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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第二章

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08.おれより強いおれ

「何をやっている!」
「これだからハイブリの軟弱どもは」
「ブリストルの勇士の姿をとくとみろ!」

 今度は別の連中が襲いかかってきた。さっきの五人と違う意匠の鎧をつけた兵士。
 数は10、扉のまわりの壁をこわして、一斉に踏み込んできた。

「――っ」

 息をすって、歯を食いしばって痛みをこらえて。
 最小限の無駄の無い動きで、先に動くカウンターを放つ。

 ドドドドドド――。

 兵士達の槍を一斉に打ち落とす。
 それらはほぼ同時に地面に落ちて、綺麗に音が重なった。

「えー、なにいまの、しんじらんなーい。ユーくんなんか知ってる」
「はやいだけだ、ただそれだけ。それにみた所こいつ、無属性だぜ」
「えーうそ、無属性? きゃは!」

 女の方、セルマはあざ笑った。

「無属性きもーい、なんでそんなのがいきてんのぉ?」
「……」
「あれだよあれ、それでもぼくは必死に生きてます、ってやつだろ?」
「そっか、カンドウテキ、ってヤツだね」
「そうそう」

 ユージンとセルマ、実力者のカップルは見るからに楽しそうにこっちをあざ笑った。

「でもでもユーくん、これじゃらちがあかないよー。兵士達じゃー、相手にならなさそうだし」
「そういう時のお前だろ?」
「やっていいの? やっちゃっていいの?」
「おーやれやれ」

 ユージンがはやしたてる。セルマはまた「キャハ」と笑って、おれが武器を打ち落とした兵士の背後に近づいた。
 そしておもむろに、腕を突き出す。

「がはっ! なっ……なんで?」
「お前! 何を――くはっ!?」
「気でも狂っ――ぬわあああ!」

 ぽかーんとなった。何を思ったのか、セルマは一緒につれて来た兵士を背後から襲って、次々と持ってる短刀で後ろから刺した。
 ほとんどが一撃で絶命する中、一人だけ息が合って、倒れたあともがく。

「えい!」

 それを上から短刀を脳天に突き立てた。
 容赦も躊躇もない、血に狂った笑み。

「何を……してる」
「いっくよー。リリル、リリル、リリララルー」

 奇妙な、気の抜ける呪文を唱えた。

「ふざけてるのか?」

 と、ヘリンがつぶやく中、異変が起きる。
 ころされて、絶命した兵士が次々と立ち上がった。
 ゆらりとした奇妙な動き、明かりを失った生気のない瞳で。
 次々と、死体が立ち上がってきた!

「ネクロマンサー、ですわね」

 ビアンカがつぶやく。

「そんな事が出来たのか」
「あはっ、このあたしに出来ないことあるわけないでしょー」
「……」
「さて、他のやつらも全部ゾンビに変えちゃうねぇ」

 そう言って、外に向かっていくセルマ。

「来るな!」
「こんなの聞いてないぞ!」
「うわあああ!」

 外にいた兵士達は蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出した。

「なんだこれは!」
「壁? 見えない壁があるぞ」
「どうなってるんだ!」

 兵士達がざわめく中、セルマが。

「ありがとうねえ、ユーくん」

 彼女がそういい、ユージンがにやりと笑った。
 ユージンが何か力を使って、兵士達を逃げられないようにしたのか。

「くっ」

 セルマを止めようとした」

「そいつらをあそんでて」

 おれの前にゾンビが立ちふさがった。
 セルマに殺されて、操り人形になった元兵士達。
 数は十。そいつらはうー、あーと呻きながら襲ってきた。

 木刀を握り直し、全員の腕、計二十箇所をまとめて先に動くカウンターをたたきつ
ける。
 ゾンビ達は一瞬よろめいたが、すぐに体勢を立て直して再び襲ってきた。

「何をしてるのじゃ!」

 ヘリンが飛んできて、兵士ゾンビの一体を縦に真っ二つにした。

「こういう手合いは容赦するな! どうせもう死んでるのじゃ!」
「し、しかし!」
「ええい、同情するなら助かる奴らから助けろ」
「――分かった!」

 ヘリンの言うとおりだ、いまも外でセルマが暴挙を働いてる。
 目の前の三体を一気に打ち払って進む。

「おっと、いかせねえよ?」

 ユージンが立ちふさがった。
 手を突き出して攻撃をしてくる。

 見えた、風の槍っぽいのが三本。
 全部おれを狙ってる、着順は左右真ん中の順番。
 木刀を振って、左右真ん中の順に撃ち合った。
 無属性特有の減衰する手応えとともに、槍を吹き飛ばす。

