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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第三章

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02.自分が選んだ未来

 時はさかのぼって、この日の朝。

 起きたおれは、いつも通り寝床を這い出て、あばら屋の裏で素振りをした。

 毎朝の日課、木刀での素振り。

 途中からそれに昨日戦いの中で覚えた、「楽な動き」を取り入れた。

 あとから考えてみたけど、あの楽な動きがなんで楽なのかって、無駄な動きがないから楽なんだ。

 だから途中からそれを取り入れて素振りをした。

 そして、一万回……。

 集中をとくと、アクリー名物の朝鳥の共鳴の真っ最中だった。

 普通にやってたら共鳴前に終わってたが……あたらしい動きで遅くなったようだ。

 どうしよう、あしたからこれやめるか。

 迷うな。

「……人の子とはつくづく不思議なものじゃな」

「うわっ!」

 いきなり声が聞こえてきて、盛大に、ひっくり返る程びっくりした。

 ヘリンが、真横からつまらなさそうに、頬杖をついた姿勢でおれをみつめてきた。

「へ、へへへヘリン!? どうしたんだお前」

「見ておったのじゃ」

「えええ!? いや別に見てて楽しいもんじゃないだろ」

「うむ、面白くないのじゃ」

「だよなー」

 男が木刀を持って素振りしてるだけの光景だなんて、よっぽどの伊達男かどこぞの王子でもなきゃ絵にならん。

 おれなんかじゃ話にならんよ。

「まったくもって面白くないのじゃ。人の子は短時間でアッという成長をする」

「え?」

「貴様、前半と後半の素振りが違っておったじゃろ」

「あ、ああ。ちょっとやり方を変えてみた。なんか時間が延びた。失敗っぽかったからあしたはやめようかなって――」

「ドアホウ」

 小柄の少女に頭をはたかれた。

「やめることはないのじゃ。あしたもあれでいくのじゃ」

「え? しかし」

「や・る・の・じゃ」

「わ、わかったよ」

 ヘリンの迫力に気圧された。

 仕方ない。

 またコツコツやって、あの動きでも朝鳥の共鳴前に終わるように努力しよう。

 コツコツ努力するのは得意なんだ。うん。

「まったく、人の子は腹が立つことばかりじゃ」

 ヘリンは何故かご機嫌斜めが続いた。

     ☆

 あばら屋の中に戻ると、ビアンカも起きていた。

 万年床をどかして、部屋の中を片付けていた。

「すごい……ピカピカだ」

「おはようございますルーカス様」

 手を止めて、部屋の隅っこ行ってしまうビアンカ。

 ごそごそ何かをしてるのかと思ったら、すぐにコップとタオルを持ってこっちに来た。

 コップを受け取る、よく冷えてる、喉にきーんとくる茶だ。

 タオルはふわっと仕上がってて、汗を拭いてさっぱりした。

「ありがとう」

「いいえ」

「それにしてもビアンカ、掃除、得意だったんだ」

「はい。本当は昨日のうちにやってしまいたかったのですけど、いろいろありましたから」

「すごい、ありがとう」

「恐れ入ります」

「それと悪いな、こんなところに押し込んで」

「いいえ」

 にこりと微笑むビアンカ。

「愛する殿方のためなら、手の肌を荒げるのも女の幸せですわ」

「わしはそんな生き方いやじゃ」

 ヘリンが速攻で反発する。

「真にいい女は巨悪の添える花の事じゃ。富と権力と血と涙を吸い上げて咲き誇るその姿が美しいのじゃ」

「理解はできますわ」

 ん、んん?

 出来るのか?

 というか今の二人は何の話をしてるんだ? なんか比喩が多くてよく分からなかったぞ。

「のう、ビアンカよ」

「はい」

「どっちにしろ、この家とか家財とか、われら三人の生活を維持するのに不十分だとは思わぬか」

「それは、思いますわね」

 ビアンカはおれをちらっと見た。

 ごめんなさい。ああでも金はあるんだ、クリケット討伐の数百万ドーラが。

「まずは最低限揃えようではないか」

「そうですわね。ではルーカス様。申し訳ありませんがお付き合い――」

「まあ待て。ここは一つ、おぬしかわしか、どっちか片方が買い物担当というのはどうじゃ? どうにも意見が食い違ってるし、あやふやなのよりはどっちかに寄せた方がいいじゃろ」

「……そうですわね」

 ビアンカは少し考えて、頷く。

「さあ小僧、貴様がきめるのじゃ」

「え?」

「わたしとヘリンさん、どっちとお買い物に行きますか?」

 なんでそこでおれに選ばせるのか分からないけど……うーん、その二人ならヘリンの方がいざって時の荷物持ちにいいかな。

 ビアンカが山ほどの荷物を持ってるシーンはあまり見たくない。彼女の指は楽器を奏でるのに向いてる。

「じゃあヘリンで」

「うむ、ではいくのじゃ」

「いってらっしゃいませ」

 こうしておれはヘリンと一緒に家をでた。

 ……。

 あの時、まさかあんな風な買い物になるとは、予想だにしなかったのだった。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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