挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第四章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

38/75

02.ありふれた父親?

「そやつを捕らえろ!」

 ジュリエットの父親――国王の命令で、兵士が一斉におれに飛びかかってきた。

 右手がクセで腰のあたりをつかもうとするが、空を切った。

 木刀はもうない。いつもの攻撃が出来なく、見苦しくじたばたしてしまう。

「え?」

 だだっ子パンチが兵士の一人に当たった途端、おれはその感触にきょとんとなった。

 右手のだだっ子パンチ、体がすっかり覚えてる無属性の無条件減衰。

 なんで減衰? 右腕なんだぞ?

 おれの右腕にはヘリンの力があるはずだ。

 右手を見る、手の甲に紋章はついたままだが、それはくすんで輝いてなかった。

「どうなってる――どわっ!」

 深く考える暇もなく、おれは兵士に取り押さえられてしまった。

     ☆

「と言うわけなのだ父上!」

「ふーむ」

 寝室の中、椅子に座って下あごを撫でる国王、服を着て事情の説明をしてくれたジュリエット、そして全裸で後ろ手を縛られて正座させられてるおれ。

 なんというか、浮気現場を押さえられた間男になった気分だ。

 ……七十年間童貞だったから想像でしかないけど。

「なるほど、話はわかった。事情もな」

「ありがとう父上。ルーカス殿!」

 ジュリエットはおれの縄をときにきた。

 本当に事情を理解したのか、さっきまであれほど怒り狂ってた国王が縄を解くのを止めなかった。

 縄をといてもらい、いそいそと服を着た。

 昨日の激戦でぼろぼろな上に血だらけだが、それでも素っ裸よりはマシだ。

「ルーカス、とか言ったな」

「あ、ああ」

「早速だが、これから試練の塔に行ってもらう」

「………………はい?」

 何を言われたのか理解できなかった。

 なんだ? 試練の塔って。

 というか何の話? この流れからなんでそんな話に?

 おれ、なにか会話を聞き逃した?

「今年は例年に比べて先祖の御霊が多く戻られているという報告もあるが、ジュリエットが太鼓判を押す程の力量ならば大丈夫だろう。何よりこれはしきたりだ、クリアしないことには娘はやれん」

「いやちょっと……」

「その時は残念だが、ジュリエットの事とそなたの命を諦めてもらうことになる」

「なんかさらっととんでもない事をいわれたけど!?」

「なあに、試練の塔を登ってくればなんの問題もない」

「いやいや。それよりもわかるように説明してくれ。なにがなんだか分からない」

「なんだと?」

 ぎろり、と睨まれた。

 なんかものすごい迫力で思わずたじろいだ。

 なんか分からないけどヘリンの殺気よりも怖い。

 ……ちょっとちびりそうになった。

「そなたは娘を傷物にした」

「父上、それは――」

「余は事実の話をしておる」

 国王が手をかざして弁解しようとするジュリエットを止めた。

 うん、確かにそれは事実だ。

「ジュリエットは我が国の第一王女、王族だ。その純潔は重い。奪った男に相応の責任を取ってもらわねばならん。合意の上ならば男としての責任をな」

「な、なるほど」

 当たり前な話だ。男としての責任は確かに取らなきゃいけない。

「そして王族と結ばれる平民は姻戚として王族の一員になる。我が国では平民が王族の一員になる際、試練の塔に赴くしきたりがある」

「……そっか」

 頷くおれ。それも何となく分かる話だ。

 そしておれが行かなきゃならないと言うことも理解できた。

「ルーカスとの、そのような事は気にしなくていい。父上も父上だ。今年の試練の塔は危険だとご自身で今話したではないか。わたしの時とは違うのだ」

「しきたりはしきたりだ」

「しかし!」

「しきたりを守らずお前の婿にふさわしい男だと証明できないのであれば、一人の父親として相応の対処をせねばならん」

「相応の対処?」

「そのルーカスとやらを亡き者にするしない。そうだな、ひと思いにはやらん。可愛い娘をもてあそんで責任もとれない男だ、捕らえて一日一刺し、一年かけてじっくりとなぶり殺しだ。地面に埋めて国民全員にのこぎりで首をひいてもらうのも良いかも試練」

「怖いわその発想は!」

 思わず突っ込んだけど、父親ってこういうものなのか?

 ていうか。

「あの……ジュリエットは養女……なんだよな」

「それがどうした。一目で気に入って、血筋関係なく娘にした子だ。余にとっては実の娘以上に可愛い子だ」

 またギロリって睨まれた。ぞくっとした。

 これ以上ふざけた事を抜かすと関係なくなぶり殺しにするぞって言われた気がした。

 父親ってのは精霊よりも怖い存在だと思ってしまった。

「ルーカス殿」

 ジュリエットが隣にやってきて耳打ちした。

「気にすることはない。わたしがしっかり父上を説得――」

「ジュリエット」

 まっすぐジュリエットを見つめた。

 国王にはちびりそうになったが、ジュリエットに向ける感情は違う。

 昨日ヘリンが出て行った瞬間、彼女に口付けした瞬間に決めた覚悟がある。

 国王に先に言われてしまったが……責任。

 そう男の責任。

 それはちゃんと取らなきゃと思う。

 まっすぐジュリエットを見つめて、宣言するようにいった。

「な、なんだ?」

「試練の塔、ちゃんと登ってくる」

 意表を突かれて、頬を染めるジュリエット。

 そんな彼女を見て、おれは決意を固める。

 そうだ、ちゃんと責任を取らなきゃいけないんだ。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
buu1d9ehdyke4j157nc9m8e04phq_15sq_nu_se_
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