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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第二章

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03.好感度システム

 とりあえずおれの死体をどかそう。

 じいさんの体の時と同じで、目をかっぴらいたまま死んでる。
 壮絶な死に顔だ。自分の顔だから割と大丈夫だけど、長く見てて気持ちのいいものでもない。
 ビアンカもいるし、ますますこんなのおいとけない。

 自分の死体を担ぎ上げて、いったん家の外に出た。
 家の裏、ジジイのおれの死体を隠したのと同じそこに死体を押し込んで、汚れたボロ布をかける。

 うーん。なんかやばいな。
 布をかけたり、取っ払ったりしてみた。
 どっちが見た目的にやばくないのか、色々試してみる。

「そんなの、死体の時点でどっちも一緒じゃ」
「うわ!」

 いきなり後ろから話しかけられて、飛び上がる程びっくりした。
 振り向く、服を着たヘリンが立っていた。
 腰に片手をあてた偉そうなポーズはそのまま、服を着せられてる。
 体中についた血は綺麗に拭き取られていた。

「その服は?」
「あの女に無理矢理着せられたのじゃ」
「ビアンカに? うーん」

 ヘリンをまじまじ見つめた。
 この服、どっかで見たことがある。
 どこだろ……あっ。

「マリアが着てたのと同じ服か」
「マリア?」
「ビアンカの世話役の子だ。同じものだけど、ちょっと小さいな。もうちょっと子供の頃に着てた物なのか、それともビアンカが着てたものなのか」
「ふーん」

 ヘリンは興味なさげに鼻を鳴らした。

「それよりも、これはどういう事じゃ?」
「え?」
「なんで貴様と同じ顔の死体があるのじゃ。それに……わしも貴様も、この腹から出てきたのか?」
「覚えてないのか?」
「ない。気づいたら貴様に押し倒されておったわ」
「べ、別に押し倒した訳じゃないぞ! ビアンカだと思ったんだ。この家にはおれ以外ビアンカしかいなかったはずだから」
「そんなのはどうでもよい」

 また一刀両断して、目で問い詰めてくる。
 一体どういう事なのか、と。

「分からない、強いていえば昨日……」

 言いかけて、恥ずかしくなった。
 昨日ビアンカと初夜を迎えたのが理由だと推測出来るんだが、口に出すのは恥ずかしい。
 それでヘリンは察したらしい。

「あの女と契ったのか」
「あ、ああ」
「バカにするでない、それでなんで貴様が孕む。孕むのならあの女であろうが」
「そんなのおれも知らないよ。そうなったんだから」
「……」

 ヘリンはおれをにらみつけてきた。
 こういう目は苦手だ、まっすぐ見つめてきて、心の底まで見透かそうとしてくる目だ。

「ふん、嘘はついてないようじゃな」
「つかないよ、うそなんて」

 知ってるか? 嘘をつくのも才能がいるんだぜ?
 そんな高度で器用な真似がおれに出来るわけないだろ。

「……ふん。にしても忌々しい」
「なんで?」
「わしも貴様も、貴様の腹から出てきた。いわばはらから(、、、、)じゃろうが」
「はらから?」
「……『きょうだい』という意味じゃおろか者が」
「わ、わるい」

 怒られた。もっと勉強をしとくべきなのかな。

「わしは貴様の近くでなければ力をふるえん。だのに何故貴様はそうではないのじゃ。力をふるえるのであろう?」
「あ、ああ」

 ヘリンとおれは二シャークくらい離れてる。
 足元に落ちてる木の枝を拾って、構えてみた。
 ちょうどハエが一匹とんできた。

 じっと見つめて、そいつがおれの腕に止ろうとした時。
 見計らって、木の枝でハエを突き刺した。

 うん、今まで通りだ。
 動いて、向かってくるものならとらえる事ができる。

「おれは今まで通りみたいだ」
「それが不公平なのじゃ。同じ腹から生まれたのなら等しく近くにいなければ力をふるえんのが道理ではないか。まったくもって腹立たしいわ!」

 地団駄を踏むほど怒るヘリン。

「確かにそうだ」
「え?」
「その発想はなかったけど、確かにその通りだよな。同じおれから生まれて、こっちだけ何も影響を受けないのは不公平だよな。というか……」
「な、なんじゃ」

 たじろぐヘリン。
 ものすごく悪い気がしてきた。

 だって今の状況、彼女に不遇を一方的に強いてる訳だ。
 おれは彼女から離れても今まで通り動ける、でも彼女はおれから離れたら途端にただの女の子になってしまう。
 一方的な不遇を強いられるヘリン。
 それは……いやだった。

「というか、なんじゃ?」
「いや。なんとかしておれから離れても力を出せるようにならないかな、って思っただけ。呪いを解いたり、修行で範囲が広がったりするのって出来るのかなって」
「……貴様正気か? わしらは敵同士なのじゃぞ」
「え?」
「え?」

 いまの「え?」ってどういう意味だ?
 ともったら向こうも同じような顔をしている。
 どういうことだ?

