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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第四章

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01.史上最大のピンチ

 目を覚ますと、やっぱり足元に自分の死体が転がっていた。

 朝日の中、腹を食い破られた片腕のおれ。そしてそれをため息交じりで眺める五体満足のおれ。

 もはや慣れた光景でおれは驚かなかったが、ジュリエットはそうじゃなかった。

 体をおこして、シーツで裸をそれとなく隠す彼女は目を見開かせて、おれとおれの死体を交互に見比べた。

「これは……呪術、の類なのか?」

「どうなんだろう。実はおれもよく分からない」

「よく分からない?」

「理屈は分からない、ただ、その……した(、、)後にこうなるってしか」

 説明するのがちょっと恥ずかしかった。

 それは向こうも同じか、おれの言葉を正しく理解したジュリエットは盛大に顔を隠して、顔を伏せてしまった。

「だ、だれとも」

「え?」

「だれともこうなるのか?」

 顔を赤くしたまま問い詰めてくるジュリエット。ものすごい勢いだ。

「それも分からない……けど」

「けど?」

「ヘリンが言ってた事を今思いだしてた。ビアンカも似たような事を言ってた。どうやら、前の人が次の人を分かるらしい」

「リレー……」

 ヘリンが言ったセリフをつぶやくジュリエット、おれは静かにうなずく。

「お前は何かわかるのか?」

「いや、なにも」

「そうか」

 今までの事ならジュリエットにも何か分かるのかもしれないが、そんな事はないようだった。

 まあいい。

「それよりも、腕は大丈夫なのか」

「うん? ああ、この通りだ」

 右腕をぐるぐる回した、完璧であるというアピールをする。

 それを見たジュリエットが微かに微笑んだ。

「よかった……しっかり治って」

「ありがとう」

「いや、礼をいうのはこっちだ。ルーカス殿がいなければ今頃わたしは死んでいた。あなたは命の恩人だ」

「それは大げさだ」

「そんな事はない! わたしは命を救われた!」

 力説するジュリエット。その拍子でシーツがぱらりと落ちる。

 汗ばんだ美しい体と、桜色の突起が目についた。

「じゅ、ジュリエット。それ」

「ん? ああ、すまない」

 俺に指摘されて、ジュリエットはシーツで一応体をかくしたが、堂々としている。
 そうして、少しのあいだ考え事をして。

「あ、あの……」

「え?」

 うってかわって、おそるおそる、って感じで口を開くジュリエット。どうしたのかと思って見ると、彼女は珍しく――と言うよりはじめてみる姿をしていた。

 顔を赤らめ、もじもじをしている。いきなりどうしたんだろう。

「き、昨日いってた事」

「昨日?」

「その、唇が……」

「ああ」

 その事か。

 おれがビアンカから言われたセリフ、緊張してるジュリエットにキスをして、思ったまま口に出したセリフ。

「唇が温かい人間は心も温かい」

 ジュリエットが言ってるのはそれだろう。

「それ……本当、なの?」

「……ああ」

「わたしでも、そうなの?」

 わたしでも?

「こんな無骨で、心まで鋼鉄で出来てると言われ、部下からも恐れられてる様な女でも……?」

 そう言って怯えと期待をない交ぜにした目でおれを見つめるジュリエット。

「……ぷっ」

「な、何故笑う!?」

「いや、可愛いなって思って」

「え?」

「可愛いよ、ジュリエット。それに心が鋼鉄に出来てるだなんてとんでもない」

「え?」

「おれが知ってる限り、一番乙女な女の子だ」

「お、おおおお乙女ぇ!?」

「ああ」

 間違いなくそう思う。

 おれが知ってる女はビアンカとヘリンしかないっていうのをおいといても、ジュリエットは充分に女の子で、乙女だと本気で思う。

「ジュリエットは乙女だ。おれが保証する」

 おれに保証されてもあんまり意味はないけど。

 と思ったけど、そうでもないみたいだった。

「うん……ありがとう」

 ジュリエットははにかんでうつむいた。まんざらでもなさそうな顔で、言って良かったと思った。

 不思議な子だ。

 裸を見られるのを気にしないくせに、言葉にいちいち反応をする。

 本当、不思議な子だ。

「さて、おれの死体をを片付けよう。いつまでも見てたいものじゃないからな」

「て、手伝う」

「ありがとう」

 そういって、一緒に起き出すジュリエット。

 服を取ろうと同時に手を伸ばして、触れただけで手を引っ込める仕草がまた可愛かった。

 そうして、服を着ようとしたが。

「ジュリエット! ジュリエットはいるか!」

 部屋の外から野太い男の声がした。

 直後、部屋のドアがパンと開かれる。

「ジュリエット! ここにいた……か」

 入ってきた男は部屋の中の様子をみて、言葉を失った。

 まだほとんど全裸のおれとジュリエットの姿を見て、絶句して、やがて顔を真っ赤にしてぷるぷる震えだした。

 なぜかは知らないが、ものすごく怒ってるらしい。

「貴様何者だ! ジュリエットに何をした!」

「いやこれは――」

「問答無用!」

 男は腰間の剣を抜き放ち、斬りかかってきた。

 こっちは丸腰、避けるだけで精一杯だった。

 繰りかえし繰り出される鋭い斬撃、それを必死によけるおれ。

「くっ、すばしっこい。しかしこれならどうだ」

 男は指笛を吹いた。直後、大量の兵士が駆けつけた。

 ぞろぞろぞろ……ぞろぞろぞろぞろと兵士が部屋になだれ込んできた。

 寝室にしてはかなり広い部屋だったが、一瞬で兵士に埋め尽くされた。

 おれはそれに囲まれた。丸腰で。

 これはまずいぞ、こんな大群に、しかも丸腰で。

 というか、なんでいきなりこんなことに。

 仕方ない、足元に転がってる自分の死体からまた腕をもいで武器にして、無理矢理突破して逃げるか。

 と、そんな事を考えていたその時。

「やめてください父上」

 叫ぶジュリエット。

 え? 今なんて?

 父上……父上って言ったよな。

「待っていろジュリエット。お前を汚したこの男をすぐに葬ってやる。

「待ってくれ父上、違うのだ!」

 必死に弁明しようとしてくれるジュリエット、だが状況はかなりまずい。というか絶体絶命。

 娘の事で怒り狂う父親。

 ……ちゃんと弁明できても絶体絶命なのは変わらない、ものすごいまずい状況だった。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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