「ひゅー、やっぱりやるねえ。もしかして無属性で地上最強? おっさん」
「当然じゃ、このわしを殺したほどの男じゃからな」

 後ろから聞こえてくるヘリンの声、何故か威張ってるように聞こえた。

「そこをどけ」
「どくわけねえだろおっさん。それよりおっさん、後ろやばそうだぜ?」
「えっ」

 振り向く、ゾンビがヘリンを襲っていた。ヘリンは後ずさってる――ギリギリ二シャーク外に出てしまってる。
 慌てて引き返してヘリンを助けた。

「大丈夫か」
「大丈夫じゃ!」

 ……どうする。
 ヘリンをおいていけない。
 おれから離れるとヘリンは普通の幼女と同じになってしまう。

「案ずるな」
「へっ?」
「こうすればいいのじゃ!」

 ヘリンはおれの首根っこをつかんで飛び出した。まるで猫をつかむかのように。
 神速で一気にユージンを飛び越えて外に出た。

「な、こうすれば良いじゃろ?」
「な、なるほど。おれを持ち運べばいいのか」
「そういうことじゃ」

 盲点だったなそれは。

 じゃなくて、いまはセルマだ!
 あわててまわりを見る。
 数十人はいる兵士が全員倒れていた。
 そして家に近い、先に殺されたであろう兵士から次々と立ち上がってくる。

「遅かったか」
「そうじゃなこうなったらもう全員倒すのじゃ」
「……わかった」

 次々と襲いかかってくる兵士ゾンビ。それに次々とカウンターを叩き込んでいく。

「手首とかあまいことをするな、急所を狙うのじゃ!」

 ヘリンに叱られた。人間を相手にするときのクセで、とりあえず武器を持てないように攻撃していた。
 ゾンビ相手だと、それをしてもひるまず更に襲ってくる事がある。

 ヘリンに叱られて、深呼吸してやり方を変えた。
 先に動くカウンターなのは構わない、しかし手首とか方とか、関節じゃなくて、頭とか心臓とかを狙うことにした。
 脳天をたたき割って、心臓を一突き。
 それでゾンビともを倒していく。

「――っ!」

 反撃は喰らわなかった。ゾンビは弱かった。
 正確に言えばもとの人間よりもちょっと強い程度だが、何とか倒すことは出来た。
 それよりも硬いのが問題だった。特に頭を木刀でたたき割ろうとすると、その反動で右腕の縫合したばかりのところから血が吹き出る。
 ゾンビを全部倒した頃には、右腕が血まみれで、感覚がなくなっていた。

「これで全部か」
「そのようじゃな……まて、あの女はどこじゃ」
「え? そういえば」

 まわりをきょろきょろ見回して探す。
 文字通り屍の山、だがセルマの姿はない。

「きゃあああ!」

 悲鳴が聞こえる、家の裏からだ。

「行くぞ」

 そう言って、またおれを首をつかんでかけ出すヘリン。
 一瞬で家の裏にやってきた。
 そこで見たのは――予想外な光景。
 セルマが、おれの(、、、)ゾンビに剣で貫かれて――死んでいく光景を。
 そういえば、おれは自分の死体をここに放置していた!

「もしや……大ピンチではないのか? これは」

 おれのゾンビをみて、ヘリンは苦虫をかみつぶした様な顔をした。
 ……ゾンビにすると確か、もとよりちょっと強くなるんだっけ。
 おれより強いおれ……まずい、ピンチだ。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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