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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
68/75

ゾンビ68

 面白い。

 素直にそう思った。

 なにが面白いときかれれば簡潔だ。

 なんで人間が熊と戦うんだ? なんで人間が生き延びているんだ? なんでこんな世界に希望を抱いているんだ?

 失礼かもしれないけど笑いしか出てこない。

 こんな終わった世界でなんで絶望しないのだろう? なんで死を選ばないのだろう?

 まあ、それを選んだところで終わるだけなのだけれど、生きた人間がこの先の生存を望むのは地獄への片道切符をもらうのと変らないことなのにね。

 でも、彼女は選んでしまった。

 自分は死にたくないという最悪の未来を選んでしまった。

 私は知っている。

 マリス・アンドロビッチ。

 君は死ぬよ。

 この世界はそういう風に決まっている。最初からスタートが決まっていて、ラストシーズンまで筋書きが変らない。

 でも、その行間には様々なストーリーがひしめいている。

 そのストーリーの中で君を含めてどんなストーリーを見せてくれるのだろう? 結末は決まっていても、幕間の物語は閲覧者からしたら喜悦だ。だからこそ、踊って欲しい。楽しんで欲しい。苦しんで欲しい。

 嘆いて苦しんで、後悔の末に終わって欲しい。

 それだけが私の望みなんだよね。

 ハッピーエンドだって好きなんだよ? でも、こんな世界でハッピーエンドなんてありえない。死体に埋め尽くされた世界に幸せなんてあるのかな?

 無いよね? なら、苦しみと悔恨に満ちた結末を私は見たい。

 そんなものを見たい私を悪趣味という奴もいるけれど、血と肉と臓物に塗れた世界の結末は決して覆らない。今君がそこにある現実が奇跡なんだよ。

 だから、ここから先は落ちていくだけ。堕ちていくだけなんだよ。

 でも、教えてあげないよ。

 本当の絶望というものは突きつけられた時にわかるものなのだから。

 そして、突きつけられた時に教えてください。


 ネエ、イマドンナキモチ?


 ってね。

 殺してくださいっていうのかな?

 それとも許してくださいかな?

 何でもいいんだよ。

 私はどんな言葉でも楽しいと思うから。

 今までもてあそんできた人形達の言葉はなんだって退屈しなかった。

 絶頂は少なかったけど、興奮する機会は多かったんだ。

 だから、あのイレギュラー達は別にしても、ビッチちゃんは私を楽しませて………


error


 なんだ?!

 何が起こった?!

 私に干渉する権限? そんなものは存在しない。なのに、私の脳内に届くのは無数の警告とエラー表示。ウインドゥが生まれる端から潰していくけど収まらない。

 なんだこれは?

 私に対しては不干渉のはずだ。なのに、なんでシステムが介入してくる?!


『言葉を取り繕うことすらできなくなったのかよ?』


 っ!

 お前は!


『おいおい神様、油断しすぎだろ? そもそも、こっちでテメェが勝利したわけでもねぇんだぜ? 娯楽に目線を向けすぎだろ?』


 勇者を魔王に堕として、亜人と引き離して、魔王を消し去って、NPCのあなたを人間に戻してあげたのにね。


 表情はそのままに唇を噛み、


「テメェは俺が殺す」


 精神世界のはずなのに肉声が聞こえた。そして、それはどこまでも重みを伴っていた。

 だからこそ、私は自然と浮かんだ笑みを虚空に向けながら言葉をつむぐ。そして、イレギュラーに対しての歓喜を向けて。


 良いよ。楽しいね。

 あんなに絶望したあなたがまた私に向かってくるのか。

 そして、また絶望したいの?

 絶望の果てに自分が死にたくても死ねない地獄の果てに向かいたいの?

 それをあなたは知っているのに。


 肉を潰されても絶望しなかったのに、知り合いの一人を惨殺されただけて泣き叫んだあなたが抵抗するんだ。

 ねぇ………


「テメェを殺す」


 意思だけで殺される。

 そういう意味での圧迫感だった。当然死なないけど、これ以上の接触は危険。心底そう思わされた。

 だから、これ以上引っ張られる前に、


「テメェ失敗してるぞ」


 なにが? とは問わなかった。

 しかし、一方的に答えが来る。


「神様さ、テメェは人に殺される」


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