 分からない。

「……とにかく、おれはそういう不条理なのがきらいなんだ」
「貴様……阿呆か?」
「アホなのは否定しない。才能ないし頭も悪いから」
「そうじゃないわ。わしは敵なのじゃぞ、命を狙ったのじゃぞ。それを……」
「それを?」

 首をかしげて聞き返す。
 それを……なんだ?
 ヘリンはしばらくおれを睨んだかと思いきや、なぜか顔を背けてしまった。

「どうした」
「なんでもないわおろか者!」

 なぜか怒られた。耳の付け根まで真っ赤になってる――ド怒り?
 なんか地雷踏んだのか? おれ。
 うーん……わからん。

「なんか気に障った事をいったのなら謝る」
「なからなんでもないわ!」

 ヘリンは走り出した。
 勘違いだけど、なんか「逃げ出してる」ように見えた。
 それはおれの勘違いだろうからいいんだけど――。

「待てヘリン! そこは肥だめが!」

 ヘリンが足を踏み出した先には肥だめがある。
 この安いボロ家のトイレになってる肥だめだ。
 中には当然、おれのウンコとがシッコが大量に入ってる。
 距離があって手が届かない。

 落ちる、と思った次の瞬間。

「むっ!」

 ヘリンは空気を蹴って(、、、、、、)後ろに飛んだ。
 肥だめに落ちる直前に後ろに飛んだのだ。
 それで落ちずにすんだが――代わりにおれの方に飛んできた。

 慌てて受け止め、小さな体をキャッチする。
 ……軽い、それに柔らかい。
 子供の体そのままだな。
 こんなのが恐怖の存在だなんて、世の中わからない事だらけだ。

「……ておる」
「え?」
「いつまで抱いておると言ってるのじゃ! いいかげん離さんか!」
「わ、わるい」

 慌ててヘリンを離してやった。
 また顔が真っ赤になってる。よほど怒ってるみたいだ。

「にしても……柔らかい。女の子だ」
「なっ――き、貴様と言うやつは……八つ裂きにしてくれる!」

 ヘリンは襲いかかってきた。一シャーク以内に入ってるから本来の力を発揮したものすごい速さだ。
 おれは持ってる木の枝を構えて何とか抵抗しようとしたが。

「あれ?」

 ふとある事にきづいた。キョトンとなった。
 ヘリンの手が止った。指先を揃えて突き出したのがおれの目の前でとまった。

「なんじゃ」
「いや……あそこ」

 おれは肥だめをさした。

「あれがどうしたのじゃ? 落とした方がいいと今更後悔したか」
「いやそうじゃなくて。おれはさっきからここから動いてなくて……でもあの肥だめは二シャーク離れてて」
「え?」
「なのにお前動けたよな」
「……本当じゃ」

 攻撃の手を下ろして、おれと肥だめを交互に見比べるヘリン。

「……試してみるか」
「試す?」
「見ておれ」

 ヘリンは動いた。
 神速のヘリンと呼ばれるにふさわしい速度でおれのまわりをまわりはじめた。
 一周、二周、三周。
 徐々に範囲を広げていく……螺旋の軌道を描いて回った。

「ふぎゃ!」

 やがて、力が急に途切れて地面に突っ込んでいった。
 半径二シャーク。
 そこから出た瞬間に力が切れて、転んでしまったのだ。

「うぅ……痛いのじゃ……」
「だ、大丈夫か!」
「さわるなあ! 貴様が悪いのじゃぞ」
「え、えええええ?」

 おれが悪いのか? なんで?
 わるい……のかなあ。

「ご、ごめん」
「謝るなあ!」

 おれを睨むヘリン、また涙目になった。
 あやまりそうになるのをこらえて、状況を分析する。

「なんでかわからないけど、距離が伸びてるよな」
「……うむ。伸びておるのじゃ」
「なんでだ?」
「わしが知るか!」
「わかりますわ」

 よこからビアンカが会話に割り込んできた。
 部屋から出てきて、穏やかな微笑みのままいう。

「分かるのかビアンカ」
「ええ、おそらくは。さっきからずっと見てましたので」
「なんでなんだ?」
「そうですわね……」

 ビアンカは少し考えて、言った。

「ルーカス様。お買い物をお願いできますか?」
「え? ああいいけど」

 なんだ? いきなり。

「それで、彼女と手をつないでいってください」
「えええ?」

 本当になんなんだ? いきなり。
 手をつないで買い物に行くって、どんな意味があるんだ?
 ヘリンを見ると、彼女は何故か顔を赤くしてそっぽ向いてる。
 一方のビアンカはそれを見て「やっぱりそうですのね」とつぶやく。

 本当に、なにがどうなってるんだ?
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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