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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第四章

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06.一つの国、一人の幼女

「大きくなったわねジュリちゃん、見違えたわ」

「すみません、体ばかり大きくなって」

「そんな事ないわ。綺麗になった。あら、もしかして風の噂で聞いた王女殿下になったジュリエットって」

「はい! わたしの事です」

「そうなの。良かったわね、おめでとう」

「ビアンカさんのおかげです!」

 大昔からの知りあいのように話す二人。蚊帳の外で、キョトンとなってしまうおれ。

「なあ、二人は……知りあいなのか?」

「ええ。前に少し」

「ビアンカさんは命の恩人です!」

 言葉を濁すビアンカに、はっきりと答えるジュリエット。

 というか、ジュリエットの口調もちょっと違う。

 直前まで硬い、鎧姿の騎士とか戦士とかのイメージそのままの硬い口調だったのに、今はですますとちょっとだけや割らなくなってる。

 ビアンカと話しだしてからだ。

「命の恩人? どういうことなの?」

 ビアンカをみる。彼女は珍しく微苦笑して、答えるのをためらってる。

「ジュリエット?」

「はい。わたしが元平民で、父上……王の養女だと言うことはご存じですよね」

「ああ。それであの男が襲ってきたんだよな」

 ロミオ・ブル・ラキア、ラキア王国の王子にしてジュリエットの婚約者。

 生粋の王族であるために、平民の出であるジュリエットと婚約させられた事に不満を持ち、ジュリエットを亡き者にしようとした。

「ルーカス殿に話してなかったのですが、平民は平民でもただの平民ではなく、貧民だったのです。両親は病で天に召され、家を失い路上生活をしていた頃に、ビアンカさんに色々恵んでいただき、助けてもらったのです」

「ストリートチルドレンだったのか」

 路上生活をする物乞いに近い子供達。

 このアクリーにもそういう子供達がいる。噂によるとそういう子供達が集まってる区域もあるとか。

 当然生活は苦しく、大人になるまで生き延びる者は少ない。

 かつてのおれ、七十歳童貞ジジイだったおれよりもワンランク下の存在。

 まさかジュリエットがそうだったとは。

 なんか……変に親近感が沸いてきた。

「ビアンカさんがいなかったら今のわたしはありませんでした」

「たいしたことはしてませんわ」

「そうか、ビアンカはそんな事をしてたのか」

 ビアンカはますます微苦笑した。珍しい困り顔……なんだか可愛いと思った。

 普段はあんなに綺麗な人なのに、こういう顔はかわいいんだな。

「それよりも……どうしてルーカス殿とビアンカさんが?」

「わたくし、ルーカス様に身請けしていただきましたの。だから今はルーカス様の元で」

「本当なのですか!?」

 盛大にびっくり――ほとんど驚愕って言ってもいいくらいの勢いでびっくりして、おれを見つめるジュリエット。

「あ、ああ。まあな」

 そう言ってから、思い直した、言い直した。

「まだ正式に手続きしてないけど、妻だと思ってる」

「ルーカス様……」

「わあ……」

 ジュリエットは瞳を輝かせた。

「ビアンカさんを……あのビアンカさんをものにするなんて。なんてお方……」

「いや、まあ」

 なんとも返事しつらい感じだった。

 単におれがすごいって言うことなら「いやそれは違う(キリッ)」って否定する事ができるんだが、あのビアンカを、っていういい方じゃ否定出来ない。

 だっておれがそう思ってるんだから。

 あのビアンカを、素晴しく素敵で美人で上品で最高の(ひと)であるビアンカを。

 おれ自身そうおもってるから、否定なんて出来るはずもない。

「幸運が重なった結果なだけだ」

 結局。そんな事を言うことしか出来なかった。

     ☆

 試練の塔には三人で向かった。

 その道中、ジュリエットの様子がどうにも変だった。

 ちらちらおれをみて、何かを言おうとして、言い出せないのを繰り返す。

 一体何だろう、言いたい事があれば言えばいいのに。

「ルーカス様」

「うん? どうしたんだビアンカ」

「また腕を組んでもいいですか?」

「ああ、もちろん」

 組みたい組みたい、むしろこっちからお願いしたい。

 ビアンカは腕を組んできた、体をくっつけて、頭を肩に乗せてきた。

 オッパイが……腕に当たった。

 やっぱり柔らかい、気持ち良い。

「……」

 ふとジュリエットの視線に気づく。

 いかん、さっきと違って彼女がいたんだ。

 おれはにやけないように、顔を引き締めた。

 そしたら何でかジュリエットがびっくりした。

 ……なんだ?

「ところでジュリちゃん」

「は、はい! なんですかビアンカさん」

「話は聞いたわ。ジュリちゃん、ルーカス様を婿に迎えるのですわね」

「えっ。いえいえいえいえ!」

 ジュリエットはブンブン手を振った。軽く残像が見えそうなものすごい勢いで。

「そんなとんでもない、ルーカス殿を婿にだなんて」

「でも、今のジュリちゃんは王女殿下。そうしなければダメなのよね」

「それは……いえ、大丈夫です!」

 一瞬迷って、それからビアンカを見つめて。

「なんとかします」

「できるの?」

「はい。御先祖様たちにお願いします。試練をクリアして、わたしがルーカス殿に嫁げるようにします! 御先祖様たちがいうことなら父上も無視はできません」

「そう。それなら安心だわ」

「はい!」

「ねえジュリちゃん」

「はい?」

「ジュリちゃんもどう?」

 ビアンカは空いてる方のおれの腕をさした。

「え?」

「ルーカス様、ジュリちゃんにもさせてあげてもいいですか?」

「なにを?」

「腕を――」

「わー! わー!」

 ジュリエットが手を振ってわめいた。

 なんだ? いきなり。

「なんでもない! なんでもないですからルーカス殿」

「お、おう」

 よく分からないけど、とりあえず頷くおれ。

 ビアンカは困った顔をした。なんだろ。

 それにしても……ジュリエットを見た。

 普段のジュリエットらしくない、ただの女の子のような反応。

 そのギャップが……可愛く見えた。

 可愛いなあ、うん。

 そういえばビアンカはおれの右腕を組んでるけど、左腕が空いてるんだよな。

 ……よし。

「じゅ、ジュリエット」

「はい」

 ジュリエットはすっかり元に戻った、そんな彼女にいう。

「う、腕、組まないか」

「え?」

「だから、腕、組まないか」

 同じ提案を二回すると、ちょっと落ち着いて来た。

「……えええええ」

 代わりにジュリエットが慌てだした。

「そんな、わたしなんかが」

 何故かビアンカをチラって見て手を振るジュリエット。

 微妙に拒まれたけど、おれは組みたいから、強引に組んだ。

 組んでみたら、ジュリエットは拒まなかった。

「ふふ」

「うぅ……」

 上機嫌なビアンカ、そのビアンカをちらちら気にするジュリエット。

 二人と腕を組んだまま歩き、やがて。

「ここが試練の塔か」

 目の前の立派な塔を見あげて、ジュリエットに聞く。

「はい、ここが――」

「ルーカス様!」

 ビアンカの切羽詰まった声。同時に反応して木刀を抜く。

 空気を切り裂いてすっ飛んでくる何かをはじき飛ばす。

「なんだ!」

「あそこですルーカス殿!」

 腕から離れた二人、ジュリエットが塔の方を指す。

 塔の上から、半透明の幼女が降り立ってきた。

「おまえ……なんでココに?」

 それは、ヘリンとまったく同じ見た目をした幼女だった。
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