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ニューゲームにチートはいらない! 作者:三木なずな

第二章

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01.初夜あけて、朝

 家に戻ってきた。

 月一万ドーラで借りてる、アクリーの外れにボロくて安い家。
 そこにビアンカを連れて戻ってきた。
 ここまでお姫様だっこでつれて来たビアンカを下ろす。

 急激に恥ずかしくなった。
 昨日までアクリーで三番目の娼婦だったビアンカ。
 彼女が過ごしてきたのはきらびやかな生活だった。
 娼館が与えた高級そうな私室といい、貴族のボンボンが五千万ドーラを持ってきた身請けすると言い。

 ビアンカは直前まできらびやかな世界にいた。
 それをおれがこんなところにつれて来た。
 不遇だったおれが何十年も借りて住んでるボロ家。
 万年床にすきま風が吹く、「ボロい」という言葉がまだ控えめになるくらいのボロ家。

「す、すまない。こんなところで」
「……」
「あなたを身請けするので頭がいっぱいだった、その先の事をまったく考えてなかった。バカだよなおれ、考えてなきゃいけない事だったんだよな。こんなところにあなたを連れ込むなんて」
「……」
「本当にすまない。明日にでも新しい部屋を借りてくる。クロケット討伐の分の金はあるんだから」
「……」

 必死になって、早口でいい訳を続けるおれ。
 ふとビアンカが反応してない事に気づく。
 おれのいい訳に、相づちさえもうってない。
 どうしたんだろうと思ってビアンカを見る。

 息を飲んだ。

 ビアンカは……まっすぐおれを見つめていた。
 ビックリするくらいおれを見つめていた。

「ビアン、カ?」
「……ルーカス様」
「なに……んぐ」

 キスをされた。
 ビアンカは近づいてきたかと思えば、つま先立ちでキスをしてきた。
 触れるだけのキスだが、心臓が一瞬でフルバーストになる。

「やっぱり、唇が熱い」
「あ、ああ」
「ルーカス様。わたくしをルーカス様のものにしてください。ルーカス様だけのものに」

 だけ、ってところに力がこもった気がした。
 なんでそこを強調するのか……数十年間不遇生活を強いられる程のバカなおれも理解できた。

 おれはビアンカを押し倒した。
 毎日寝てる万年床の上に。
 これから――彼女との初夜になる。

「ごめん、あなたとのはじめて(、、、、)がこんなところで」
「ルーカス様の匂いがします」

 ビアンカは微笑んだ。
 嘘じゃなく、心底満足そうに。

「上も、下も。ルーカス様に挟まれてるかのよう……」
「……ビアンカ!」

 胸に火がついた。
 何かが生まれそうな――新たな人生を予感させる。
 そんな熱い夜だった。

     ☆

 翌朝、いつもの習慣で朝日が昇る前に目が覚めた。
 体を起こして、伸びをする。直後にアクリー名物の朝鳥がけたたましく共鳴をはじめた。

 いつもの万年床、しかし隣にぬくもりを感じる。
 大事な人、これから一生かけて守っていかなきゃいけない人。
 ビアンカ。

 ……ゆ、許されるよな。

 その、なんだ。
 キ、キスを。

 おはようのキスというのをしても……許されるよな。
 うん、許されるはずだ。
 というかしよう。

 おれは隣にいる彼女に覆い被さって、唇を押しつけた。
 勢い余って歯がぶつかった。
 痛い、それに……唇が冷たい。それに感触が。

「おはようございます、ルーカス様」

 頭上から声が聞こえてきた。
 ビアンカの声だ。
 ……え? 頭上から? ビアンカの声が?

 なんで? じゃあいまおれがキスしてるのは?
 唇を離して、体をおこして相手を見る。
 そこに幼女がいて、おれをにらみつけてきた。

 なじみの顔だ。

「……ヘリン」

 そう、幼女はあの精霊ヘリンとまったく同じ顔だった。
 ヘリンは怒りの顔でおれをにらみつけてる。
 真っ裸で、何故か血まみれだ。

「な、なんで……」
「ルーカス様」
「ビアンカ!? いやこれは――えっ!?」

 いい訳しよう(なんのいい訳なのか自分でもわからないが)とビアンカの方を振り向いたら、驚きで固まってしまった。

 そこにビアンカがいて、おれが(、、、)いた。
 昨日までのおれが、目を見開かせて死んでいる。
 なぜ死んでるのかって? 腹が内側から食い破られてるからさ。

 そしてよくたらいまのおれも、ヘリンと同じように全身血まみれだ。
 ビアンカとの初夜は、新しい自分と……敵だった精霊を産む結果になった。

 ……おれ、頭は正常か?
書籍版発売中です、こちらもよろしくお願いいたします。
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