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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第二章

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07.三つ巴

「ねえねえユーくん、あれがぁ、そうなんじゃないのぉ?」
「どれどれ、お-、あのメスガキか」

 室内をきょろきょろして、ビアンカ越しにヘリンを見つけるカップルの二人。

「なんじゃ、あの脳の軽そうなつがい(、、、)は」

 嫌悪感丸出しのヘリン。

「ユージン・マッカンと、セルマ・ミルゥだ」
「貴様……付き合う相手は慎重に選んだ方が良いのじゃ」

 呆れるヘリン、どうやらアレ(、、)と友達だと思われてしまったようだ。
 そうじゃない。友達なんかじゃない。むしろ今まで雲の上で接点のなかった二人だ。

 アクリーきっての実力者コンビ。両方とも風属性で圧倒的な攻撃力を誇ってる。
 五年くらい前にクロケット討伐の常連だったが、「弱すぎてつまんなーい」ってセルマが発言して以来、討伐から遠ざかってる。

 それでも実力は折り紙付き、何か大事件で力がいるときに大抵は現場にかり出される二人だ。
 接点がなさ過ぎて思い出すまでに時間がかかったし、顔もそもそも知らないが。

「ねえユーくん、本当にあれ、ヤバイやつなのかなぁ」
「へーきへーき、おれとセルのコンビならどんな相手だってちょちょいのちょいだって」
「きゃは! それもそーだねぇ」

 ……こんなノリのカップル、現場にかり出される程の実力者なら間違いなくあの二人だろ。

「おいそこのお前」
「お、おれ?」
「そうお前。そのヘリンっぽいのを連れてこい」
「なんでおれが……」
「バカかお前、こんなきたねえところに入りたくないからに決まってるだろうが」
「一歩でも踏み込んだらばっちいのがついて病気になりそぉ」
「あー」

 それは否定しない。
 正直おれも悪いと思ってる。こんな汚いあばら屋にビアンカを連れ込むのは。
 金はある(クロケット討伐分)んだから、近いうちに引っ越しをしないとなって思ってたくらいだ。
 だから言われて思わず頷きかけたが、横にいるヘリンが烈火の如く怒りだした。

「貴様ら、言いたい放題じゃな」
「だって実際汚いしぃ」
「それになんか変な匂いするしよ」
「ルーカス様の匂いです」「小僧の匂いのなにが悪い!」

 ビアンカとヘリンが同時に大声を出した。
 反論してから見つめあう二人。ビアンカはにこりとして、ヘリンは顔を真っ赤にした。

「そんなのどうでもいいからさあ、おまえ、おれたちと一緒に来いよ」
「断るのじゃ」
「そう? じゃあ力づくでつれて行くよ?」
「きゃあ、ユーくんかっこいい」
「ふふん、見てろ見てろ」

 ユージンが前髪を掻き上げる。何かやろうとしてるのか。
 それに反応したのがヘリンだった。
 殺気が渦巻く、部屋の中の温度が一気に十度近く下がったような気がした。
 まずい、このままだとヘリンこいつらを殺してしまう。なんとか止めないと。

 と、思う暇もなく、殺気がゆらり、と動く気配がした。
 慌てて木刀を握った。
 ――っ!
 右腕に痛みが走る。縫い付けられたばかりのところが痛む。
 ほとんど動かせない、だけど右腕じゃないとヘリンをまともに止められない。

 ヘリンにこいつらを殺させる訳にはいかない。
 そんな事になったら話がさらにややっこしくなってしまう。
 おれはヘリンを守りたい、守ると誓った。

 だから――ここは止める。
 止める? どうやって?
 負傷した腕でどうやって?

 動きすぎると傷口が開く――から動きを最小限に。シャープに、無駄な動きを省く。
 撃ち合っても傷口が開く。撃ち合わないように勢いつく前に先回りして止める。

 シャープに、先に。
 無駄な動きを全部無くす、攻撃までの動作を出来るだけ少なく。
 ヘリンを凝視する、彼女の視線が揺らぐ――。

 先に動くカウンター(、、、、、、、、、)をはなった。
 できる限り痛まない、最小限の動きで木刀をヘリンが動き出す先に置いておく。
 ヘリンがそれにぶつかった、出鼻をくじかれて動きがとまった。

「何をするのじゃ!」
「落ち着いてくれ」
「止めるな! ええいそこをどけ、そいつらを殺せん!」
「殺させないためにしてるんだ」
「ええい、貴様、わしとそいつらのどっちが大事なんじゃ!」

 ヘリンは大声で訳のわからないことをわめく。この間、彼女はそこから一歩も動いてない。
 動こうとした瞬間に、おれが先回りして木刀をおいてるからだ。
 もちろん突っ込む事も出来るが、が木刀の先端は彼女の隙と急所を常に指してる。
 強引に突破すればいかなヘリンとはいえ怪我は免れない。

 だから彼女は動けなかった、びくっ、びくっと身じろぐだけで、足は地面に釘付けになったかのようだ。

「ルーカス様……覚醒を……?」

 ビアンカが何かつぶやいたが、脳がそれを理解する程の余裕はなかった。
 傍から見ればヘリンは釘付けにされて間抜けが動きをしてるが、本当にもうギリギリだ。ちょっとでも動き出して加速がつけばもう止められない。
 おれにできるのは、動き出すまえに封殺するのが精一杯。

「何をしてる! さっさととらえろ!」

 そんなおれの努力をあざ笑うかのように怒鳴り声が聞こえた。
 直後、兵士が突入してきた。
 ちらっと見る、ざっと五人。
 ユージンカップルもビアンカも押しのけて、槍を構えて突進してくる。

「くっ!」

 ドドドドド。
 先にやらないとまずい事になる。先に動くカウンター。
 木刀の突き五連、最低限の動きで向かってくる兵士達の手首を打った。
 槍を取り落とし、手首を押さえてうめきを上げる。

「はあああああ!」

 更に次の瞬間ヘリンが動いた。
 おれの拘束から解き放たれ、神速で動き出してユージンに向かって飛んで行く。

「やめろ!」

 神速を先回りするカウンター、ヘリンののど元に木刀の先端を突きつける。
 ヘリンは木刀を蹴って止った。方向転換で回り込もうとしたから先にカウンターを放ってヘリンを押し返した。
 兵士五人、そしてヘリン。
 一秒にも満たない連撃で双方にわりこんでそれぞれ押し戻した結果。

「ひゅー」

 ユージンの称賛する口笛が聞こえて、おれの右腕から血が大量に噴き出したのだった。
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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