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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第三章

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11.ヘリン殺しのルーカス

 やばい、やばい、ものすごくやばい。

 木刀がなくなった、手元に武器がない。

 最後に武器無しで戦ったのは六十年以上前のことだ、素手での戦闘の訓練なんて一度もしたことがない。

 何をしたらいいのか、まったく分からない。

 足が釘付けになったかのようにまったく動かない。

 そんなおれをみて、ロミオは悦に入った。

「長かった……長かったぞ……」

「そんなにわたしが憎いか」

 苦虫をかみつぶした様顔で聞くジュリエット。

「当然だろうが、このおれ様が! お前のようなどこの馬の骨ともしらん小娘と婚約させられた事自体たえられん」

「どこの馬の骨ともしらない?」

 その言葉に引っかかった。

 おかしい、それはおかしい。

 だって、ジュリエットは確かに名乗った。

 クムス王国第一王女兼三等騎士、ジュリエット・アン・クムス。

 そう、登場したとき彼女は確かにこう名乗った。

「第一王女だろ、彼女は」

「養女だがな」

「え?」

「クムス王の養女なんだよ、そいつは。おれと結婚させて、両国の関係を強めるためだけに引き取った、どこの誰ともしらん馬の骨なんだよ」

「養女……?」

 びっくりしてジュリエットを見た。

 彼女は相変わらず苦虫をかみつぶした顔のままで、ちっとも表情は変わらないけど、変わらない・抗弁しないことが暗に認めているように見えた。

「というか……そんな話があるのか?」

「古いやり方じゃな。結婚する二人であきらかに片方が身分の低いものの場合、良家の養子になってからと言うのがあるのじゃ」

 操られてる構成員に拘束されたままのヘリンが言う。

「そ、そうなのか」

「このおれ様が! 気高き血統のロミオ・ブル・ラキアが! どこぞの雑種と一緒になるなどという屈辱。……それも今日までだ。父王の命には背けんが、相手がそもそもいなくなれば結婚は不可能だろう?」

 ニヤリと笑うロミオ。

 やっと、話がちょっと分かってきた。

「そんな事の為にこんな事をしたのか」

「そんな事? 平民はいつもそう言う。それこそが雑種たる理由とも気づかずにな」

 指を鳴らす前のポーズのまま手を差し出す、操られた構成員がぴくっとする。

「まずはお前からだ、ジュリエット!!」

 パチン!

 構成員がまた五人、まとめてジュリエットにつっこんいった。

「――!」

 考えるよりも先に体が動いた。

 駆け込んで、ジュリエットを突き飛ばして、彼女がいた場所に割り込む。

 ドドドドドーン!

