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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第二章

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11.包囲網

「あ!」

 女の驚く声がした。声の方を向くと、そこにエステル嬢の姿があった。

「どうしたエステル嬢、こんなところに――」
「ひぃ」
「ひぃ?」

 手を伸ばすと彼女は怯えた様子で身じろいだ。

「どうしたん?」
「ど、どうしてここに?」
「え?」
「ルカさん……町の方にいたんじゃ……それに、お腹」
「お腹?」
「お腹、穴あいてない……」
「それはこれのことか?」

 ヘリンが口を開き、足元をちょんちょんと指す。念の為に持ってきたおれの死体があった。
 また悲鳴を漏らすエステル嬢、おれもハッとした。
 そうか、おれのゾンビが街に行ってるのか。

「暴れてるのか、あっちのおれは」
「う、うん。最初はそうだったけど、いまみんなとにらみあってる」
「みんな?」
「犠牲がでちゃったから、ルカさんを止められるように招集をかけた人たち」
「街はあれを小僧と認識しているのか?」
「うん、だって同じ顔だし、強いし……でも……こっちが本当のルカさん?」

 おそるおそるって感じでおれの顔をのぞき込む。

「良かったな小僧、危うく濡れ衣を着せられるところじゃったぞ」
「街にも人はいらっしゃいますセルマの仕業だと分かるでしょう」
「セルマ……あっ、ネクロマンサーの」
「そうですわ。今町にいるのは彼女が使役し損ねたゾンビです。る……ルカ様本人ではありません」
「……そか、うんそうだよね」
「納得するのか」
「うん。だってよく考えたら腹に穴あいてるし、様子もすごく変だし」

 そっか。
 まああそこまでわかりやすいとな。

「……エステル嬢、案内してくれ」
「え?」
「おれが、そのゾンビを倒す」

 右拳を力強く握り締めて宣言する。
 できるか分からないが、やるしかない。

     ☆

 街にやってくると、そこは地獄だった。
 まわりに斬られた人間が大量にして、慌ただしく応急手当する人間たちがいる。
 それらはおれの姿をみるとぎょっとして怯えたり、あるいは敵意を剥き出しにしてきた。
 しかしおれの後ろに続くヘリンがおれの死体をぶら下げてるのを見ると、全員はますます驚き、飛びかかってくる人間はいなかった。

 ビアンカの提案でおれの死体をつれて来た。それがあると事情があると理解して進みやすくなるってアドバイスだ。
 現状、彼女が言ったとおりになってる。
 惨劇の足跡を追っていくと、それが見えてきた。

 真ん中に一人男がいて、そのまわりを大量の冒険者が取り囲んでいる。
 ここでも何人が負傷してて、双方にらみあったまま動かない。

「なんで動かないんだ?」
「貴様のほうからうごけんのじゃろ? そして囲んでる連中もよほど痛い目を見たとみえる。下手に近づけんのじゃろ」
「なるほど」
「フォローする、全力でやるのじゃ」
「わかった」

 頷き、包囲の中心に向かって行く。
 ヘリンは死体をもったままついてくる。

「なんだおまえは!」
「同じ顔……?」
「ぶら下がってるのもそうだぞ、どうなってるんだ?」

 説明してる暇はない、こういう時は行動で示した方がはやい。
 おれはおれのゾンビの前に立った。ゾンビは動かない、鉄の剣をもったままじっとして動かない。
 その構えには鉄壁を感じる。桶で水をぶっかけたところで全部打ち落としそうな、そんな雰囲気だ。

「わしからしかけるのじゃ」

 どさっ、って音がして、ヘリンはおれの死体を置いて、ゾンビに飛びかかった。
 カウンターが飛んでくる。ヘリンの攻撃に反応してのカウンターだ。
 さすがおれ、この一瞬でヘリンの攻撃の隙をみぬいてそこを反撃した。

 だが、ここでもおれ。
 構えて防御に徹してるときは鉄壁でも、カウンターを放つときは隙だらけだ。
 おれはじっと見て、先に動くカウンターで反撃。
 木刀が大上段から肩をうった。
 メリメリ、って音がして、骨が砕ける音がした。

 手応えは……ある、奇妙な手応え。
 まだ慣れてない、精霊属性の手応え。
 減衰無しの攻撃がおれのゾンビに取った。

「もっと行くのじゃ」
「ああ!」

 ヘリンがしかけて、ゾンビが反応して、おれがカウンターを叩き込む。
 わかりやすい構図で戦った。
 カウンターに対するカウンターは全部はいった。
 これが人間……例えおれだとしても学習してヘリンじゃないこっちのおれを警戒しただろうが、そこはゾンビとも言うべきか。

 うーあーと呻いて、ヘリンに反応しておれに撃たれる、の繰り返した。
 神速のヘリンが引き出してくれたカウンターチャンスで、わずか十秒で、おれのゾンビを滅多打ちにした。

「こんなモンじゃな」

 ヘリンがゾンビを見下ろす、ゾンビはまだ動けるが、手足がもうバラバラで、芋虫のようにはうことしかできない。

「頭をつぶしてやるのじゃ」
「ああ」

 ヘリンに言われてやろうとしたが、どうしたらいいのか分からない。

「こんな時まで後の先か。まったくもう」

 ヘリンが地面に落ちてる小石を拾って、指ではじいた。
 それがゾンビにあたり、おれに飛んできた。
 とっさにカウンター。小石を払って勢いのまま振り下ろす。
 ぐしゃっ、って感触がして、ゾンビの頭がつぶれて動けなくなった。
 一件落着、かな。

「まだじゃ」
「え?」

 顔を上げる、いつの間にか取り囲まれていた。
 ゾンビを取り囲んでた冒険者が、そのままおれ達にターゲットを変えた。
 全員が武器を構えて、殺気を剥き出しにしている。
 これは……まずいな。

「こざかしいことを、この程度のザコとも皆殺しに五秒とかからんのじゃ」
「頼むから物騒なこと言わないでくれ」
「……ふん、貴様に何があれば遠慮なく暴れるのじゃ」

 ヘリンは腕組みして、そっぽ向いてしまった。
 包囲網が徐々に狭まる。

「とらえろ、かかれ!」

 リーダーっぽい男が号令をかけて、包囲してたのが一斉に飛びかかってきた。
 数は27、順番は――。
 ドドドドドドド――。
 狙いを定めて、全員の手首を打った。
 木刀にしたたかに撃たれた男達は全員武器を取り落とした。
 あるものは怯え、あるものは怒って。
 ……。

「これでは収拾つかぬのじゃ」

 おれまでヘリンと同じ思いになってきた。

「うおおおお!」

 男が一人飛びかかってきた、しかたない気絶させるか。

「待て」

 リーダー格の男が間に割って入った。
 男の攻撃をはじき、おれを見る。

「余計な犠牲を出したくない。話、通じるか?」
「あ、ああ。もちろんだ!」

 まさに渡りに船。
 おれはコクコクと頷き、男の提案に飛びついたのだった。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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