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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
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ゾンビ8

 予想外のことがおきました。

 何というか生きている人間に遭遇しました。

 プラス、問答無用で殺されかけました。

「化け物めぇぇぇーーーーーーーーーー!」

 殺意は満タン。

 いつも通り街並みを散歩していた俺に降り注いだのは斧の刃でした。

 ってアホか! 

 地面を蹴って回避した上で、手の甲を使って刃を受け流したよ。同時に受け流された刃が石畳を叩いて破片を散らす。

 戦闘なんて経験のない俺だけど目の前の暴力には対応できました!

 そう思いながらのバックステップの後に広がるのは無数の人間の姿。

 そう、人間だ。ゾンビじゃない。生きた人間達の姿だった。

 何人いるかなんて良くわからないけど、誰もが武器らしきものを持って手近のゾンビを薙ぎ倒している。

 それ自体はまったく構わないんだけど、問題は目の前の斧を持った少女だ。

「このまま突破して外に出るわよ!」


 勇者かお前は!


 先導する姿に思わず言いかけたが声はでない。

 とはいえ、久しぶりに見る生きた人間たちは、各々が持った武器を使って的確にゾンビたちを排除していく。わかりやすく言うと頭を破壊して道を開いている。

 まあ、ゾンビの弱点は頭だと俺も知っている。いくらか実験したしね。

 とはいえ、ここから城門までの距離は結構ある。プラス、城門を空ける手段があるのだろうか?

 外部へのゾンビ流出問題があったから俺も手を着けていなかったんだけど、勝算があるから行動しているのだろうか? 場合によってはこの街から外にゾンビが大量に流出してしまう。

 俺はまったく構わないんだけど、それは世界的に不味くないか?


 そう思った矢先に鼻先を掠める刃。

 それを回避した視線の先で少女が驚愕の表情を浮かべている。


「おかしなのが混ざってる!」


 酷い言われようだ。でも、確かに普通のゾンビとは違うかも。それに、一方的に殺される理由はないしね。死んでるけど・・・


 続くのはやはり斧の斬撃だ。下から這い上がるような一撃をバックステップでかわす。そして、思う。


 完全な素人だな。


 俺もプロではないけど、明らかに雑な動きだった。普通のゾンビの頭を割るには十分かもしれないけど、普通の人間程度に動けるようになった俺には届かない動きだ。といっても囲まれたらどうしようもないけどね。

 そして、囲まれたらどうしようもないのは彼女達のほうだった。


「早く城門へ!」


 いや、無理でしょ。

 だって、最後列の人たち引きずり倒されてるし。どんどん、噛まれているし。

 その時点で人間の人生が終わります。感染してゾンビになってしまいます。それを助けようとして二次被害まで生んでいるし。

 うん、これは撤退するか諦めるしかないでしょ。

 でも、目の前の女の子はあきらめていないようだ。

 無骨なショートアックスを両手で握りながら歯を食いしばっている。でも、視線で人は殺せないし俺は殺されるつもりもない。

 向こうからしたら俺はゾンビだ。殺す対象もしくは排除対象でしかないよね。

 だからこそ、敵対する俺達は争い、生き残った人間たちの悲鳴が上がり続けて後方は全滅していく。

 少女もわかっている。これから先の未来はバッドエンドだと。

 でも、諦めない。だから、俺に斧を振るってくる。

 バックステップ。

 当たるはずがない。


「なんでよ!」


 いやだって、死にたくないし。

 そう思った直後、彼女の肩に這い寄ったゾンビの腕が届いた。


「え・・・」


 引きずり倒される。直前に見た表情は絶望に染まっていた。これから自分に訪れる苦痛とその先にある終焉を理解していた。痛みと続くリビングデットへの結末。それを知った上で足掻こうとして・・・諦めた顔。


 うん。


 助けよう。


 そう思った。





 サッカーボールキック。

 わかりやすく言うとそれだ。

 斧を持った少女らしき存在を後ろから覆いかぶさる。そんな存在の頭を蹴り飛ばしました。


 衝撃。


 足の甲が砕けたかな?

 でも、足自体は弾け飛んでない。なら、すぐに治るでしょ。

 というわけで群がってくるゾンビたちには拳を振るう。

 まずは目の前。腰を回しながら右腕を射出。指を上に向けながら捻り込んだ正拳突きだ。

 それだけで覆いかぶさろうとしていたゾンビの上半身が弾け飛ぶ。

 でも、それだけじゃない。左右からもゾンビは来る。というか逃げ場なんてないし、目の前の少女の仲間は全て食い尽くされるか悲鳴を上げる存在になっていた。

 まあ、気を取り直して周囲を確認。

 やっぱり、生きた人間に群がってくるようだね。

 俺は少女めがけて群がってくるゾンビを押しのけながら・・・ふっ飛ばしながら、うずくまったままの少女を救い上げる。

「なっ?!」


「あーうー」


 安心させてあげたいけど言葉を言うことができません!

 いつかできる時までのご愛嬌ということで!


 というか生きてる人間なんて救って俺はどうしたいのだろう?


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