに解けた。先祖ヘリンはジュリエットじゃなくてビアンカに触った。

「何をなさるのですか」

「こうするにきまってんじゃん」

 にやりとする先祖ヘリン、直後、ビアンカの体がブルッと震えた。

「かーんせーい。はい、二人目だよ」

 さっきと同じように飛び下がる先祖ヘリン。

 これって……まさか。

「わたしの体……操られてる!?」

「ふふん、体は本物、さて今度どうするのかな」

 憎たらしいくらいわくわく顔の先祖ヘリン。

 それとほぼ同時に、ビアンカが襲いかかってきた。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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