「小僧!?」

 意識がもうろうとする、自分が立ってるか倒れてるかさえも分からない。

「ルーカス殿!」

 かろうじてジュリエットの声だけが聞こえた。

 彼女がどこにいるのかも分からなくて、姿も認識出来ない。

「にげ、ろ」

「え?」

「お前が……いなきゃ。あい、つ……の計画が、破綻す……る」

「しかし!」

「逃げ……ろっ!」

 手を振り回した、何かに触れたから、それを思いっきり突き飛ばした。

「ルーカス殿!」

「にげ――」

 パチン。

 地獄の入り口が開いた音のように聞こえた。

 歯を食いしばる、カッと目を見開く。

 操られた構成員が更に突っ込んでくるのが見えた。

 動きは見える、隙もはっきりと分かる。

 右手を振るおうとする――木刀がない。

 さっきの爆破でなくなったままだ。

 武器さえあれば、せめて棒きれでもあれば。

「……あるじゃないか」

「小僧……」

 ヘリンの声が聞こえた。聞いた事のないような声だ。

 何でそんな声を出したのか、多分おれの顔だ。

 おれは自分でも自覚出来るくらい、口角をゆがめて笑っていた。

 多分傍から見れば、凄絶な笑みに見えたんだろう。

 なぜなら、おれは。

 右手を自ら引きちぎった。

 最初はそれを手だと認識出来なかった。見えたのは白い棒(、、、)だったからだ。

 白い棒を武器に使用として、結果的に右手を引きちぎった。爆発を受けて最初からちぎれかかってたんだろう、大した
 何はともあれ、武器を手に入れた。

 構成員どもを見る、今までの事を思い出す。

 攻撃した後、向こうは更に動いて、踏み込んで、抱きついて爆発した。

 なら、動けなくするまで。

 ドドドドド。

 突っ込んでくる構成員どもに全員腕を突き刺した。

 極限まで研ぎ澄ました無駄の無い動き、先に動くカウンター。

 全員の頭を貫き、一撃で吹っ飛ばした。

 中身がぶちまけられて、赤と白のコントラストが大地を彩った。

「なんだと!?」

 ロミオの驚愕する声が聞こえた。

「貴様正気か!?」

「お前よりはな」

「……ふっ。そんなこけおどし、おれ様には通用せん」

 落ち着きを取り戻したロミオ、またパチン、と指を鳴らす。

 更に突っ込んでくる構成員、武器にした右腕で迎撃。

 頭を突き刺した瞬間、さした男の後ろから別の男が抱きついた。

 おれにじゃなく、構成員同士抱きついた。

 結果、二人分の大爆発が起きた。構成員の頭に突き刺さったおれの右腕が吹っ飛んだ。

「これで問題ないだろ」

「くっ……」

 またしても武器を失ったおれ。

 左腕も……と一瞬よぎったけどそれは無理だと気づく。

 ちぎるのはいい、痛みなんて我慢すればいい。

 問題はちぎる為の腕がない。ちぎれたとしても振るう腕がない。

「さあ、これでトドメだ。ジュリエットもろとも消え去れ!」

「くっ」

 どうしよう? どうする? どうしたらいい?

 頭を必死に巡らせた。

 打開する方法、ジュリエットを助ける方法、戦う――方法。

 どくん。

「貴様ら……」

 ちぎれた右腕の断面が大きく脈打った。

「よくも……」

 まるでそこにもう一つの心臓が出来たかのような鼓動。

「小僧を……やってくれたな!」

 光があふれ出す。ちぎれた箇所がまばゆいほどの光を放ち出す。

 光が集まり――腕になった。

 光の腕。

「全員、皆殺しじゃ!」

 遠くで拘束されたヘリンも光になった。

 光になって、バラバラになって、おれの手元に集まってきた。

 ヘリンの光はやがて集まって、腕とは違う別物になった。

 長い、剣のようなものに。

 光の剣。

 光の腕が握り締める、精霊光の剣。

「ヘリン……?」

『皆殺しじゃ、よいな』

「……ああ」

 頷くおれ。一歩、ロミオに向かって足を踏み出す。

「くっ! そんなこけおどしなど!」

 パチン! 構成員が突っ込んできた。

 光の腕を振るう、ほとんど重さを感じない精霊光の剣が構成員の頭を吹っ飛ばす。

 パチン! パチン!

 次々と襲いかかってくるのを、一人ずつ倒していく。

「これならどうだ!」

 三人一緒に飛んできて、一人をおとりにして他の二人が爆発した。

『無駄じゃ』

 精霊光が広がり、構成員を包む。

 光に包まれて、まるで箱の中で爆発して、衝撃は一切外に漏れなかった。

「ば、ばかな……そんなバカな」

 やがて、構成員は一人残らず倒された、残ったロミオが後ずさった。

「ま、待ってくれ! おれ様をやる気か? 分かってるのか? おれ様はラキアの王子。おれ様を殺したら王子殺しになって――」

「関係ないな。王子殺しなんて小さい」

「なっ」

「おれは」

 光の腕を振り上げる、その先にある精霊光の剣が嗤った気がした。

「ヘリン殺しのルーカスだ」

 剣を振り下ろし、ロミオを縦に真っ二つにした。

 ロミオはカッと目を見開き、信じられない、って顔のまま絶命した。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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