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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第三章

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06.巻き添え

 大通りの路地裏。

 バベットに嫌がらせをした二人をしばらく尾行して、人気のないところで裏路地にそいつらを引きずり込んだ。

 そっちの商売をしてる人間らしく血の気が多くて、恫喝と同時に手も出してくれたのがよかった。抜いて突き刺してくるナイフに先に動くカウンターで叩き落として、ついでにぼこぼこにした。

「なんじゃ、わしの分はないのか」

「あんたに任せたら殺してしまうだろうが」

「別に殺してしまったもかまわんのじゃろ? こういう手合いは。それともなんじゃ?」

 ヘリンはにやりとしなだれかかってきて、おれの胸に指先で字を書くようになぞって、挑発してきた。

「小僧は今流行りの不殺が流儀か?」

「いつの時代の流行りだ」

 ため息が出た。もちろんそんな事はない。

 こういう商売をしてると、殺しが絶対に悪いとは口が裂けても言えない。

 特におれは頭が悪いから、一人殺して結果的に二人助けられるんなら、深く考えないでそっちを選ぶ事が多い。

 だけど、今回は違う。

「こいつらを殺しても状況から変わらない可能性があるだろ? もしかしてあの店をむりやり買おうとしてるの、組の方針かも知れないし」

「まあ、十中八九そうじゃろうな」

「あんた、分かってて殺す殺さないの話をしてたのかよ」

「小僧はからかうと楽しいのじゃ」

「まったくもう……」

 自由なヘリンに呆れた。

「さて、小僧は尋問が得意か? やった事がないのならわしがやるのじゃ」

「おまえこそ得意か?」

 そういうイメージはない。

 ヘリンはどっちかというと、自由気ままに暴れ回ってるほうが得意ってタイプに見える。

「小僧よりはうまく出来ると思うのじゃ」

「そうか、だったら任せる」

 そこまで言うのならヘリンにやらせるか、どうせおれやったことないし。

     ☆

 クスクロ組のアジトに向かう途中。

 ヘリンの拷問はちょっとしたもので、かけられた男はすぐにべらべら喋ってくれた。

 バベットの店を買うのは組の上からの命令で、なにが何でもやらなきゃいけないこと。

 ついでに他にも同じように無理矢理売却を迫ってるところがあって、期限があって、それまでに全部手に入れなきゃならない……という事まで喋ってくれた。

 流石にこれは下っ端をつぶしてどうにかなる様な話じゃない。

 ってことで、おれとヘリンはクスクロ組のアジトにやってきた。

 表に男達がつけてるのと同じエンブレムを掲げている。

 それとは別に属性エンブレムが無属性以外の六種類全部揃ってる。

「全ての人材が揃ってるって事か」

「肝心なのが二つほど足りぬのじゃ」

「片方はともかく」

 苦笑いした。ヘリンの精霊属性はともかく、無属性は多分入りたいといってもはじかれるだろう。

 何しろ戦闘で足手まといもいいどころだから。

「さて、どうしたもんかな」

「うん?」

「パッと思いつく選択肢は二つじゃ。一、正面から突っ込んで向かってくる若造を全員つぶして最奥までたどりつく」

「無理矢理だな。もう一つは?」

 なんか搦め手でもあるのかな。

「わしが建物ごとぶっ壊す」

「もっと無理矢理じゃないか!」

「証拠とかあったらついでに吹き飛ばしかねないのがささやかな難点じゃな」

「それが一番重要だから! というか他にも難点はあるから! とにかくぶっ壊すのは無し」

「じゃあ正面突破じゃな」

「……そうだな」

 ツッコミから冷静になって、頷く。

 まあそれが一番飯野かもな。

 どっちみち最後はドンパチになるし、おれは頭悪いからそっちの方がわかりやすいし。

「それじゃ、行くか」

「うむ」

「建物壊さないようにセーブしてくれよ?」

「ならば小僧に全てお任せするのじゃ」

 ヘリンはそう言って、おれの腰にしがみついてきた。

 傍から見るとまるで娘にしがみつかれた若いパパだ。

「ピンチにならぬ限り何もしないのじゃ」

「……わかった」

 その方がいいのかもしれない。

 と言うわけで――突入。

