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異世界オブ・ジ・エンド  作者: 神谷 秀一
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ゾンビ62

 というわけで熊さんです。

 森の熊さんが目の前にいます。正確に言えばブラックベアーですがそれはともかくとして、森の熊さんは怪我をしていました。

 左目が潰されていて、耳からも血が流れていました。元々、真っ黒な毛並みでわかりづらいですが、鼻を突く血の匂いが雄弁に語っています。

 というかアールさん、ブラックベアーと近接戦闘行ったんですね。普通だったら押しつぶされるか噛み殺されて終わるんですけど、むしろダメージ与えて制圧するとかありえなさ過ぎます。

 とはいえ、私の目の前の熊さんはそんな負傷をしながらも、静かに身体を上下させるだけで痛みを顔に出しません。まあ、獣の表情なんてわかりませんけど、少しだけ気持ちはわかります。

 正体不明のゾンビたちに監視されながら己の沙汰を待っているのですから。そりゃあ、うかつに動けませんよね。

 でも、

「アサガオさん、この熊さんかわいそうだから、傷を治してあげたいのですけれど?」


『治す?』


「ええ、私は魔法が使えますから」

 高位の司祭ほどでは回復魔法は使えます。ただし、部位欠損までは修復できないので潰れてしまった左目までは治せませんけど痛みくらいは取り除けるはずです。


『そう、好きにしたらいいわ』


 物好きなことね。そういいたげに肩をすくめるアサガオさん。あ、アールさんはいつの間にかその隣で私に視線を飛ばしていた。この人念話ができないようなのでいまいち何を考えているのかわからないですね。でも、私を助けてくれたのですから悪い人じゃないはず。

 さて、許可はもらえたので魔法を使いましょう。

 回復魔法は特に属性が定められていません。正確に言うなら自分の得意な属性を使って回復を促すわけですが、そのイメージ方法が属性によって違うそうです。

 私は火属性の魔法を得意としているので、シンチンタイシャというものを活発化させて、傷を癒します。シンチンタイシャは傷周りの肉を急いで治るように駆け足をさせるイメージです。

「体内の炎よ、急ぎて、肉を癒し、皮を生み、傷を無くせ」

 五小節。

 それを唱え終えた瞬間、私の体内からなにかがごっそりと抜け落ちる感触。

「くっ!」

 でも、ここでイメージを止めてしまえば何の意味もありません。

 私の体内にあるマナが脳内のイメージ………つまり魔法の設計図が熊さんの体内に転写されます。そのイメージに従って傷を修復して行きます。火属性の回復魔法はあくまでシンチンタイシャ、傷をなかったことにするのではなく、急速に負傷箇所が治っていくという事象です。

 そして、それだけの事を起こすためには相応のマナを消耗します。それが今感じている喪失感であり、ブラックベアーに対してそこまでのダメージを与えたアールさんへの再認識でした。

 というか野生の熊と戦ってここまでダメージを与えるってどういうことですか?!

 急速に遠のいていく意識。あ、私、また意識を失うのですね? 

 マナ欠乏症で失われていく意識の中で思います。

『あなた達自重しなさい』

 肉体的にも精神的にも疲労しながら、私は色々諦めました。



ビッチさんまじ天使w

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