挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第三章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

33/75

09.ロミオとジュリエット

「くっ」

 無事なのを確認したのもつかの間、ジュリエットはがれきの上を這いだした。

 おれから離れて行くが、逃げるって感じじゃない。むしろ――。

「みんな無事か! 待っていろ、今助けるぞ」

 必死になってがれきをどかそうとする。

 素手でどかす、掘りだそうとしてる内に、指がすりむけ、爪が剥がれて血が噴き出す。

「部下を助けようとしてるようじゃな」

「おいやめろ! 素手でやるなんで無茶だ!」

「止めるな! 大事な部下なんだ!」

 止めようとするおれの手を払いのけて、また必死にがれきを掘る。

「そういう人間じゃったか」

「……」

「小僧」

「な、なんだ」

「その顔から察するに、あの女の事を助けてやりたいと思ってるようじゃな?」

「……ああ」

 重々しく頷く。

 さっきまで戦ったが、そもそも恨みがあっての事じゃなくて成り行きだ。

 その上崩落した建物のがれきから必死に部下を助けようとするジュリエットの姿をみれば、助けようと思うのは当然のことだ。

「本気か?」

「ああ。しかしこれじゃ」

「よかろう、わしがやる」

「え?」

「わしがやってやると言っているのじゃ。その代わり貸し一じゃぞ?」

「どうするんだ?」

「こうじゃ」

 にやりと口の端をゆがめたかと思えば、次の瞬間、ヘリンの姿が消えた。

 いや消えたんじゃない、神速で動き出したんだ。

「結界がなくなってたのか」

 戒めから解き放たれたヘリンは水を得た魚のようだった。

 神速でおれのまわりを飛び回っている。

 そしておれは気づく、がれきが粉々になっていくのを。

「そうか!」

 ヘリンがやろうとしてることが理解できた。

 おれは再びジュリエットに近づき、肩に手をかけた。

「離せ――」

「どいてろ、おれ達がやる」

「え?」

 驚くジュリエット。次の瞬間、彼女の目の前にあるがれきが砂に変わった。

 かつてヘリンが神殿にやったのと同じ、神速の攻撃を加えてがれきを粉々に……文字通りの粉々にしていった。

「な、なんだこれは……」

 おれが歩いて、その二シャーク以内をヘリンが砂にしていく。まるで触れるもの全て塵にかえていく魔法を使ってるかの様な感覚だ。

「一人目じゃ」

 砂にしたがれきの中から兵士の姿が現われた。

「アモス!」

 ジュリエットが叫ぶ。部下の名前を覚えてるのか。

 その後も発掘を続け、やがて建物のがれきが全部砂にされて、兵士を一人残らず掘り出した。

 更地になったそこに兵士達を寝かせた。

 みた感じかなりの怪我だが。

「まあ、どいつもこいつも命に別状はないのじゃ」

「そうなのか?」

「一月でも療養すれば元通りじゃろ」

「そうか」

 ヘリンの見立てにちょっとだけほっとした。

「あ、あの……」

「うん?」

 振り向く、ジュリエットがおれを見つめている。険しい顔で、まるで睨んでるかのようだ。

 もう一戦やるのか? と思ったその時。

「あ、ありがとう」

「え?」

「部下を助けてくれて、ありがとう。礼をいう」

「ああ……そっちか」

 何を言われたのが一瞬理解できなかった。まさか素直にお礼を言われるなんて思ってもなかったからだ。

「何かお礼をさせて欲しい」

「気にするな、当たり前の事をしただけだ」

「わしは礼が欲しいのじゃ」

「分かってる、貸し一なんだろ? あまり無茶なことは言わないでくれよ」

「ことわる」

 ヘリンは口角を器用に、片方だけ持ち上げた。

「これだけ働いたのじゃ、相応の見返りを要求させてもらうのじゃ。なあに心配するな、小僧がひっくり返っても返せないものは口にしないのじゃ。ちゃーんと、限界ぎりぎり、小僧に出来る事だけをねだるのじゃ」

「それならいいけど」

「いいのか……」

「え?」

 ジュリエットが何かつぶやいた。

「今なんか言ったか?」

「……いや、なんでもない」

 ジュリエットは首をゆっくり振って、それからまっすぐおれを見つめて、真剣過ぎるくらいの顔で言った。

「えっと……ルーカス、といったな」

「ああ」

「貴殿はクスクロ組縁のものではない……のだな」

「違う。むしろ敵だ。クスクロ組が無理矢理やろうとしてることを止めに来た」

「そうだったのか……すまない」

 ジュリエットは頭をさげた。

「早とちりしてしまって、本当に申し訳ない」

「いいよ、気にするな」

「そしてありがとう」

 そういって、もう一度頭を下げた。

 今度は下げたまま、言った。

「部下の命を助けてくれてありがとう。このジュリエット・アン・クムス、受けた恩は決して忘れない」

「真面目じゃな」

 茶化すヘリン。

 それはともかく、これでジュリエットとは敵同士じゃなくなった。

 ほっとした。

 なんというか、あまり彼女と戦いたくないって思う。

 仕方ないから一回は戦ったが、もう戦いたくない、そう思う。

 なんだろう、この気持ち。

「なにか?」

「あっ、いや」

 慌てて首を振った。

 つい見つめてしまって、ジュリエットに不思議そうな顔をされた。

「そ、そうだ。一体どうなってるのかおしえてくれないか? 国家反逆罪ってなんだ? それになんで建物が崩れた」

 ジュリエットにきく。

 そう、状況がまるで分からないのだ。

 一応おれなりに状況を整理した。

 まずおれはクスクロ組を襲撃した。ボスのアーロン・クスクロの部屋にたどりついた瞬間、ジュリエッタが部下を引き連れて突入した。

 ジュリエットはおれをアーロンの仲間だと認識して攻撃をしてきた。

 そうなった理由の一つに、おれが倒したクスクロの構成員が一人残らず消えている。消えてるのは間違いない、ヘリンが建物を砂にして更地にしてもそれっぽい人間は出てきてない。

 そして、ジュリエットのとの戦いが終わりかけたところで建物が崩落した。これはジュリエットにとっても予想外の出来事だ。

 ……うん、分からん、なにが起こってるのかまったく。

「それは――」

「ぜーんぶ、おれ様のワナだよ」

「えっ?」

 声が現われた。綺麗な男の声、綺麗だが何でかきいてるとムカッとする声。

 振り向くと、そこに一人の男がいた。

 仕立てのいい上品な服にマント、そしてあまいマスク。

 みた感じ、どこぞの王子のようだ。

「お前を葬るためになあ! ジュリエット」

「ロミオ! 貴殿性懲りもなく!」

 どうやら二人は顔見知りのようだが。

「仇敵同士のようじゃな」

 楽しげにつぶやくヘリン。

 怒りを剥き出しにするジュリエット、酷薄な笑みを浮かべるロミオ。

 ロミオとジュリエット、気がつくとおれは二人の因縁に深く巻き込まれていた。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
buu1d9ehdyke4j157nc9m8e04phq_15sq_nu_se_
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