 正面のドアを開けてはいると、そこは奇妙な空間だった。

 前にすんでたあばら屋が三つくらいすっぽり入りそうな空間なのに、家具とかは一切ない。

 ただの空間、だだっ広い空間。その奥に頑丈そうなドアが一つあるだけ。

 そこに、クスクロ組の構成員が五人いた。

「なんだてめえらは」

 若い男の一人がすごんできた。

「おれは――」

 答えるよりも先に、おれにしがみつくヘリンがひょい、と手をかざした。

 そこから放物線を描いて投げ出される二つの物体。

 ガランガラン、クスクロ組のエンブレム。

「持ってきてたのか」

「この方が手っ取り早いじゃろ」

 にやりと笑うヘリン、頭いいな。

 一方、構成員達は。

「来たか! オヤジに報告だ! 犬が来た、ってな」

「へい!」

 若い男がドアを開けて奥に走った。

 犬が来た? なんの事だ。

 そんな事を深く考える暇もなく、残った四人の男が問答無用に襲いかかってきた。

 まずは……倒してしまおう!

     ☆

 ゴキブリのように次から次へと沸いて出てくる構成員を倒して、建物の中を進んだ。

 今までに入ったことのない建物だった。

 やたらと通路が長くて、曲がりくねってる。

 その通路も細く、大人二人が一いっぺんに通れない程度の細さだ。

 これが、ヘリンには大不評だ。

「まったくへんてこな作りをして、しがみつくのも一苦労じゃ」

 おれの腰にしがみつくって事は、必然的に横幅が広くなる。それがいちいち壁に当たったりして不機嫌になってる。

「終わったら建物ごと粉々にしてやるのじゃ」

「おわったらな」

 ヘリンの粉々は文字通りの粉々だ。

 神速による攻撃攻撃また攻撃で、物体を文字通りの粉にすりつぶすまでやる。

 この時点で建物の運命が見えたようで、おれは心の中で合掌した。

 そうしながら、構成員を倒して更に進む。

     ☆

 やがて、一つの部屋に入った。

 今までの殺風景な細い廊下と違って、豪華な作りの部屋。

 その中に一人の男がいた。

「来たか……」

 第一印象が「豚」な、口の中全部金歯に差し替えられてるのが特徴の中年男だ。

 きっと息がくさい、なるべく近づきたくない。

「残念だったな、もう証拠はここにはない」

「証拠?」

「クムス王国にしては中々早い動きだったが、残念だったな」

「……?」

 ヘリンをみた、こいつは何を言ってるんだ、って感じで。

 ヘリンはおれをつねった、そんなのわしが知ってる訳ないじゃろ、って感じで。

 そりゃそうだ。

「何を言ってるのかわからないが、おれは話し合いにきたんだ」

「話し合い?」

 男が怪訝な顔をする。

「コトゥのジュース屋、あれを無理矢理買いあげようとしてる件だ」

「やはりクムスの犬じゃないか」

 男はふん、とさげすむように鼻をならした。

 どういう事だ?

 話が微妙にずれてる、というかなんか違う話になってる。

「なあヘリン、これって」

「しっ」

 ヘリンが唇に手を当てた。おれの腰にしがみついたまま、入ってきたドアの方を見る。

「どうした」

「来るのじゃ……ひいふうみい……相当いるのじゃ」

「え?」

 直後、ドアから大量の人間がなだれ込んできた。

 構成員じゃない、全員が同じ鎧を纏った騎士達だ。

 って、騎士?

 そいつらがぞろぞろと入ってきて、おれと部屋の主の男を包囲して、武器を向けてくる。

 そして、一拍おくれて、一人の女が入ってきた。

 見た目も、身につけてる鎧も、所作もオーラも。

 それまでに入ってきた騎士達とはまったく違う感じの女。

「クムス王国第一王女兼三等騎士、ジュリエット・アン・クムスだ」

 隣でヘリンが「姫騎士とは珍しいのじゃ」とつぶやいた。

「アーロン・クスクロ、およびこの建物にいるもの達を全員、国家反逆罪で逮捕する」

「ふっ……」

 男……アーロンは侮蔑しきった顔で笑った。

 というか、何? 国家反逆罪って、なに?

 何が起きてるの、ねえ。

「ふむ、そこの姫騎士よ」

「なんだ」

「逮捕って、わしらもか」

「もちろんだ。抗弁はあとできいてやる、安心しろ」

「だ、そうじゃ」

 ヘリンは楽しげな顔でおれに言った。

 ……ええええええええ!
 逮捕されるのか、おれ。

 しかも国家反逆罪で!?
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